田島征幸 院長の独自取材記事
くう動物病院
(東村山市/東村山駅)
最終更新日: 2023/01/22
西武新宿線と西武国分寺線の両方が交わる東村山駅西口から、150mほど歩いた所に「くう動物病院」がある。木目を基調としたガラス張りの医院で、中に入るととても明るく広々とした、居心地の良い待合室になっている。院長の田島征幸先生はとても気さくな先生で、勤務医時代からペットたちのがんについて、熱心に臨床や勉強を重ねてきた。ペットの体に腫瘍ができると、悪性なのか良性なのか、飼い主には判断しかねる場合が多い。「多くの臨床経験を積んできたからこそ、がんなのかそうでないのかの判断ができます」と田島先生は言う。正確な判断がつけば、治療方法も自ずと明確になり、飼い主たちの安心感も増すことになる。田島先生は、外科的な治療も得意としていて「飼い主さんがわざわざ大学病院まで足を運ばなくてもいいように、手術はできる限り当院でやるようにしています」と笑顔で話す。先生のプライベートから開業までの思い、また今後の展望などたくさんの思いを語っていただいた。 (取材日2014年3月12日)
飼い主の気持ちを第一に考え、居心地の良い医院作りを行った
開業のきっかけや診療動物を教えてください。
できるだけ馴染みがあり、土地勘のある場所でと探していた時に見つけた物件です。駐車場やトリミングもできる広さがあって、ちょうど良い物件に巡り会えました。院名の「くう」は、僕が小さい頃に、近所の家からもらって最初に飼った犬の名前です。当院の主な診療動物は、犬、猫、ウサギ、フェレット、ハムスター、鳥などです。
院内は落ち着いた雰囲気ですね。
木のイメージで統一しました。木は親しみがあり、柔らかい感じがすると思ったからです。動物病院は、どちらかと言うと女性がペットを連れてくる場合が多いので、においや清潔さを第一に心がけました。猫がいて犬がいて、さらに飼い主さんたちがいると、すれ違うのも大変だったりするので、なるべくゆったりしてもらいたいと思い、待合室もできるだけ広くしました。院内全体を、飼い主さんの居心地が良いようにということをまず優先した動線を考えました。設備面では、手術をできるだけ当院で行いたかったので、電気メスや人工呼吸器といった手術に必要な医療器具をできるだけ設置しました。デジタルレントゲンや血液検査の設備もあります。デジタルレントゲンは撮影してすぐに画像が見れるので、診断も早いですし、何より飼い主さんに、直接モニターをお見せしながら説明が行えます。さらに過去の画像との比較も、簡単に行うことができます。
治療に際してこだわった部分はありますか?
当院のホームページを見てもわかるのですが、動物たちにどういった治療が行えるのか、診療科目を細かく分けて掲げています。難しい疾患や、特別な器具が必要になると、大学病院を紹介しなければなりません。けれども大学病院に行くのも、飼い主さんにしてみれば、とても大変なことなのです。できる限り飼い主さんと最短距離で診療を行いたかったので、当院で行っている治療を診療科目ごとに分けました。また、飼い主さんとの信頼関係も大切ですから、診察室に入ったら、飼い主さんにはなるべくわかりやすい言葉で、ゆっくりと話すようにしています。飼い主さんにも、ペットのためにどんな検査も惜しまない人もいれば、なるべくペットに負担をかけたくない、なるべく治療費を抑えたいという人もいます。飼い主さんたちは、大切なペットがどうなってしまうのだろうと、不安になっていると思いますので、できるだけ言葉を選んで話すようにしています。
経験を積んできたからこそ、悪性か良性かの判断ができる
先生は腫瘍関係が得意分野とお聞きしていますが。
大学病院に勤務していた時に、腫瘍科の先生の下で、いろいろな疾患を勉強し、経験できたことが一番自分に力が付いたと思います。がんは内科的な治療と外科的な治療の両方が入ってくるので、とても取り組みがいがあると感じました。実際にがんになった時は、手術ができるのか、もし他の病気があったら、この治療はできて、この治療はできないという、いくつかの選択肢が出てきます。疾患だけに焦点を置くのではなく、さまざまな側面からの知識や経験が必要です。当院でも、ペットにできたしこりが、悪性かどうかわからないので診てほしいと来院される人がいますが、腫瘍に対して経験が豊富であれば、悪性が疑われるのか、良性が疑われるのか、腫瘍ではないのではないかなどの判断をすることができ、治療の選択肢を提案することができます。わからないから手術して取りましょうでは、ペットにも負担がかかりますし、飼い主さんの不安も大きくなってしまいます。的確な診断で飼い主さんを安心させてあげられるのは、知識と経験を積み上げてきたからこそだと思っています。
大学病院での経験が生かされているのですね。
