上大岡駅から県道21号線を進んでしばらく、京急線そばの集合住宅が多く立ち並ぶ中に、「中馬動物病院」はある。中馬亮司先生は、同院の2代目院長。実家に戻って15年以上、そろそろ同院を担っていくことに責任をもちたいと、興味のなかった院長の肩書を自ら望んで引き継いだのは2013年のことだ。飼い主と一対一でじっくりと話す診療がモットー。飼い主が打ち解けて相談をし、納得して治療を選択できるよう心を配る。親しみやすく穏やかな人柄ながら、言葉からは獣医師としての情熱が伝わってくる。そんな中馬先生に、病院づくりの思いや勤務医時代に得た学びについて話を聞いた。
(取材日2016年11月8日)
―どんな飼い主さんが利用されていますか?
飼い主さんは数年前までこの近くに住む方がほとんどでしたが、ここ数年は横須賀や川崎といった遠方からもいらっしゃっています。当院に着くまでに何軒の動物病院の前を通って来てくださるのかと考えると、すごくうれしいことだねと、いつもスタッフと話しているんです。それだけに、一件一件ちゃんとお話をして大事に診させてもらわなくてはと思いますね。インターネットで情報交換をして当院を知ったという方も少なくないようです。動物は人間と違って言葉で表現したり伝えることができないので、元気がないな、食欲がないみたい、というときも、具合の悪い程度や原因がわからず、心配して家族みんなで来院されることがよくあります。
―診療する上で大切にされていることを、お聞かせください。
診療スタイルの根本としてまず大切にしているのは、一対一できちんと話をすること。診察室でしっかり動物の病気の話をした後に、待合室でしばらく世間話ができるような場所が理想なんです。野球はどこのファンだとか、奥さんがご病気をされているといったことも伺ったら覚えておいて、次の来院の際にお話をする。そうして飼い主さんと打ち解けられたらという姿勢で診療を続けるうちに、口づてで来院が増えてきて、それに対応するためにスタッフを増やし、院内のスペースを広げてきました。他の先生もみんな、病状や検査内容、治療の選択肢などについて深く丁寧に説明をするので、診察に時間がかかります。どの獣医師も指名してくださる飼い主さんが多いのは、僕にとってもうれしいことですね。
―動物たちへの接し方では、どんな点に配慮されていますか?
怖がらせないように、というのが第一です。例えば、以前に耳掃除をすごく嫌がるワンちゃんがいました。以前通っていた病院で鎮静剤を使用していたそうですが、だんだん効かなくなってきており、薬の量を増やし続けるのを心配した飼い主さんから当院へご相談があったんです。まず外のデッキで飼い主さんと座っておしゃべりをして、仲良くなってからワンちゃんを触らせてもらいました。何とか抱きかかえられれば、ワンちゃんは落ち着くんですね。噛むのは動物が悪いんじゃなくて、触られて嫌なところを察知できていない、嫌だとわかっていて止めないほうがいけないんだよと、スタッフには言っています。若い獣医師さんの手って、汚いんですよ。僕も代診1年目はひっかき傷だらけで「獣医の手になったな」ってちょっと喜んでいたんです。でも先輩に話すと「それはお前の扱い方が下手くそなんだよ」と言われました。
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