鋪田 光広 院長の独自取材記事
ひだまり動物病院吉祥寺
(武蔵野市/吉祥寺駅)
最終更新日: 2024/01/15
吉祥寺駅から徒歩15分の「ひだまり動物病院吉祥寺」。同院は通りに面して南側を向き、その名のとおり、日中は待合室や通り側の診療室に太陽光がさんさんと降り注ぐ。院内にレントゲンやエコーなど一通りの検査・治療機器を備え、内科・外科・皮膚科・眼科・歯科まで対応。集中治療室やペットホテルも備えている。鋪田光広院長は治療が難しいとされていたFIP(猫伝染性腹膜炎)の診療に4年以上前から対応、これまでに数多くの症例を診てきた。通院が大きなストレスとなる猫たちのために、往診も行っている。院内外で猫の幸せな生活のために尽力し、「今後は猫の住環境の改善にも目を向けていきたい」と優しい笑顔で語る鋪田院長に、同院の特徴や日頃の思いを聞いた。(取材日2023年12月28日)
早期にFIPの診療に取り組み、数多くの症例に携わる
こちらの診療内容や設備について教えてください。
当院は犬と猫専門の動物病院です。犬がひだまりで元気に遊び、猫がひだまりでのんびり寝ている、そんな光景が見られるような、動物たちのストレスを和らげる動物病院をめざしています。ワンちゃん用と猫ちゃん用に、それぞれ専用の診療室を用意しています。猫ちゃんは外の音や気配がストレスになるので、外部と遮断できるように当院の中央に診療室を造りました。こちらの部屋は真っ暗にできるため、眼科の検査室としても使用しています。逆にワンちゃんは外の様子が見えても平気なので、診療室を通り側に配置しました。大きめの造りですので、大型犬や犬用カートでもご利用いただけます。院内にレントゲンやエコーなど一通りの検査・治療機器を備え、内科・外科・皮膚科・眼科・歯科まで対応。場合によっては集中治療室で温度や酸素濃度を管理しながら診療を行っています。
開業からの10年間で、何か変化はありましたか?
もともと猫ちゃんの診療が多かったのですが、ますますその割合が高くなってきましたね。集中治療室など開業時よりも設備が充実して、幅広い診療が行えるようになりました。中でもFIPの診療は4年以上前から対応しており、当院の特徴の一つでもあります。最近では往診も始めましたし、メッセージアプリからも相談を受けつけています。気軽に相談できる雰囲気は当初から変わらず、FIPへの対応や往診といった当院ならではの診療をより強化してきました。
先生は早くからFIPの診療に取り組んでこられたのですね。
そうですね。2019年11月より診療を開始し、これまでに数多くの症例を診てきました。当初はFIPに対応できる動物病院は全国でも限られていましたが、現在ではその数が飛躍的に増えています。FIPの原因は猫コロナウイルスの変異によるもので、治療が難しいとされている病気です。全国各地で診療を受けられるようになったのは喜ばしい反面、その子に合わせた薬の調整が必要だということを忘れてはいけません。その判断を見誤ると、症状の悪化につながってしまいます。FIPは知識と経験を持つ先生に診てもらうことをお勧めしたいですね。
野良猫・地域猫のためにできることに注力
FIPについては往診も行っているのでしょうか?
はい。当初FIPの診療は院内で対応していましたが、連れて来られるだけで強いストレスを感じたり、ぐったりとしてしまう猫ちゃんがとても多かったのです。それにより状態が悪化してしまった子もいました。「ならばこちらから出向こう」と往診を始めました。移動が大きなストレスとなる猫ちゃんにとって、往診はとても適した方法だと思っています。血液検査やエコーの検査機器を持参しますので、診療を行う上で重要となるデータの採取は院内診療とほぼ同様に行えます。また往診では、野良猫・地域猫に対する不妊治療にも対応しています。こちらは武蔵野市や三鷹市のボランティア団体と協力しながら取り組んでおり、多くの手術に携わっています。
先生が獣医師をめざしたきっかけも、野良猫への思いにあるそうですね。
小学生の頃から、野良猫をなくしたいと考え始めていました。そのためにはどんな職業につけばいいのかを考えて、獣医師になれば何かできるかもしれないと思うようになったんです。そう考えたきっかけは、野良猫の世話をしていた時、ご飯をあげていた子猫たちが、夏の暑さで次々に亡くなってしまった出来事。かわいい動物が苦しむことを理不尽に思いました。家で猫を飼っていたことも影響していると思います。飼っている猫が病気になると、自分でなんとかしてあげたいと思うようになって。これらが獣医師になりたいと思ったきっかけです。野良猫たちは厳しい環境の中で暮らしていて寿命も短いですよね。場合によっては殺処分されることもある……。かわいそうな存在だと思います。そのような野良猫をつくり出さないようにできることがあれば、力を尽くしたいです。
今後はどのような活動を予定していらっしゃいますか?
不妊手術は、外で暮らす猫たちをこれ以上増やさないようにする取り組みです。今はその一歩手前、そもそも野良猫にさせないという点に着目しています。というのも、飼い猫が逃げて帰れなくなってしまって野良猫になるケースが一定数あるんです。地域によっては猫を外に出す風習がまだ根づいています。獣医師の立場から、飼い主さまに意識を変えていただけるよう情報を提供し、併せて猫ちゃんが室内だけで快適に暮らせるような住環境づくりに携わっていければと考えています。
インフォームドコンセントを大切に、納得できる診療を
診療の際に心がけていることを教えてください。
ワンちゃんや猫ちゃんにストレスをかけないように気をつけています。ワンちゃんの場合は、まずは飼い主さまと話し仲良くしているのを見せて「敵ではない」とわかってもらってから触り始めます。診察もできるだけ素早く。猫ちゃんはよりストレスを感じやすいですから、触る時間をさらに短くするよう心がけています。それぞれの個性については電子カルテに記載して、私以外のスタッフが接する時もその内容を意識しています。例えば「この子は怒りっぽい」「おやつが大好き」などの情報です。ストレスなく診療を終えることができれば、動物病院や私たちに嫌な感情を持たないと思うんです。「行くといいことがある」くらいに思ってもらえるようにしたいですね(笑)。
症状の説明や治療方法の決定の際は、どのような点を心がけていますか?
インフォームドコンセントを大切に、飼い主さまを不安にさせないように心がけています。飼い主さまが不安を感じていると、それを見たペットも不安になりますから。治療方法の決定に関しては、ペットにとって適切と思う方法を複数提案し、最終的には飼い主さまに最も納得できるものを選択していただいています。
診療する中で、最近感じていることなどがあればお聞かせください。
一時期の猫ブームの影響もあってか、猫ちゃんと暮らす飼い主さまがとても増えました。皆さん、猫ちゃんをとても大切にされていますし、薬をおいしく食べさせられるような専用フードなど便利なものが次々と開発されていますね。ただ、ちょっと甘やかされすぎの猫ちゃんが増えたかなとも感じています。メンタルの不調から粗相してしまったり、カロリーの取りすぎで太ってしまったり。猫ちゃんの現代病と言えるかもしれません。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
ワンちゃん猫ちゃんのしつけの方法に正解はありません。インターネット上には情報があふれていて、どれが良いのかもわからなくなることがあるでしょう。わからないことがあれば、予防接種や定期検診にいらした際に何でも聞いてください。ワンちゃん猫ちゃんの体のつくりや特性を知り、少しでも「おかしいな」と思ったらお気軽にご相談ください。