麻布大学獣医学部を2005年に卒業してから、一般の動物病院で働いていたのですが、4年間勤務して獣医師としての力が付いてくると、だんだんと物足りなくなってきました。教科書からはずれた症例や疾患は、どうしたらわかるのだろうと考えた時、別の病院での修行を考え始めました。いつかは開業しようと思っていたので、それまでには修行を積まなければなりません。高度な知識や技術を積むには、どこに行けばよいか考えた時、大学病院なら、多くの経験が積めるのではないかと考えたからです。1年間勤務して、その後他の病院に勤めながら腫瘍の勉強を重ね、だんだんと自分の方針で診療を行いたいと思うようになり、2013年の11月に開業しました。
印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
働き出した最初の病院に、遠くから通っていて、交通事故に遭い下半身不随になった猫がいました。猫は自分でおしっこが出せない状態なので、誰かが絞って出してあげないといけないのですが、飼い主さんが高齢の男性で自分ではできないということで、病院でずっと預かっていました。1週間か2週間に1回、飼い主さんが面会に来ていましたね。僕が勤務する以前からいたので、2〜3年病院にいたのではないでしょうか。最終的には腎臓病で亡くなったのですが、その猫のおしっこを絞るのは、いつも僕の役目だったのでとても印象に残っていますね。
治療以外でも気軽に足を運べる動物病院にしたい
こちらでのトリミングについて教えてください。
トリミングをする場合は、必ず皮膚や耳、歯石など、一通り全身のチェックを行った上でお預かりしています。例えば皮膚にトラブルがあれば、それに合ったシャンプーを使うようにしています。飼い主さんは気付いていないことが多いのですが、耳など赤くなっていたりするワンちゃんが多いですね。動物病院が一緒になっているので、ただトリミングをするだけではなく、プラス医療という考え方で、ペットたちの体調を考慮したトリミングができるのも当院の強みです。気になる部分があったら必ずメモを残して、僕が忙しくても、きちんとトリマーさんから飼い主さんに伝わるようにしています。
趣味や獣医師になったきっかけを教えてください。
開業後は時間が無くてなかなかできないのですが、若い頃から運動が得意で、スノーボードや水泳をしたりしていました。ただ、スノーボードなどは、骨折したりケガをすると、診療に支障が出てしまうので今は控えています。小さい頃は、野球やサッカーをしていましたし、体操をやっていた時期もあります。獣医師になろうと思ったのは高校生の頃で、もともと祖父が獣医師だったのがきっかけです。ただ動物病院を開業していたわけではなく、戦前の人なので、牛や馬などを診察していたようです。獣医師という職業を知ったのも祖父の影響です。話を聞くと、代々うちは獣医師の家系だったらしく、祖父以降、誰も継いでいなかったので、それならば、動物が好きだし僕が継ごうと思ったわけです。
初めて臨床の場に立った時の気持ちはどうでしたか?
大学で勉強したことと現場は全く違い、その場で勉強するような感じで、自分が一杯一杯だったのを覚えています。もうわからないことだらけでした(笑)。教科書にはこういう症状だったらこうですと書いてあるのですが、現場では同じような症状でもいろいろな病気があり、その度に先輩や院長先生に聞いたりしながら、ひたすら勉強していくことを繰り返して、一生懸命だったのを覚えています。
読者へのメッセージや今後の展望をお聞かせください。
今後も獣医師の数は多くせず、少数精鋭で診療していきたいと思っています。診察のたびに医師が違うと、飼い主さんも不安になってしまいますから。あとは、なるべくお待たせしないことと、器械や設備も動物たちにとってメリットがあるものを選んで、増やしていきたいと考えています。将来的には初めて犬を飼う方向けの子犬たちの交流の場であるパピーパーティやしつけ教室などを行いたいと考えています。犬も社会化に適した時期があるので、小さいうちに他の犬と触れ合ったり、人と触れ合ったりすると性格が丸くなります。また飼い主さん同士、情報交換ができたりしつけを学んだりと、病気の治療以外でも来ることができる場所を作りたいと思っています。ですからペットのことでわからないことがあれば、何でも気軽に相談してほしいですね。あとは、ペットの具合が悪いと思ったら、様子を見ていないですぐに連れて来てください。そうすれば治療期間も短くてすみますし、病気も重くなりません。そして、最近ではペットの体重を気にされる方が増えています。犬種によっては痩せていても毛並などで太って見えてしまう事もあり、エサを少なめに与えてしまっている傾向にあります。逆に、ついつい可愛いからとおやつをあげ過ぎてしまい太りやすくなっている事もあります。ご希望があれば、ペット用のダイエットフードなどもご案内しますのでお気軽にご相談ください。ご家庭でもしっかりと体重管理をすることで、些細な不調にも気が付くなど病気の早期発見に役立ちますので参考になさってください。