原口 桜 院長の独自取材記事

エルムス動物医療センター八幡山院
(杉並区/八幡山駅)
最終更新日: 2025/04/04

八幡山駅から徒歩10分。車でのアクセスも良好な街道沿いにひときわ目立つ建物が「エルムス動物医療センター八幡山院」だ。グループメリットを生かして専門的な検査や治療にも対応。「一つの場所で、すべての診療が完結する」というワンストップ診療の実現に努めている。2024年10月より院長を務めている原口桜先生は、幼少期より動物たちに囲まれて暮らしてきた。悲しい別れも何度も経験して獣医師になり、家族の気持ちに寄り添った診療を行っている。「何でも相談してもらえるような、頼られる獣医師でありたい」と話す原口院長に、同院の方針や獣医療に対する思いについて聞いた。(取材日2024年12月12日)
グループメリットを生かした総合的な診療体制
初めに、動物病院の特徴を教えてください。

CTや内視鏡をはじめとする検査機器を導入していることでしょうか。動物は言葉で痛い所や不調を伝えることができません。体のどこにどのような異常が起こっているのかは、一般的な診察のみではわかりにくい場合も多いのが現状です。そのため、CT等を使った画像検査の重要性は高いと考えています。また、病気によっては、内科・外科のどちらか一方だけで治療を完結するのは難しいのですが、当院には内科・外科・皮膚科・麻酔科など、それぞれを得意としている獣医師が在籍。互いをフォローし合いながら、できるだけ多くの動物たちに適切な診断や治療を行えるよう日々努力を続けています。
こちらはグループのメイン拠点だそうですね。
はい。当院を運営するグループは関東を中心に計8院を展開しており、当院がメイン拠点にあたります。それぞれに特色があり立地も設備も異なるため、連携することで検査や診療の幅が広がるのがメリットです。病状を声にして伝えられない動物たちにとって、早期発見・早期治療は重要なポイント。カルテの共有や獣医師同士の迅速なフォローが可能となる体制だからこそ、「一つの場所で、すべての診療が完結する」というワンストップ診療の実現につながりますし、高度な検査が必要な場合も安心です。それぞれの得意とする部分を生かしながら、総合的にアプローチを行うことを大切にしています。
先生の専門分野についてお聞かせください。

私はエキゾチックアニマルも含めて幅広い動物の診療に携わってきました。さまざまな科目を日々勉強し、総合診療のできる獣医師をめざしています。高齢動物の看護・介護医療にも注力しており「この先生に相談すればなんとかなる」と頼られる存在、動物たちの終生に携われる獣医師でありたいです。当院では犬と猫が対象で、私は内科も外科も皮膚科も一通りの治療を行っています。ですがより詳しい検査や治療が必要となった際、心臓疾患や麻酔などの専門知識を持つ先生方とグループ内で協力し合えるのは心強いですね。当院は大学病院と連携して先進的な獣医療にも取り組んでおり、新しい薬などに関する情報提供をさせていただくことも可能です。
獣医師目線も、家族としての気持ちも大切に
先生はなぜ獣医師をめざしたのですか?

周りに動物がいるのが当たり前の環境で育ったので、動物を助けたいという思いは自然でした。今も来院されるすべての子たちがかわいくて仕方ないんです。怒られても噛まれても、「大好きだよ」という気持ちを心の中から伝えています。診療の際は「獣医師」の目線で接していますが、長年動物と暮らす「家族」として喜怒哀楽を感じてきました。悲しい別れも何度も経験して獣医師になりましたが、それでも救えなかった命もあります。医療は万能ではありませんが、私にできるのは獣医師として治療を精一杯に行うこと。それが「家族」との別れを乗り越えて、今私がここにいる意味だと思っています。
家族として、つらい思いもされたのですね。
私が獣医師1年目の時にいつも隣にいた愛犬が「治療法がない腫瘍です」と診断され無力感を味わったことがありました。獣医師として抗がん剤の治療をしたのも、末期の腎臓病で自宅点滴、看護、介護をしたのも愛犬への治療が初めての経験でした。薬の副作用などもちろん知識として知ってはいましたが、目の前で実際に見るとそれだけで理解できるものではありません。腫瘍を小さくするために抗がん剤を使用することは医学的に正しいのかもしれませんが、その子のことを思い、考えて終末期医療の選択をすることも尊いものです。獣医師としての経験と知識、飼い主としての気持ちの間で何が正しいか、何が必要かを葛藤し続けていましたね。当院にいらっしゃるご家族も、さまざまな治療に直面して迷われることがあります。どのような選択もその子を思ってのことですから、その気持ちに寄り添える獣医師でありたいです。
動物と暮らす方へ、何かアドバイスはありますか?

気になることがあれば、どんな些細なことでも相談してください。傍から見ると「何でもないのでは」というような症状でも、心配でしょうがないご家族の気持ちはよくわかります。また犬も猫も高齢になると介護が必要となりますが、加齢による体の変化は長生きしてきた証拠。それすらも楽しみ、最後の日までその子を愛してください。いずれ見送る日が訪れて、深い悲しみを感じる方も多いでしょう。私も喪失感でいっぱいになりましたが、獣医師としてこの経験を何かしらの形で残したく、ペットロスについて学びました。高齢の子にどのような治療を選択すべきか答えが出なかったり、別れが近いことを受け入れられずどうしようもなくなってしまったら、思いを吐き出してくださったっていいんです。「先生に話して気持ちが楽になりました」というご家族の言葉も私の励みとなっています。
「ここに来れば安心」と頼れる動物病院をめざす
診療の際に心がけていることをお聞かせください。

検査して「はい、終わり」とはならないように、検査をするからにはそれに基づいた説明や治療提案ができるように心がけています。説明の際は写真や画像を見ていただいたり、伝わるような話し方や言葉の選び方に気を配っています。いくら症状が改善につながっても、最終的に納得して治療を終えることができなければ、ご家族の中に何かしらの不満や不安が残ってしまうもの。信頼関係を築くために、また納得して治療を選択していただくためにも、「わかりやすく、伝わりやすい説明」を重視しています。
動物病院としてめざす姿はどのようなものでしょうか?
来院されるすべての動物たちとそのご家族にとって、「ここに来れば安心」と頼れる動物病院をめざしています。その子が体調を崩した際に「何が、どこが、どれくらい悪いのか」ということは、いつもそばにいるご家族でも把握するのは難しいでしょう。それが時に予想以上に大きな病気である場合もあるのですが、「どこで検査・治療すれば良いかわからない」と迷う方も多いかと思います。一つの動物病院では対応が難しいような症状も、当院ではグループで連携し合えるメリットを生かしてできる限り力を尽くし、そのためにスタッフ全員が常に学び、知識の向上に努めています。健康チェックやワクチン接種なども行っておりますので、初めての方もお気軽にいらしてください。まずはどんな動物病院なのかを知っていただき、そこから満足のいくような治療を提供できればと考えています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

私にとって、動物との暮らしは生きがいです。わが家では犬も猫も魚たちも一緒に暮らしており、多くの愛情や喜びを分かち合っています。おそらく私と同じように、多くのご家族が動物たちに愛情を注ぎ注がれているのではないでしょうか。大切なわが子の健康を守るためにも、いつでも相談にいらしてくださいね。