石塚 洋介 院長の独自取材記事
にじいろアニマルクリニック
(立川市/立川駅)
最終更新日: 2025/04/10

2013年開業、2020年にJR中央線立川駅南口徒歩約9分の現在の場所へ移転した「にじいろアニマルクリニック」は、虹と犬と猫をモチーフにしたカラフルな看板が目印。院内は待合室から診察室、入院スペースまですべて犬用と猫用で分かれている。柔和な笑顔が好印象の石塚洋介院長は、町の診療施設から大学付属の動物病院や夜間救急動物病院と、さまざまな現場を経験したベテラン。健康に不安のある時だけでなく、普段から気軽に来てもらえる動物病院をめざしている。病気の早期発見のために気をつけたいこと、初めてペットを飼うときのことなど、さまざまな話を聞いた。(取材日2024年12月23日)
犬も猫も快適に診療が受けられるように
2020年にこちらに移転されたそうですね。

以前の院内が手狭になったので、こちらに移転してきました。良い意味で動物病院らしくない空間にしたいと思い、世界的カフェチェーンのような落ち着いたくつろぎ空間をめざしました。これまでコロナ禍でできなかったのですが、飼い主さんの交流の場となるイベントなども開催して、和気あいあいとした楽しい空間になればいいなと思っています。また、院内は待合室も診療スペースも入院ゾーンも、犬用と猫用で分離しています。ちなみに院名の由来は、言葉を話すことができない動物と人間の懸け橋になれたらいいなと思ったのと、ひらがなでやわらかい雰囲気のある院名にして、親しみやすくしたかったからです。
診療のポリシーを聞かせてください。
ペットたちは自分で症状を説明できないので、そういった意味では人間の小児科の医師に似ているかもしれません。常に飼い主さんとしっかりコミュニケーションを取り、治療の選択肢を提示するようにしています。また治療にかかるコストやメリット、デメリットなどすべて説明し、最終的には飼い主さんに選んでもらい、ご納得いただいてから治療を行っています。そして一番大切にしているのは、飼い主さんやペットたちのことを、自分の家族だと思って接すること。以前、人の救急医療の先生が「治療の判断・決断にスピードが求められる救急医療の現場では、どのようにして治療方針を決めているのか」という質問に、「目の前の患者を自分の家族と思って診療にあたれば、早く適切に治療の判断ができる」とおっしゃっていたのに感銘を受け、それ以来家族目線で診療することを心がけるようになりました。また聴診、触診、問診といった診療の基本も意識しています。
近年、他にも変化がありましたか?

移転時にキャットフレンドリークリニックのシルバー認証をとりました。「キャットフレンドリークリニック (Cat Friendly Clinic : CFC) 」とは、猫に優しい動物病院の「道しるべ」としてISFMという国際的な猫のチャリティー団体の獣医療部門が確立した規格で日本にも支部があり、世界的に普及しているものです。猫専任従事者を設けることで、より猫の専門性の高い知識と質の高い医療を提供しています。ケージの大きさなど幅広い項目に基準があります。猫は本当に敏感な動物で、飼い主さんは来院するのもたいへん気を使われていると思います。当院ではさまざまな工夫をして少しでも飼い主さんのご負担を減らしたいと思っています。
違和感を感じたら早めに受診を
循環器科や腫瘍科、皮膚科の疾患に力を入れられています。

