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清水弘美 院長の独自取材記事

柿の木坂ラムジイ動物病院

(目黒区/都立大学駅)

最終更新日: 2021/10/12

駒沢通りと環七通りが交差する駒沢陸橋に面するマンションに、自転車に乗って犬や猫を連れた方が次々と訪れる。あっという間に待合室がいっぱいになっている様子が通りからも一目でわかる一階のスペースに、ラムジイ動物病院がある。飼主さんの良き相談相手となり、動物達が本来持っている力を手助けする治療を心がけるホームドクターを目指しているという清水弘美院長。「獣医師がいらなくなっちゃいますね。」と笑いながら、犬や猫の健康維持の秘訣や、動物を尊重する医療方針などのお話を伺った。(取材日2009年12月2日)

自分の名前ではなく、病院名は愛犬の名前

開業までの経歴と、現在に至るまでの経緯を教えてください。

当時、世田谷区下馬にあった日本大学農獣医学部獣医学科を卒業後、大学病院に研修医として2年間残った後、外に出てフィールドで勉強したいと思い静岡県で5年半勤務医をしていました。静岡では、同じ獣医師の仕事でも犬や猫の種類も病気も違いました。犬には、人間の仕事を手伝う使役犬がいます。猟犬たちは普段は庭に繋がれているのですが、冬場の猟期が近づくと出番だということで、急に飼い主さんがそわそわしだすのです。犬が走らないから診てほしいと慌てて連れてくるのですが、普段の手入れや飼育環境などに問題があってフィラリアに感染しているというようなこともよくありました。同じペットでも、都市部のペット達とは状況が色々違いましたね。勤務医を辞めて開業するために戻ってきましたが、あの当時はバブルの終わり頃、資金もなかったのでテナントを貸してくれる所がなくて苦労しました。たまたま通りかかって今の場所を見つけて、狭い所ですが25年間変わらずにこの地で診療しています。大学では内科の研究室にいましたが、大学の病院ですから外科の診療も手伝っていたので幅広く学んでいました。でも診るのは犬と猫がほとんどでしたので、開業した後も犬猫を専門にしています。最近は専門の先生がたくさんいらっしゃいますので、爬虫類やウサギなどは専門医をご紹介します。

病院の名前のラムジイとは聞きなれない言葉ですが。

妻が学生の頃から飼っていた犬の名前です。ビション・フリーゼというまっ白な巻き毛が特徴の小型犬です。飼っていた当時は日本では大変珍しい犬種で、日本で56番目に登録された犬です。今も患者さんとして、ラムジイの孫が来ているんですよ。

動物の尊厳を守る治療 本来持っている治る力を引き出す

医療方針を教えてください。

言葉が話せない犬猫なので、飼主さんとのコミュニケーションをしっかりとって、初めてどういう状況かがわかってきます。お話しをよく聞いて診察することを大事にしています。来る度に検査ということは必要がない以上行いません。動物に負担がからないような治療をいつも念頭に置いています。例えば、代替医療も行っていて、自然療法のホメオパシーなども治療に取り入れています。獣医療では、要するに人間対人間の問題、人間同士の信頼関係の問題が重要になってきます。こんな小さなクリニックでも選んで来ていただいているのは、飼主さんとの信頼関係や相性が大きいのではないかと思います。私は治療に関しては、押し付けるようなやり方はしません。飼主さんがこういうことはやらないでほしい、こういう治療を受けさせたいという希望を大切にしています。私が治してあげますよなんて偉そうなことは言えませんよ。私の治療は、動物が本来持っている自然に治る力を引き出してあげることくらい。何もしなくても治るかもしれないし、動物は何もしなくても治ろうとする力があるのでその手助けをしているだけです。薬もあまり使いたくないですしね。心臓病とか、仕方なく薬が増える場合もあるけれど、飲める量と飲めない量の限度があります。人間だって薬漬けは辛いのですから、動物だって辛いはずです。動物を尊重する、尊厳を守ることなのかもしれません。

飼い方のアドバイスをお願いします。

動物も人間と同じで医食同源ですから、食べ物は大事にしなければならないと思います。今はアレルギーやアトピーの犬や猫が増えています。ところが食生活をしっかりしていると、同じ兄弟でも全然違う結果が出る場合があります。人間と同じに考えてもらって、脂分の多いものは控えるとか、素材に気を使うこと。有機栽培の原料にこだわったものなどは値段が高くつくかもしれませんが、体も血液もきれいになります。本当にいいものを探すのは難しいですが、人が食べられるレベルで作られたものから始められてはどうでしょうか。病気にならないためにもおすすめしますが、病気になった後でも回復が早くなり再発を防ぐためにもしっかりしたフードを与えていただいたらいいと思います。そうすれば、私たちのような獣医師の仕事はなくなるかもしれませんね(笑)。それと、ペット選びについてですが、大型犬を飼う方が急に増えたり、小型犬が増えたり、流行に左右されやすいものです。しかし、犬種によって性格や特徴が違うので、その方のライフスタイルや居住環境に合わないものを選んでしまうとミスマッチが起こり、人間も動物もストレスが溜まります。ペットを飼ってから動物病院に来るだけではなくて、飼う前にご相談いただければ結果的に動物の病気を減らすことに繋がると思います。

先生もペットを飼っていらっしゃいますか。

家には犬が3頭、ビション・フリーゼとプードル、ビーグル、鳥はインコが1羽います。病院にも、ダックスフントと猫が一匹ずついます。病院にいるのは、事情があって飼えなくなった子たちを患者さんから預かったものです。介護施設に入るので飼えなくなってしまって安楽死させてほしいと連れて来られると、この子に悪いところは何もないわけだから病院で面倒をみようと。今では、訪れた患者さん達に可愛がってもらっているのでよかったなと思います。猫もすっかり病院に慣れて、招き猫になってくれています。

動物も高齢化社会 何でも相談できるホームドクターに

休日はどのように過ごされていますか。

入院している動物がいる場合は日曜日も関係ありませんから、なかなか休みが取れませんね。時間を見つけた時には知り合いの獣医師、調教師、厩務員のいる大井競馬場の厩舎に遊びに行きます。子どもの頃から馬が好きでしたので、サラブレッドの素晴らしさを見ると躍動感を感じます。あとは、旅行や鉄道模型が好きで、昔は夫婦でウィーンからパリまでヨーロッパの鉄道旅行をしたこともあります。また時間があれば鉄道に乗って旅行にも行きたいですね。

今後についてお聞かせください。

飼主さんの要望は多様化していくと思いますので、色々なニーズに対応できる動物病院でありたいです。小さな病院で全てを抱えるのではなく、高度医療は大学病院を紹介するという分業化が益々進んでいくと思います。ニーズに合わせた診療が可能になりますから、これは飼主さんにとってもいいことだと思います。犬や猫も高齢化社会になるでしょうから、何でも相談できるホームドクターとしてできることをしっかりやっていきたいです。

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