―こちらのクリニックの特徴を教えてください。
血液検査やレントゲン、入院設備など基本的なことができる設備はそろえています。今は飼い主さんがご自分で勉強され、先端の医療を受けられる施設も増えました。ですから希望される方には高度医療機関を紹介しています。私自身、新しいことは知識として取り入れていますが、設備的にできないことも多いので、動物にとっての選択肢はたくさん用意し、私のところでできることは最善を尽くしたいです。薬や器具、設備もどんどん進化していますが、それらをすべてこのクリニックでというのは難しく、人間もそうですが病院も細分化しています。我々は地域のホームドクターとして飼い主さんと一緒に、動物の予防から治療までをサポートしていきたいと考えています。
―これまで診療してきて印象に残っているエピソードはありますか。
来春で開業25年になります。25年もたつと、生まれたての小さい頃から15年以上たち、最期を看取った犬や猫も少なくありません。飼い主さんが納得できる形で大往生で亡くなったペットもいます。亡くなったこと自体はとてもさみしいのですが、犬が15年以上生きられたときは天寿を全うできてよかったなと思います。もちろん治療や手術で病気が良くなって喜んでいただけるのもとてもうれしいですよ。長く獣医師をしていると一生に関わっていけるのでとても幸せだと思います。
―最後に読者へのメッセージをお願います。
飼い主さんはどんな子より自分の子が一番かわいいものです。どんなペットでも自分で飼いはじめれば愛情もわきます。そのかわいい子と長く一緒にいるために何が必要なのかを常に勉強して、考えていただきたいと思います。ペットのすべては飼い主さんが握っています。ペットは自由に生殖活動ができないので、それは自然に反していてかわいそうだから人間がコントロールすべきではないという意見もあります。野生の動物はもちろんそうで、そこに人間が介入すべきではありません。しかしペットとして飼う以上は、私たち飼い主がすべて責任を持って、発情期などの性的な衝動もコントロールしてあげないと逆にかわいそうだと思います。性的な衝動に駆られながらも、ジレンマを感じながら生活しなければならない動物たちと、そもそもそういった衝動に駆られることがないのでジレンマを感じることもない動物たち。どちらがストレスなく生きられるでしょう。避妊去勢も食事も運動も、すべて飼い主さんが考えるのがペットを飼うということです。その動物の行動や生理現象を制限する以上、そのペットの一生を握っているという意識をしっかり持っていただきたいと思います。そして、飼い主さんが最善の方法を考え、納得した結論を出ていただけるよう、予防や医療の選択肢を多く持ってお手伝いするのが私たちの仕事です。絶対高度なことをしなくてはならないというわけでもありません。年齢が高く弱っているペットが手術をしたからといって必ず幸せになるかといえばそうでもありません。それぞれに合わせて、何が最善かを話すことができないペットの代わりに飼い主さんとじっくり相談し一緒に考え、みんなが後悔のない結果が出せるようこれからも最大限努力していきたいと思います。
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