JR山手駅から徒歩13分。山元小学校のすぐそば。建物の外観は時代を感じさせる洋館風。ちょっと人目につきにくいが、看板には「東洋医学」の文字が。患畜に鍼や漢方を使った治療を施す「山手動物病院」。もともと馬が大好きだという院長の上林昭先生は、競走馬を専門に診ながら小動物の治療も並行して行ってきた。西洋医学で治せなかった馬の脚の病気を鍼で治したこともあるという。現在も頼まれれば馬の治療に出向いていくほど思い入れは強い。院内では、飼い主の都合で飼えなくなった犬を3匹引き取っている。動物からもらった幸福感のお返しをするためにも、飼い主は動物の立場に立った治療を選択してあげるべきだと上林院長は語る。 (取材日2011年2月21日)
―まずは開院までの経緯を教えてください。
麻布大学で獣医学を学んだ後、京都で競走馬の治療に携わっていました。高校・大学と馬術部に入っていたんですが、部の先輩の1人が関西で競走馬の獣医師をしているという話を聞いて、自分も馬を診たいと思い、京都へ行ったんです。7年間も馬に乗っていて、とにかく馬が好きだったんですね。3年ほど京都で過ごした後に東京に移り、大井競馬場の馬を診ていました。昼は馬を診療し、夕方から小動物を診るという生活をしていました。その間、15年くらいでしょうか。その後、乗馬クラブの馬を2、3年担当し、1996年に地元の神奈川へ戻ってきました。
―獣医師になろうとしたきっかけは?
小さい頃から動物が好きでした。もっとも、小学生の時には獣医師という仕事があるのを知らなかったんですが(笑)。最初は小動物の獣医師になるつもりだったんですが、馬が好きだったので、馬を中心に診るようになりました。
―馬の診療はほかの動物と違った面がありますか?
そうですね。馬は牛や豚とはまた別です。全然違うといってもいいでしょう。牛や豚の獣医師が馬を診るのは難しいし、私も牛や豚についてはわからないことが多いですね。馬の場合は牛などと比べて薬に対して敏感だし、同じ体重だからといって牛と同じ量の薬を与えることはできません。内臓でいうと、馬の腸は部分によって細くなったり太くなったりしていて、どうしても詰まりやすいんです。だから運動をさせないといけない。厩舎に入れっぱなしではよくないんです。競走馬の場合も、朝から調教をしていても、午後にはまた必ず引き運動というのをするようになっています。馬が早足で歩いていると、「ゴッゴッゴッ」という音が聞こえてくることがありますが、これは腸の動いている音です。人間も体を動かすと腸が動くことがありますよね。反対に運動をしていないとお腹が苦しくなります。それと同じようなものです。
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