地下鉄東西線西葛西駅より徒歩7分のところにある「葛西りんかい動物病院」は、垰田高広先生が院長を務め、犬猫に対する皮膚科や内科といった一般診療に加えて、腫瘍科や消化器科などの外科も標ぼうしている。垰田院長は、複雑な病気や治療法についても飼い主に丁寧にわかりやすく説明してくれる、朗らかで優しい先生だ。動物の飼育についての心がけを尋ねたところ、「犬猫を飼いたいと思ってくれる方は優しい方だと思うので、その気持ちだけで十分」と答える垰田院長に、温かい人柄を感じた。同院では可能な限りの高度医療を提供することをめざしながら、動物に最期までとことん手を尽くしたいという思いで診療している。垰田院長に、獣医師をめざしたきっかけや動物に対する思いなど、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2016年11月16日)
―獣医師をめざしたきっかけは何ですか?
植物の研究に取り組んでいた父の影響もあったためか、僕は小さい頃から生き物や機械の”しくみ”を学ぶことが好きでした。父にはよく木花の名前を教えてもらった思い出があるのですが、僕は植物よりも、動きのある動物や虫に興味をもちました。そんな中、テレビ番組で獣医師の仕事を知り、理想の仕事と感じて小動物獣医師をめざしました。大学では、獣医に関する学問以外でもできる限りのことを学ぼうと思い、開講されている授業は全て履修しました。また、教育にも興味があって、通常授業のない土曜日まで講義に行って、教職免許も取得しました。この頃は、学んだことはいつか必ず何かの役に立つと思っていました。学部を卒業する頃には、将来的に必ず小動物臨床に従事するつもりでしたが、短期間でも獣医療全体のメリットになる仕事をしたいという思いもあって、大学院へ進学し研究に携わり、博士号を取得しました。その後は、都内の動物病院に勤務しました。
―開業しようと思ったのはなぜですか?
元より臨床にまい進したいという強い思いがあったのと、自分の知識や技術をより多くの患者さんに提供したいという気持ちで、開業を決意しました。開業するにあたっては、僕が勤めていた動物看護専門学校があり、また妻の出身地でもあって、地域に愛着のある江戸川区葛西を選びました。当院では、犬猫を対象に一次診療を行う他、遠くの大学病院や専門病院まで足を運ばずに済むよう、可能な限りの二次診療にも応えられるように設備も整えています。
―垰田先生は腫瘍に関する研究も行っているそうですね。
はい。腫瘍に関する治療には、従来から複数の治療法がありますが、常に新しい治療法が開発、試みられています。放射線治療のような特殊な機器を必要とする治療は一般動物病院では不可能ですが、動注化学療法や免疫細胞治療といった、少しの努力で一般病院でも可能になる治療法について研究しています。抗がん剤を腫瘍の栄養血管に直接注入する動注化学療法や患者の免疫力増強を期待する免疫細胞治療は、できるだけ患者の副作用や負担を軽減する方法としても有効と考えています。
―診療方針について教えてください。
例えば、膝の脱臼はすぐ診断がつく症状ですが、状態によっては、「様子をみましょう」とするところも多いです。ただ、これから長く一緒に暮らすことを考えると、若い子や症状の悪化しやすい体重の重い子ほどしっかり早く治してあげたほうがいいですよね。ですので、患者の様態や飼育状況、経済的な事情などに合わせた多角的な対応ができるようにさまざまな選択肢をお伝えすることを心がけています。それは病気の治療だけではなく、ワクチン接種やフィラリアの予防といった予防衛生においても同じです。
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