橋本理沙 院長の独自取材記事
Rire
(渋谷区/駒場東大前駅)
最終更新日: 2023/01/22
駒場東大前から徒歩約7分、代々木上原・東北沢からも徒歩約10分に位置する「Rire(リール)」は、病院というより居心地の良いカフェを思わせるオシャレな佇まい。ここは昨年8月にオープンした、カウンセリングとアロマ・ハーブ・マッサージ・鍼灸などのホリスティックセラピーをメインとしたアニマルクリニックだ。人と動物の暮らしが笑顔で溢れるように、心身共に健康に、より長く一緒に過ごしていけるように、自然治癒力を高めながら病気になりにくい体を作るサポートをしてくれる。現在も都内の動物病院で勤務する橋本理沙院長は、治療を通して必要だと実感していたカウンセリングにも力を入れている。「診察時間内ではなかなか話せない疑問や不安を、ここですべてクリアにしてもらいたいと思います。他院で受診中の方も気軽にご相談ください」と話してくださった。ターミナルケア(終末期医療)、介護・療養中のペットのデイサービス、アロマグッズの販売、西洋・東洋医学の両方の視点から全身を診る一般診療も行う橋本院長。アロマの香りが漂う心地よい空間で、クリニックのコンセプトや診療方針などたっぷりと伺った。 (取材日2013年11月13日)
動物が本来持っている自然治癒力を高めるホリスティックセラピー
病院というよりはカフェのような素敵なクリニックですね。
ありがとうございます。クリニックのコンセプトがカウンセリングと、アロマ・ハーブ・マッサージ・鍼灸などのホリスティックセラピーをメインとしたアニマルクリニックですので、「病院=緊張する場所」というイメージはできる限り払拭したかったのです。飼い主さんが緊張されると動物たちも緊張します。逆に飼い主さんがリラックスされると、動物たちにも自然にリラックスできます。院内は「飼い主さんも動物たちもリラックスできる場所」にできればいいなと思いました。例えば、院内の気を流すために天井にファンを付けたり、たくさんの観葉植物を置いたり。なるべく角を作らないように、壁は緩やかな丸みを帯びた曲線にこだわりました。クリニックでも使用しているアロマを常に焚いて、飼い主さんと動物たちを心地よい香りでお迎えしています。
クリニック名の「Rire」の由来は?また、クリニックの特徴は?
「Rire」はフランス語で“笑い”という意味です。人と動物の暮らしが笑顔溢れるものであってほしいという願いを込めてつけました。当院は心身共に健康で、より良い時間をより長くパートナーと一緒に過ごしていただけるよう、ホリスティックセラピーをメインに、メディカルアロマ、ハーブ、マッサージ、鍼灸などを取り入れた治療を行っています。ホリスティックセラピーとは体だけではなく、精神・肉体・環境のすべてがバランス良く保たれていることが真の健康だという考えのもとに、治療やケアを行っていく治療法です。主にメディカルアロマや鍼灸を使って、動物が本来持っている自然治癒力を高めて、病気になりにくい体を作っていきます。アロマは香りを楽しむだけでなく、フランスでは抗生物質としてアロマのカプセルが一般の薬局で市販されています。私はメディカルアロマテラピストの資格も持っています。メディカルアロマはワンちゃんや猫ちゃんの治療ケアはもちろん、その香りを嗅いだ飼い主さんにもリラックス効果があります。また、鍼灸は、虚弱体質の子の気を高めたり、体のバランスを整えたり、足腰の弱い子や高齢の子たちのケアのために行っています。
ホリスティックセラピーを柱としたクリニックを作ろうと思ったきっかけは?
以前働いていたクリニックで、皮膚が弱く若い頃から、抗生物質を使って治ってはまた罹りの繰り返しの子がたくさんいました。抗生物質も使い続けていると耐性菌が出来てしまい効かなくなってきます。そのため、症状がひどくない時に薬の代替えとして使えるものはないかと考えていました。アロマには興味があったのですが、治療に近い使い方が出来る事を知り、ぜひメディカルアロマを取り入れたケアを取り入れたいと考えました。抗生物質やステロイドも使用しますが、他の薬を処方する時と同様、なぜこの薬を使う必要があるのかを、詳しく説明させていただきます。東洋医学(中医学)と巡り合えたことも大きいですね。動物もストレスから病気になることがあることは以前から知っていましたが、東洋医学(中医学)を学んだことでそのメカニズムがを理解する事が出来ました。東洋医学(中医学)を用いることで心と体のバランスをみる事や、未病で異変に気づく事もできます。心のバランスが崩れると身体に様々な症状として現れます。動物たちの体のケアだけではなく心のケアもしてあげたいと思ったのが、このクリニックを作るきっかけとなりました。
完全予約制のカウンセリングで日頃の悩みや疑問を解決
カウンセリングにも力を入れていらっしゃるのですね。
カウンセリングを始めようと思ったきっかけは、以前勤めていた病院では診療時間内に患者さんのお話をじっくり聞く時間がなく、「これでは飼い主さんも言いたいことを言えないだろうな」と感じていたからです。ならば、完全予約制で、飼い主さんが思いをすべて吐き出せる時間をお取して、じっくりお話を聞こうと考えました。診察は別の病院で受けているという方も大歓迎です。担当医には聞けないけど、ずっと疑問に思っていたことを、この場でクリアにしてもらえれば幸いです。日頃から抱えている疑問や不安はもちろん、担当医とのコミュニケーションがうまくいかなくなった時なども、獣医師として診療や説明の真意をかみ砕いて、わかりやすく説明させていただきます。当院でのカウンセリングが、気になることをすべて解消できる場になればいいなと思います。
ペットを飼う前の相談もできるのですね。
もちろんです。可愛さに惹かれて飼ってみたけれど、飼い始めてから「こんなに世話が大変な犬種だとは知らなかった」「こんなに大きくなる犬種だと知っていたら飼わなかった」といった声を本当によく耳にします。飼ってからのギャップがなるべくないように、その方のライフスタイル、どういったコミュニケーションの取り方で動物と過ごしたいのかを考えながら、ご本人の希望とその犬種が合っているかどうかのお話もさせていただきます。例えば、リラックスしたいなら猫ちゃん、一緒に遊びたいならワンちゃんがおすすめですよ。
クリニックで行っている「ターミナルケア」とは何ですか?
