田中大介 院長の独自取材記事
牛久保東ペットクリニック
(横浜市都筑区/センター北駅)
最終更新日: 2023/01/22
横浜市営地下鉄センター北駅から、徒歩10分ほどの閑静な住宅街。目の前には大きな公園もある、豊かな自然に恵まれた所に「牛久保東ペットクリニック」はある。クリニックの前には、大きなワゴン車が停められるほどのスペースが設けられ、クリニック内は、充実の設備ながら、待合室、診察室、検査室、手術室、ペットホテル・入院室、トリミングスペースが収められている。「変わった獣医師だと言われる」と語る、田中大介院長は、一見、クールな印象だが、強い信念、生命と関わり続けていくことへの情熱、そういった、強い思いの裏返しから出る厳しい口調に、生き物への深い愛情が垣間見える。そんな院長に、老齢犬の診療に、近隣ではほとんど備えていないオゾン治療や、診療方針について、じっくり伺った。 (取材日2015年5月11日)
魚の研究から動物の命を救う獣医師へ
まず、院長就任の経緯について教えてください。
知人の医師の紹介で、先代の院長の頃から、こちらのクリニックにはお手伝いに来ていました。獣医師の免許を取得し、都内の病院勤務や大学院で魚の病気についての研究などをしていたのですが、小動物にも興味があり、ここでも勉強させていただいてました。魚の研究も好きなのですが、他の研究と違い、死んでしまった魚の病気を解明をすることがほとんどでした。また、多くの命を救うために、まだ生きている魚の命を絶って、研究することもしばしばあり、動物病院で診療をしていると、だんだん、病気を治したい、命を救いたい、ということに気持ちが向いていきました。そんなときに、先代の院長から声をかけていただきました。
獣医師を志されたきっかけは何ですか?
小さい頃、飼っていた犬がなくなったことがきっかけの一つです。昔なので、両親はそのとき、獣医師さんには診せていなかったと思います。その時に感じたことが心の奥底にあったのかもしれませんが、中学生の頃には、獣医師になろうと思っていましたね。本当に、なんとなくだったのですが(笑)。なので、獣医学部を卒業して、獣医師になって、研究をしようかどうしようかな……と、考えながらも、医学物の大学院に進学しました。その後、大学院在学中に魚の研究をしている、別の大学院から、「来ないか?」と声をかけられ、もともと魚が好きだったので、そちらへ移り、学位を取りました。
大学院ではどのようなお仕事をされていたのでしょう?
大学院では病気を調べることがメインで、死んだ魚が、なぜ死んだのかを研究することを主にしていました。マナティなどの、海獣の診療もしていましたよ。魚や海獣の病気を研究するのですが、日本中の水族館に行けて、魚好きの私にとっては、本当に、幸せな仕事でしたね。今でも、魚は好きです。何で好きかは、正直、自分でもわからないのですが(笑)。ひょっとしたら、形が好きなのかもしれません。特に、日本の川にいる魚、鮎なんかの形が好きですね。そういえば、子どもの頃も川魚を飼っていました。
厳しい態度の中に垣間見える愛情、生き物の命と向き合う大切さを
どのような患者さんが多く来院されますか?
やはり、犬、猫、魚、ハムスター、うさぎなどの小動物を飼っていらっしゃる方が多いです。それから、老齢犬を連れていらっしゃる方も多いですね。ちょっと元気がなかったりすると、何となく、病気を心配して来院されます。当院では、老齢犬に対しての、治療方法の充実を心がけていますので、理学療法やオゾン治療、近赤外線治療など、なるべく、ペットの身体に負担がかからない方法も積極的に取り入れています。例えば、理学療法が最適な場合は、ご自宅で実施していただくため、飼い主さんに方法をレクチャーしています。
診療方針について聞かせてください。
私も、捨てられてしまった猫を引き取って飼っているので、気持ちはわかるのですが、ペットに元気がないと、飼い主さんは心配で、注射や薬など、あれやこれやと治療をしてあげたくなります。ですが、私は動物になるべく負担が少なく、有効な治療方法を考えており、薬を使わず、痛みを軽減する方法を取り入れたり、ご自宅でできることは、飼い主さんにも取り組んでいただきたいと思っています。その思いから、つい、飼い主さんに、厳しい口調で注意してしまったりするので、少し、変わった獣医師だと思われているようです。それから、変わった動物をペットにすることは、私は、お勧めできません……。本来、変わった動物は、飼うべきじゃないと私は考えています。今まで、そういった動物を、たくさん診療してきました。本当は、ペットとして生きることが幸せでない動物を、飼わないように指導することや、犬や猫でもペットとして飼う上でのマナーや心構えを、飼い主さんにちゃんと意識して取り組んでもらうこと、指導することも獣医師の仕事だと考えています。
印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?
