―診療で心がけていることを教えてください。
できるだけ病気にならないように、予防医療が基本だと考えています。病気になってから積極的に治療するよりは事前に予防できることは予防する。予防接種はもちろんですが、犬や猫の場合は避妊去勢手術を行うことが病気予防に効果的であると言われています。赤ちゃんができないようにすることが避妊去勢だとお考えの方が多いと思いますが、それだけではありません。年齢が高くなればなるほどホルモンが病気を誘発してしまいます。ですから犬の乳がんは早い時期に避妊手術をすれば高確率で防げると言われています。オスも去勢手術をすることで前立腺や会陰ヘルニアなどオス特有の病気を予防できます。予防接種を早い段階で行うというのはだいぶ浸透してきましたが、同時に避妊去勢も行ってほしいと思います。ただしこれは飼い主さんの判断ですから、私はこういったことがありますよ、という知識をお知らせするだけで強制はしません。本当は動物に聞くのが一番なのですがそれは無理ですので、あとは飼い主さんにお任せしています。
―ペットの予防医療についてもう少し詳しくお聞かせください。
予防接種や避妊去勢以外のことは、餌や運動など日常生活の基本的なことになってしまいますので、そこまではなかなか口出しできないというのが現状です。最近はペットも家族のように同じ部屋の中で暮らすことが増え、かわいがりすぎて擬人化してしまう方も多いです。食事や環境もすべて人間の子どもと同じように考えてしまう。ペットのおやつもいろいろありますが、本当は動物には必要ないものもあります。けれど、人間がおやつをあげたいんですよね。人間の感覚でいえばビスケット1枚はほんの少しですが、小型犬で体重が1〜2kgしかない犬にしてみれば相当な量です。最近太りすぎてしまっているペットが増えていますが、そこは人間と同じで贅沢しすぎれば糖尿病にだってなるし、食べすぎて運動しなければ太ってしまいます。ペットもおやつをあげれば喜びますが、動物にとって本当に必要な栄養なのかどうかをしっかり考えてほしいと思います。栄養さえしっかりとれていれば、「喜ぶから」といっておやつを毎日あげる必要はありません。他にも同じ布団で一緒に寝たり、かわいい洋服を着せてあげたりすることも、人間ほど暖かくしなくてもいい動物もいますので必要ないという場合もあります。動物を「かわいがる」のとかわいがりすぎて擬人化してしまうのは違います。予防医療という意味ではそのあたりも飼い主さんたちに理解していただきたいですね。
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