ターミナルケアとは終末期の医療のことです。その子にとって何が一番良いのかを、飼い主さんと一緒に考え、身体的・精神的苦痛を軽減することによって、生活の質(QOL)を向上させるためのお手伝いをさせていただきます。飼い主さんの生活や費用面などでも、なるべく負担がないような形で、動物たちにとっても飼い主さんにとっても納得のいく治療をご提案させていただきたいと思います。私自身がそうだったのですが、介護や療養中のお世話で飼い主さんが疲れてしまっては、可愛いはずのペットを愛せなくなってしまう時があります。大好きな飼い主さんの疲れやイライラを、動物たちは敏感に察知してしまうので、その状況はお互いにとってよくありません。介護は毎日のことですので、飼い主さんもお休みいただけるよう、ワンちゃん・猫ちゃんを1日1件限定でお預かりするデイサービスを提供しています。心穏やかに、最後のお別れまでの残された時間を楽しく幸せに過ごしていただけるよう、飼い主さんのお休みの日をお作りください。お預かりしたワンちゃん・猫ちゃんはアロマやマッサージケアなどリラックスできるケアをしっかり行いますので、どうぞ安心してお預けください。
獣医師を続ける決心をさせてくれた猫との出会いに感謝
先生が獣医を志したきっかけをお聞かせください。
獣医になりたいと思ったのは小学生の頃です。実家で飼っていた犬がすぐに下痢をする虚弱な子で、動物病院によくお世話になっていました。ぐったりしていた子が、病院で診てもらうと元気になるので、「獣医さんってすごいな」と感動しました。実家はこの近くですが、当時はこの辺りは動物病院が少なかったので、「私が獣医になって、ここで動物たちの面倒を見るのだ」と思っていました(笑)。小さい頃は両親が共働きで姉たちとも年が離れていたので、最初に飼った犬がいつも一緒にいてくれる姉妹のような存在でしたね。今も猫を飼っているのですが、国家試験前の勉強中とか、心が落ち込んだ時に、いつもあの子に支えてもらいました。一生懸命私たちを癒してくれる動物達に感謝の気持ちを形で表したいと思いながら、日々診療に携わっています。診療だけではなくアロマの香りやマッサージに「ありがとう」の心を込めて、動物たちを優しく癒してあげられたらいいなと思います。
今でも覚えている飼い主さんや動物とのエピソードは?
獣医師になって1年目の頃、末期がんの若い猫ちゃんを担当しました。1年目でいろいろなジレンマがあり、獣医を辞めようかと思うほど悩んでいた時期に出会った子です。毎日通ってくれて、たくさん接した子で、今でもとてもよく覚えています。残念な結果とはなりましたが、飼い主さんから「ありがとうございました」と温かい言葉をかけていただき、とても嬉しかったことを覚えています。また、私たち獣医は亡くなった子の死を無駄にするのではなく、その経験や教訓を次の子に活かしていく仕事だと強く感じることができました。それ以来、獣医を辞めたいという気持ちは一切なくなりましたね。今でもその子の写真と、飼い主さんのご厚意でいただいた髭の一部を大切に家の中に飾っています。落ち込んだときは「頑張るからね」とその子に話しかけて、気持ちを切り替えます。
忙しい毎日だと思いますが、先生のリフレッシュ法は?
自宅でもアロマを取り入れた生活をしています。気持ちがリラックスするのでおすすめですよ。あとは、パン作りが趣味で、パン教室にも通っています。手ごねでパンを作っている時は、無心になれるのでよいリフレッシュになります。
今後の展望と読者にメッセージをお願いします。
今後はペットたちもさらに高齢化が進むでしょう。高齢の子たちにとっても、飼い主さんにとってもより良い環境をこれからも発信していきたいです。当院ではメディカルアロマに中医学を取り入れ、その子の生まれ持った性格や体質、現在の状態を全身トータルで診させていただいて調合します。アロマは中医学の視点から獣医師がその子用にブレンドし、マッサージやターミナルケアにも取り入れて心身共にケアしていきます。「抗生物質を多用したくない」「副作用が心配だ」など、何か気になること、不安なことがある方は気軽にご相談ください。