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宇田川洋平 院長の独自取材記事

りきゅう動物病院

(昭島市/昭島駅)

最終更新日: 2023/01/22

昭島市にある「りきゅう動物病院」は、新奥多摩街道を「市役所前交差点」で曲がり、右へ直進したその先、落ち着いた雰囲気が何とも心地良い住宅街の中にある動物病院だ。しつけから終末医療まで、トータルサポートを常に心がけ、治療と結果のズレが起きないための責任病変(ある病気が原因でみつかる別の病気、あるいは全く別の病気)を探しあてることを念頭に、「飼い主と動物の気持ちに寄り添いながら、それぞれの症例に合わせた医療を提供する」オーダーメイド医療を行っている。「ホームドクターとして、地域の獣医療に貢献したい」と言う宇田川洋平院長が2013年に開業した同院では、「家族の一員」である動物が末永く健康な状態で、快適に暮らしていけるよう、それぞれの状況に合った丁寧なアドバイスを行っている。「獣医師として勉強することはまだまだたくさんある」と向上心あふれる宇田川先生に、獣医師を志したきっかけ、動物医療に対する考え方、診療方針など、じっくり語っていただいた。 (取材日2014年6月18日)

「愛犬の病気を治したい!」。その一心で獣医師の道を進もうと決意

獣医師をめざしたきっかけを教えてください。

子どもの頃は、特に動物に興味があったわけではなく、自宅でも父親が金魚を飼っているくらいでした。それがどうしたことか、団地住まいから一戸建てに引っ越してから、突如、ゴールデン・レトリバーを飼うことになりました。その犬が、私が高校1年生の時にインスリノーマという膵臓のがんになりました。血糖値を下げる、インスリンというホルモンが出すぎてしまうがんで、低血糖になり、けいれんや意識の低下を起こしてしまいます。高校生の自分としては、けいれん発作はかなりショッキングで、愛犬が発作を起こしているのを見て、がんというものを非常に恨めしく思いました。当時、サッカー少年だった私に治せる術があるはずもなく、どうにもならない状況でしたが、とにかく「治してあげたい」。そんな気持ちで、大切な人と向き合うように日々を一緒に過ごし、できるかぎりのことをしてあげようと世話に没頭していました。目の前で苦しんでいる自分の犬に何もしてやれない自分に無力感を覚え、獣医師の道を志すようになりました。たった一匹とのふれあいですが、今思えば、この犬は私にとって「運命の犬」だったかもしれません。麻布大学獣医学部を卒業し、首都圏の動物病院で勤務医として勤めた後、昨年、ここ昭島にりきゅう動物病院を開業しました。

こちらでは、腫瘍の治療を多く行っているとのことですね。

近年、動物たちの寿命が延びてきたせいか、当院でも、多くの腫瘍の子たちが来院します。     腫瘍ができてから、1〜2週間でびっくりするほど大きくなるものから、年単位でおとなしくしていてくれるものまでさまざまあり、治療についても、化学療法剤のみで、かなりおとなしくしていてくれる腫瘍から、手術で断脚が必要となるものまで様々です。自分が高校生のとき飼っていた犬は、がんのせいで見ている方がつらいほど、苦しんで亡くなってしまったので、とても後悔が残る最後となってしまいました。がんと診断されて、自分の犬が本当に苦しみだすまでがんに向き合わず、時間を無駄に過ごしてしまったように感じます。そうした経験から、飼い主さんには腫瘍に対しての様々な治療のメリット・デメリットをお話しし、自分がしてしまった後悔がないことを願い治療を行っています。獣医師と飼い主さんがよく話し合い腫瘍と向き合うことが大事だと思います。

こちらで行っている「腫瘍科診療とは」 とは、具体的にどのような内容ですか?

当院の腫瘍科の治療は、おもに化学療法薬、手術による外科切除、分子標的薬、幹細胞による再生医療、インターフェロン、サプリメントにより腫瘍の治療にあたっております。放射線治療に関しては、大学にて行っております。どの治療もいい点・悪い点があるので、飼い主さんと時間をとってしっかり相談します。腫瘍科は他の科と比べて、特に他の病気も併発していないか全身気に掛けなければならない科です。若い子よりも、中高年の子に腫瘍ができることの方が多いので、ホルモン疾患や、呼吸器・循環器疾患もあることが多く、腫瘍をやっつけることだけ考えればいいというわけではありません。腫瘍の切除のために足を切断したために、日々の日常生活が非常に苦痛なものになってしまうこともあるので、腫瘍のデータなども当然お話しますが、それ以上に、大学での診療の経験や、自分の考えなどもなるべく交えて話をするようにしています。

犬も猫も、家族の一員。しつけから終末医療までの「トータルサポート」を

動物たちの診療にあたって、先生が一番大切にされていることは何ですか?

