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上野元裕 センター長の独自取材記事
ひがし東京夜間救急動物医療センター
(墨田区/両国駅)
最終更新日: 2023/01/22
都営新宿線・菊川駅より徒歩10分、京葉道路と三つ目通りがクロスする緑三丁目交差点に「ひがし東京夜間救急動物医療センター」はある。東京の東部地域を中心にペットの夜間診療を担う救急センターは、夜間でも目を引く、白地に青い文字で書かれた大きな看板が目印だ。「普段から通っているかかりつけ医であれば安心して受診できますが、救急センターの場合はほとんどの場合が医師と初対面です。だからこそ最大限の配慮が必要です」と話すのは、上野元裕センター長。落ち着いた物腰ながら、合間合間にこぼれる気さくな笑顔が印象的なドクターだ。「自分の診ているペットとその飼い主さんに夜間も安心して過ごしてほしい」との近隣の獣医師らの思いを背負い、日々診療を行う夜間動物病院について、センターの立ち上げから今後の展望に至るまでたっぷりとお話を伺った。 (取材日2013年9月26日)
目次
夜間も昼間と同じ診療をしてあげたい――そんな思いから生まれたセンター
ひがし東京夜間救急動物医療センター開設の経緯について教えてください。
もともと、当センターのある墨田区をはじめとする東東京エリアでの夜間の診療は決して満足のいくものではありませんでした。そこで、東京の東部地域に在勤・在住している有志の獣医師が意見を出し合い、地域の開業獣医師と連携を取りながら夜間の救急専門のセンターを立ち上げたのが始まりです。当センターができるまでは、昼間の診療をした後、患者さんのご要望に応じて夜間も診察をしていたのですが、どうしても人員面でも設備面でも限界があり、地域の獣医師は皆ジレンマを抱えていました。夜間の動物病院は、費用面でも体制面でも設立は非常に難しい問題だったのですが、長年の努力と思いが結実して、当センターが設立できました。
夜間のみの診療なのですか?
はい、そうです。当センターは年中無休で午後9時から午前3時までの間、獣医師2名および看護師2名で診療にあたっています(電話受付は午後7時半から開始)。また周辺の会員獣医師21名が当番制で診療の補助を行いながら、さまざまな相談に対応するサポート体制も備えています。血液検査、レントゲン、超音波検査、内視鏡など、救急診療に必要な機器は揃っていますし、もちろん緊急手術も可能です。ショック症状や呼吸困難などの重篤なケースのために、ICU(集中治療室)も備えています。
どのような症状で来院されるケースが多いですか?
症状としては、吐き気や下痢などの消化器症状、呼吸困難などが多いですね。それに異物を飲み込んでしまったり、怪我をしてしまったりといったケースもあります。診療動物は、犬・猫のほかに現在はうさぎやフェレットも診ています。こちらに連れて来られるペットの数は、一日7〜8件程度でしょうか。エリアは、豊島区・北区から習志野市・船橋市・茨城県など幅広く、東京都以外から駆け込んでくる方も多くなりました。もともとこちらを知っていたという方もいますし、調べてきたという方、主治医の先生が当院を紹介して来てくれたという方もいらっしゃいます。
急な体調の変化に対する、夜間だからこその大きな不安。家族には最大限に配慮したい
地域の獣医師とはどのように連携を取っているのですか?
当センターは、現在、25の会員病院と242の協力病院と連携しております。会員病院とは、当センター設立の際に出資し、当センターの管理運営を行う「東京イースト獣医協会」に所属している動物病院です。一方、協力病院とは当センター設立運営の趣旨に賛同し、効率的な連携治療のために相互に協力しあう病院です。もちろん会員病院及び協力病院からのご紹介でなくても診療は可能ですが、ご紹介により来院された動物たちについては、治療内容や検査結果などをかかりつけの動物病院へ翌日の診療開始前までに報告するようにしています。当センターでは、ペットの症状が落ち着いたら、かかりつけの動物病院に必ずお戻しします。ですから、主治医のもとに戻った後も、効率的に治療を進められるよう、きちんと連携をとっています。
診療の際に気をつけていることを教えてください。
当センターは、「地域のかかりつけ医」ではなく「救急病院」です。ペットや飼い主さんとは初対面のため、信頼関係はまだできていない状態です。それに、飼い主さんはペットの急な症状にたいへん慌てており、またたいへん心配されています。そのような状況で、時として一刻を争う治療や手術を行わなくてはなりません。ですから、処置は迅速に行いながらも、丁寧に説明を行うことを心がけています。ただし、緊急度の高い場合は、とにかく処置を優先して進めていかなくてはいけません。そうなるとどうしてもご家族への説明が十分にできないという葛藤もあります。ペットの命が再優先ではありますが、家族への配慮も最大限心がけていますので、不安なことがあればいつでもお声掛けくださいね。
こちらのセンターの今後の展望を教えてください。
現在は夜間のみの診療を行っていますが、今後は日中も専門性の高い診療を提供していきたいと考えています。そのひとつとして、2013年10月13日より毎週日曜日の朝から夕方までの間、犬・猫の皮膚科専門医が診療を行っています。専門医とは、かかりつけ医でなかなか治せない症例や、特殊な検査や治療を必要とする症例に対して、より確度の高い診断/治療を提供する獣医師のことです。皮膚病というのはなかなか完治が難しいものなので、慢性的に皮膚の悩みを抱えているペットは少なくないんです。今後は、皮膚科のみならず他の分野でも専門的な診療を行っていく予定です。そうすることで、地域医療を支えるかかりつけ医との連携もより緊密になるはずです。
ペットは自分で訴えることができないから、いざというときは迅速な対応が必要
先生はどんな子ども時代を過ごされましたか?
子どもの頃は、スポーツや体育などの体を動かすものよりも、図工などの手を動かす技術系の授業が好きでしたね。自分ではあまり意識していませんが、手先が器用な方なのかもしれません。また小学生の頃から犬を飼ったり、道端で猫を拾ってきたりするくらい動物が好きでした。いまもゴールデン・レトリバーを飼っています。子どもの頃から動物と一緒に過ごす時間が長かったので、自然と獣医師を志すようになっていましたね。
夜間を中心に働いているとなかなかお休みも取れないのでは?
夜間診療をしていると、どうしても世の中のリズムと生活時間がずれてしまいますので、体をリフレッシュするためにも週2回は休みを取るようにしています。現在、娘が3歳、息子が0歳なので、休みの日は家族と一緒に過ごしています。自分の時間が取れる時は、DIYをするのがもっぱらの楽しみです。一から自分で何かを組み立てるのが好きなんですよね。先日はホームセンターで木材を買ってきて、キャンプ用のテーブルを組み立てました。趣味と実用を兼ねて……楽しかったですね(笑)。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
普段から大切にしているペットの具合が突然悪くなれば、誰でも心配になります。それが夜間であればなおさら。病院は閉まっているし、「どうしていいかわからない」と慌ててしまうのは当然だと思います。しかも、動物は人間と違って自分で訴えることができないので、どれくらい緊急性が高いのかわからないこともしばしばです。でもどうしようか考えた挙句、一晩待ってしまったために、取り返しが付かなくなってしまうことも十分ありえるのです。それでも、当センターのように知らない病院に駆け込むというのも敷居が高いと思われるかもしれません。ですから、まずは電話一本で構いませんから、ご相談いただければと思います。こちらは救急病院なので、「その症状は診れません」ということはありません。来ていただければどのような症状も拝見しますので、気兼ねせずにご連絡ください。