循環器科は主に心臓の病気ですね。動物も平均寿命が延び高齢犬が多くなり心臓病になるワンちゃんが増えています。特に代表的なのは、僧帽弁閉鎖不全症という病気。犬種により差はありますが、心臓の弁がうまく機能しなくなり心不全に至る恐れがある病気です。他には人でいう生活習慣病の糖尿病を発症するワンちゃんや猫ちゃんも増えており、人間同様インスリンを使用し治療します。腫瘍科はいわゆる「がん」ですね。やはり高齢化が進んだために多くなっています。ペットの高齢化の影響がさまざまなところに出ていると感じています。循環器疾患やがんは、症状がわかりにくいので、定期的な健康診断や普段からの飼い主さんの観察が大切になります。運動やお食事の様子や量に違和感を感じたら、少しの違和感でもぜひご来院くださいね。
皮膚の疾患は見た目でわかりやすいでしょうか?
そうですね。しかし気をつけていただきたいのが、こちらも早めに受診していただくこと。これくらい大丈夫、と思っているうちにあっという間に悪化したりします。ワンちゃんは、皮膚表面のバクテリアによる皮膚疾患が多いですね。またアトピー性皮膚炎やアレルギー、食事のアレルギーも増えています。人間同様に花粉のアレルギーも多く、特定のたんぱく質に反応してしまうアレルギーもあります。いろいろと配慮しなくてはいけないこともありますから、いつもと違う、と感じたら早めに受診してください。
麻酔科・鎮痛科というのはどういった分野なのでしょう?

人間が手術するとき同様、ペットたちも手術時には痛みを感じます。人間と比べてペットたちは耐える力が強いので表面には出にくいのですが、痛みの度合いは人間と一緒。昔はペットたちの痛みのメカニズムがわかっておらず麻酔薬や鎮痛薬をほとんど使わずに手術したりしていたのですが、同じことを人間にしたら拷問に近いですよね。ですから当院ではバランス麻酔といって、いろいろな薬を使いペットたちの苦痛や負担を最小限にした手術を行うようにしています。また痛みというのは、痛いと感じているだけで傷の治りが遅くなることが証明されています。痛みは薬でしっかり抑制を図ることが、術後の回復を早める手助けにもなると考えています。無理に痛みを我慢させないで、しっかり薬を使ってあげたほうが痛みも緩和が見込めて結果的に治りも早くなりやすいと期待できるのです。本当にペットのためを思えば、薬は必要な時にはしっかり使ってあげるべきでしょう。
正しい情報を得るためにも気軽に受診しよう
こちらの動物病院独自のプログラムがあるとか。

予防医療促進プログラムで、病気の予防に役立つ混合ワクチンや、ノミやダニの予防を当院でされている方は、血液検査セットなどが受けやすくなります。飼い主さんの間で、予防医療に対する意識に大きな開きがありますので、その意識の差を埋め少しでも病気を未然に防ぐ意識を高めてもらいたいと思って始めました。室内飼いでもワクチンは必要です。小型犬や猫も室内飼いにしている人は多いのですが、外に出さないから病気にならないとは限りません。人間も外に行かなければ風邪をひかないというわけではないでしょう。家の中でもペットは体調を崩すことがあります。ですから混合ワクチンを定期的に接種したほうが、病気のリスク低下や未然に防ぐことにつながります。
これからペットを飼う人へのアドバイスはありますか?
動物病院はたくさんあります。飼い主さんやペットとの相性もあるでしょうから、ぜひ積極的に訪れてみてください。インターネットの情報だけではわからないことも多いので、実際に訪れて雰囲気を見て、かかりつけを見つけると良いでしょう。また種類によってなりやすい病気や、お食事などで気をつけるほうが良いことなど、ペットに合ったアドバイスができるかと思います。今はインターネットでなんでも情報が手に入りますが、実は間違った情報も多いのです。ぜひ正しい情報を得るためにも、何もなくてもお顔を見せに来てくださるとうれしいです。
読者へメッセージをお願いします。

当院は家族目線で治療を行うようにしていますので、家族に会いにくるような意識で、来ていただきたいと思っています。ただ、時には厳しく言わなければならないこともあります。ペットたちのことを飼い主さんと同じく家族のように大切に思うからこそ、あえて伝えているので、ご理解いただければありがたいです。また、近年さまざまな情報があふれ、勉強熱心な飼い主さんが自分自身でどうにかしようとして、かえってペットの病気を悪化させたり、健康を損なうケースが増えています。不正確な情報をうのみにせず、どんな些細なことでも構いませんのでご相談ください。私たちは、今後も飼い主さんにとって良きパートナーであり、良きアドバイザーでありたいと思っています。