- 動物病院ドクターズ・ファイル
- 東京都
- 立川市
- 立川駅
- にじいろアニマルクリニック
- 石塚洋介院長、石塚みさと先生
石塚洋介院長、石塚みさと先生の独自取材記事
にじいろアニマルクリニック
(立川市/立川駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR立川駅南側、奥多摩街道沿いにある「にじいろアニマルクリニック」。2013年に開業し、入口横には大きな虹のロゴが貼られていて、青空をイメージしたクリニックの雰囲気にとても合っている。院長の石塚洋介先生は、一般の動物病院から、大学病院や夜間救急動物病院と、あらゆる現場を経験しているベテランのドクターだ。クリニックでは、治療のほかにもしつけ教室を無料で行っていて、ペットの撮影会なども開催している。「病気のときだけでなく、普段から気軽に来てもらえるクリニックをめざしています」と石塚院長が話すように、イベントを定期的に催し、地域の交流や飼い主同士の情報交換、さらには予防医療の意識を持ってもらうきっかけを提供。暖かい雰囲気の院内で、石塚先生と妻の石塚みさと先生に、専門とされている治療分野から、将来の展望までさまざまなお話を伺った。 (取材日2014年7月29日)
予防医療を飼い主に認識してもらうことが、病気を防ぐ第一歩
立川に開業しようと思われたきっかけは何ですか?
【石塚院長】少し離れた場所ですが、妻の実家も立川で動物病院を開業しているので、うまく連携したいと思い、この地に開業することに決めました。院名の由来は、言葉をしゃべることができない動物と人間の架け橋になれたらいいなと思ったのと、ヒラガナでやわらかい雰囲気のある院名にして、親しみやすくしたかったからです。
院内でこだわって作った部分はどこでしょうか。
【石塚院長】なるべく暖かい雰囲気にしたかったので、クリニック全体の色合いをやわらかい感じにしました。また入院室はワンちゃん、猫ちゃんに分けています。スペースの都合上、一緒にしてしまう所も多いようですが、猫ちゃんは特に繊細な動物のため、ワンちゃんと別にしてあげることでホテルや入院中にかかるストレスを減らすことができます。 【みさと先生】この辺りは住宅地なので、動物の匂いや鳴き声で迷惑がかからないように犬舎は防音室にし、排気系当に一手間かけて院内を設計し清潔で安全な環境を整えました。
時間外の診療もされているのですか?
【みさと先生】この近辺では夜間診療を行っている動物病院がないので、ホームページを見て、夜間に来院される方もときどきいらっしゃいます。ペットの具合が悪くなったりすると、飼い主さんはやはり不安だと思いますので、とりあえずはお電話をいただくようにしています。 【石塚院長】とはいえ、完全24時間体制は無理なので、できる範囲で診療を受け付けています。対応できない場合は、ここから近い三鷹や八王子にある夜間診療を行っているクリニックを紹介しています。
「にじいろパス」というサービスがあるそうですね。
【石塚院長】病気を予防する混合ワクチンや、ノミやダニの予防を当院でされている方に、ペットホテルを半額で提供するサービスです。この近辺では、予防医療の意識が高い方とそうでない方の差が大きいので、その意識の差を埋め、少しでも病気を未然に防ぐ意識を高めてもらいたいと思って始めました。 【みさと先生】最近では「にじいろパス」を使いたいからという相談で電話が入ることもあるくらいですから、浸透してきたようでうれしく思います。
室内飼いであればワクチンを接種しなくてもいいのでしょうか?
【石塚院長】小型犬や猫も室内飼いにしている人は多いのですが、外に出さないから病気にならないとは限りません。人間も外に行かないから風邪を引かないかというと、そうではないですよね。家の中でもペットは体調を崩すことがあります。ですから混合ワクチンを定期的に接種したほうが、病気のリスクが下がり未然に防ぐことができます。
ペットたちの痛みのケアは人間と同じ、苦痛を少なくすることで回復が早くなる
循環器科や腫瘍科では、具体的にどういった疾患を診察してくれるのですか?
【石塚院長】循環器科では主に心臓の病気となります。動物の平均寿命が延び高齢犬で心臓病になるワンちゃんがとても増えています。特に代表的なのは、僧坊弁閉鎖不全症という病気で犬種によって差はありますが、心臓の弁がうまく機能しなくなり心不全に至る恐れがある病気です。他には人でいう生活習慣病の糖尿病を発症するワンちゃんや猫ちゃんも増えており、人間と同じようにインスリンを使用し治療しています。腫瘍科ではいわゆる『がん』を相手にします。やはり高齢化が進んだために大変多くなっていて、今や動物の死因第一位になっています。ペットの高齢化の影響が、こういう所にも出ていると感じています。
麻酔科はどういった分野なのでしょうか。
【石塚院長】人間が手術するのと同じように、ペットたちも手術をすれば痛みを感じます。人間と比べてペットたちは耐える力が強いので、表面に出にくいですが、痛みの度合いは人間と一緒です。昔はペットたちの痛みのメカニズムがわかっていなかったので、麻酔薬・鎮痛薬をほとんど使わないで手術を行ったりしていたのですが、同じことを人間にしたら拷問に近いですよね。ですから、当院ではバランス麻酔といって、いろいろな薬を使って、ペットたちの苦痛や負担を最小限にした手術を行うようにしています。
痛みのケアをすることで回復が早くなるのですか?