診療で大切にしていることは2つあります。まず1つは、できるかぎりの「トータルサポート」を行うことです。健康で長生きすることが一番ですが、動物もまた人間と同じように、いつかは死を迎えます。寝たきりになる子もいるので、床ずれしないようにするなど、終末期までサポートすることを心がけています。また、しつけも含めて、飼い主さんと動物が一緒に暮らしていく上で、どちらにとっても負担にならない方法を探していくことのお手伝いもしています。2つめに大切にしていることも、先ほどお話しした「トータルサポート」に繋がることですが、皮膚病でも、足が不自由であっても、その局部だけでなく、全体的な健康状態を診ることをルーチンにして、治療と結果のズレがないように、「責任病変」(病気の過程で、その病気が原因となってみつかる別の病気。また併発している全く別の病気)を探すことです。例えば、中高齢の犬の脱毛の場合、ホルモンの低下症で起きることもあるため、皮膚だけを診ていたら、見落としてしまいます。しかし、全体を診ていくと、心拍数の低下や角膜に脂肪が溜まるなど、ホルモン低下症の要因が見つけやすくなるので、早期に正しい治療を行うことができるようになります。

開院されてから、特に心に残るエピソードがあれば教えていただけますか?

これは獣医師である自分への教訓でもあるのですが、ある犬のお話です。片脚を引きずっていて、他の病院から痛み止めを出されていましたが、なかなか治らなかったので当院に来院されました。診てみたところ、実は骨や関節の病気ではなく、子宮蓄膿症だということがわかりました。つまり、子宮の中に膿が溜まって痛みを引き起こし、片脚を引きずって歩いていたのです。飼い主さんからすると怖いことかもしれませんが、男の子だと前立腺の化膿などで、同じように痛みが生じて、きちんと歩けなくなることもあります。このように局部だけを診ることによる診断漏れのケースは、多々あります。下痢、嘔吐、 皮膚病の場合は、飼い主さんもすぐに目で見てわかると思うのですが、犬も猫も動物は皆、言葉を話すことができません。だからこそ、決して漏れや誤診のないよう、動物たちの健康状態を全体的に診ることを常に心がけているのです。

では、健康そうに見えても、定期的に通院した方が良いのでしょうか?

若い子は病院やスタッフに慣れるという意味や、食餌相談、しつけの相談で訪れる方が多いですね。中高齢の子は人の4倍の速さで年をとるので、年2回程度検診にいらっしゃる方が多いです。特に、高齢の子だと、呼吸器、循環器、腫瘍を発見することも多いですが、早期発見、早期治療ができる場合は、症状が出てから連れてこられる場合よりその後の経過が良いように感じます。    当院では、ワクチン、健康診断の予防医学から、定期的なしつけ教室などの開催、トリミングやペットホテル、外科手術まで行っているので、何かお困りのことがありましたら、お尋ねください。

「頼れる人」としての獣医師、看護師、トリマーをめざす

ご多忙を極める中、休日はどのように過ごされているのですか?

日曜と祝日は、午後が休診なのですが、犬の散歩と、動物病院で使うペットシーツや洗剤の買い出しで、いつの間にか夜になっていることが多いですね(笑)。現在、シベリアン・ハスキーのオスを飼っています。休診日の木曜日は、東京農工大学の腫瘍科で研修医として診察に出ています。普段は自分の病院の中で仕事をしているので、他の研修医の先生や、大学の教授と診療以外の話をしたり、普段診察をしていて、疑問に思っていることや、悩んでいる症例の話ができるので、色々刺激をもらえます。また、普段から、紹介先の先生とコミュニケ―ションが取れているので、安心して紹介することができます。これからもより高度な知識・技術を提供できるよう、向上心を忘れずに努めていきたいです。

副院長の宇田川有希子先生は、院長の奥様だそうですね。

研究室の頃からなので、大学4年くらいからの付き合いですね(笑)。当院は、1階が診察室処置室、手術室、薬局で、2階は半分が入院室で、半分が自宅になっていまして、夫婦ともども、通勤時間はほぼゼロ秒(笑)。妻には、獣医師の視点からだけでなく、女性ならではの視点を生かした治療を提案してもらっています。ちなみに、わが家では、先ほどお話ししたハスキー犬の他に、雑種の猫を1匹飼っています。この子は以前、妻が勤めていた病院から連れて帰って来た猫なんですよ。

最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

現在、獣医師3名、看護師1名、トリマー1名で診療を行っております。混合ワクチン、狂犬病などの予防医学他、内科一般診療以外にも、避妊去勢手術、腫瘍外科、整形外科、特に最近では、泌尿器の外科を多く行っております。診療動物は、犬、猫、フェレット、うさぎ、ハムスター、その他動物です。当院周辺では、犬猫以外の動物を診察できる病院が少なく、犬猫以外の動物も多く来院されています。看護師、トリマーともに犬猫以外の補ていに慣れているため、ご好評いただいております。また、紹介などで近隣市町村以外にも、埼玉や都内23区内などからもおこしの方もいらっしゃいます。駐車場は、病院の前1台以外にも、近隣に3台駐車場を用意していますので、     遠方よりお越しの際は、お尋ねください。今後も、今以上に一人ひとりのスタッフが、病気に対する理解をより深め、小さな変化に気づき、率先して行動できるように成長していきたいですね。そうすると、飼い主さんにとっても負担のないように、最善の方法を探していくことができると思います。今後も、自分自身もより一層技術、知識を磨きあげ、スタッフともども成長し、色々な形で、地域に貢献できるような動物病院、獣医医療従事者でありたいと思います。ゆっくりと時間をかけて話し合い、愛犬、愛猫のための問題解決、治療をしていきましょう!

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