金魚すくいですくった金魚が、病気になったといって、連れて来られた方がいらっしゃいました。正直に、新しい金魚を買うより、診察にお金がかかってしまうことをお話したのですが、飼い主さんが「どうしても治してほしい」とおっしゃり、心を打たれました。診察の結果、病気ではなく食が細くなって、栄養失調になっていたので、飼い主さんに、金魚に効率よく栄養を与る方法を実践していただくため、まず、活き餌の消毒の仕方をお教えしました。活き餌には、寄生虫が付いている可能性があるので、必ず消毒して数日置きます。それを流水で洗って、虫を落とし、細かくきざんで金魚に与えるんです。市販の金魚の餌は、脂肪分が多いので栄養失調の金魚にあげても、今度は、脂肪過多になってしまいます。なるべく、高タンパク質の物を与えないといけないので、そのときは、活き餌を勧めました。「今年のお正月には、金魚が元気になりました」と、年賀状をいただき、とてもうれしかったです。
老齢犬の治療や病気中のトリミング、ペットホテルなど充実の設備
貴院の特徴でもあるオゾン治療、近赤外線治療について教えていただけますか?
私は、日本獣医再生医療学会に入っているので、当院でも、再生医療を取り入れています。その中でオゾン治療を知り、実際に自分で検証し、効果があることがわかったので取り入れることにしました。オゾン治療は、高齢の動物に注射や薬を使わず痛みを軽減したり、歳を取ると酸素や免疫がおちてくるので、それらを活性化させる治療方法なんです。オゾン治療を実施していることは、あまり、公にはしていないのですが、いつのまにかクチコミで広がり、最近では、オゾン治療だけを当院で受けられるというケースも多いです。近赤外線治療は、関節痛などを和らげる治療方法で、これはもともと、人間用の物を動物用に改造してもらったものです。例えば、椎間板ヘルニアは、基本的に手術を進めますが、当院では、ペットの年齢や体力などを考慮して、手術をせず、近赤外線治療で改善していく方法を勧めることもあります。
ペットホテルとトリミングサービスもされているようですが、先生のお休みはありますか?
ペットホテルは、当院の患者さんだけにご提供しています。木曜日は休診日なのですが、入院の患者さんがいらっしゃるので、結局は来ていますね。常に、飼い主さんとつながるよう、専用の携帯も持っています。だから、休みはないです。トリミングについては、当院のトリマーさんは、きれいにするだけでなく、皮膚などの病気の早期発見をすることもよくあります。いつも触れているトリマーの感性で「何かおかしい」と、報告があれば、すぐに、対応するようにしています。当院には、トリマーの女性と、私と違って優しい女性の獣医師がいます。彼女たちの細やかなサポートがあって、さまざまなサービスをご提供することが実現できています。時には、私を注意もしてくれたりして、本当に感謝していますね。自慢のスタッフです。でもまぁ「メモの字が汚い」などと、怒られることもしばしばですね。
読者へのメッセージをお願いします。
近年は、老齢犬が増えてきて、これからも、増々、増える傾向にあります。例えば「遠くの動物病院に通っていたけど、ペットが年老いてきたから通えなくなった」と言って、当院にいらっしゃる飼い主さんも多いのですが、そうすると、ゼロからの診療になってしまいます。そのため、飼い主さんには、状況が許すかぎり「今」ではなく、最初からペットが年老いてきたときの通いやすさなどを考慮して病院を選び、なるべく一貫して通っていただきたいと思います。私は常々、飼い主さんが幸せでないと、結局、ペットは幸せにはなれないと考えています。老齢犬で介護が必要な場合などは、まず、飼い主さん自身を診るというつもりであたります。飼い主さんが、無理をしてつらくなってしまわない範囲で、最大限にペットにしてあげられることを一緒に考えます。そうして、最期を迎えることが、ペットにとって一番の幸せであるのではないかと、私は思っています。