【石塚院長】痛みというのは、痛いと感じているだけで傷の治りがどんどん遅くなることが証明されています。痛みが発生したら薬でしっかり抑えるのが、術後の回復を早める手助けにもなります。日本人は昔から痛みを我慢するのが美徳のように思われている部分があり、診療の際に痛み止めを出そうとすると「薬はちょっと……」と躊躇される飼い主さんもいます。痛みがあることで回復力がどんどん落ちてきてしまうので、無理に痛みを我慢させないで、しっかり薬を使ってあげたほうが痛みもとれて結果的に治りも早くなります。本当にペットのためを思えば、薬は必要な時にはしっかり使ってあげるべきだと思います。
手術もこちらでできるのですか?
【石塚院長】一般的な外科手術はクリニックで行っています。大掛かりな手術は当院だけでは対処できないこともあるので、近隣の二次診療施設を紹介しています。最近は難しい症例も多くなりましたので、スピーディーに専門施設を紹介することで結果的に病気を抱えたペットや飼い主さんの負担を減らせていると思っています。
治療中はどんなことに心がけているのでしょうか?
【石塚院長】ペットたちは自分で症状を説明できないので、そういった意味では人間の小児科の医師と同じだと思っています。ですから常に飼い主さんとしっかりと相談した上で、治療の選択肢を提示するようにしています。また治療にかかるコストやメリット、デメリットなどをすべて説明して、最終的には飼い主さんにどのようにするかを選んでもらい、ご納得してからの治療を行っています。もう一つは、飼い主さんやペットたちが、自分の家族だと思って接するようにしています。いくつかの治療の選択肢を提案すると迷われてしまう飼い主さんもいるのですが、「自分がもしこの子の飼い主だったらこの治療を選択します……」というように、お話ししています。以前、人の救急医療の先生が、「治療の判断・決断にスピードが求められる救急医療の現場では、どのようにして治療方針を決めているのですか」という質問に、「目の前の患者を自分の家族と思って診療に当たれば、早く的確に治療の判断ができる」と言っていたのに感銘を受け、それ以来家族目線で診療することを大切するようになりました。
病気以外のことでも気軽に立ち寄れる、家族目線のクリニックをめざす
獣医師になろうと思われたきっかけを教えてください。
【石塚院長】小学校の高学年には獣医師になろうと思っていましたが、それには母の影響があったと思います。僕の実家は栃木県の田舎で、小さい頃から動物に囲まれて育ちました。母は本当に動物が好きでしたし、実家では犬や猫、ウサギやにわとり、山羊などさまざまな動物を飼っていて可愛がっていました。そうした母の動物に対する無償の愛情を間近で見ていたのが大きく影響していたと思います。 【みさと先生】私は実家が動物病院だったので、幼少の頃から獣医師になりたいという思いはありました。けれども動物と向き合うことの難しさや、命を直視できなかったりする部分が自分にはあるので、現在は獣医診療以外からの視点で、動物と人とをつなげることに注力しています。
具体的にみさと先生はクリニックではどんなことを担当されているのですか?
【石塚院長】妻はクリニック主催のしつけ教室や、写真撮影会などのイベントを企画・担当しています。動物病院に来る飼い主さんはほとんどが女性で、男目線では気付かないことが多々あるため、妻の女性目線はとても有り難いですね。ですから妻より提案されたことは前向きに検討するようにしています。 【みさと先生】私も別の仕事を持っていたり、子どもがまだ小さいので、100%クリニックの仕事に従事しているわけではないのですが、できる範囲で飼い主さんたちが、クリニックに来てよかったと思える動物病院を作っていけたらと考えています。
休日はどのように過ごされているのでしょうか。
【石塚院長】以前に東京農工大学附属動物医療センターで研修医をやっていたので、今でも腫瘍科に非常勤として籍を置いて勉強しています。あとは和太鼓が大好きで、大学時代からずっと続けています。大学のキャンパスが東北で、太鼓が盛んな地域だったのがきっかけで始めました。僕はもともとこの地域の出身ではないので、和太鼓をきっかけに地元の方々と交流ができて、イベントやお祭りに参加する機会が増えれば嬉しいですね。
将来の展望をお聞かせください。
【石塚院長】患者の多い腫瘍科・循環器科の治療を今以上に充実させたいと思います。大学病院での研修やセミナーで学んだ新しい知識や治療方法を、今まさに病気と闘っている患者さんに提供しその負担をできるだけ減らしてあげられるように努力しています。また、診療だけでなく、クリニックの外でしつけ教室などを地域ぐるみのイベントとして開催していきたいですね。 【みさと先生】私は精神保健福祉士の資格を持っているので、心を病んでしまった方や疲れている方の相談に乗りながら、動物を介して社会復帰をするお手伝いができたらいいなと思っています。動物は人間の心を癒してくれますから、そういったことが将来クリニックを介して行っていけたらうれしいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
【みさと先生】何でも構わないので、遊びに来がてら気軽にペットのことを相談してほしいですね。「最近元気がなくて」とか「ごはんを食べなくて」といったような会話から、病気の兆候を見抜くことができるかもしれないですから。 【石塚院長】家族目線で治療を行うようにしていますので、家族に会いにくるような意識で、クリニックに来ていただきたいと思っています。ただ、時には厳しく言わなければならないこともあります。飼い主さんにとっては、話しを聞いていて嫌だと思われることもあるかもしれませんが、ペットたちのことを飼い主さんと同じく家族のように大切に思うからこそ敢えて伝えているので、それをわかっていただけたらうれしいです。また、近年インターネットの普及で様々な情報が溢れ、勉強熱心な飼い主さんは調べた情報をもとに自分自身でどうにかしようとして、それがかえってペットの病気を悪化させたり、健康を損なってしまっているケースが非常に増えています。『こんなことが書いてあったけど…』とか、『この薬が効くって聞いたけど本当?』などなど、不正確な情報をそのまま鵜呑みにせず、どんな些細なことでもかまいませんのでご相談ください。今後も飼い主さんにとって良きパートナーであり、良きアドバイザーでありたいと思っています。