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藤田 桂一 院長の独自取材記事
フジタ動物病院
(上尾市/上尾駅)
最終更新日: 2023/01/22
ペット雑誌の口腔内疾患などの解説役ドクターとしても知られる「フジタ動物病院」の藤田桂一院長。同院はドクター15人、獣看護師やトリマーなど総勢42人という体制で上尾エリアの中核医療施設として機能している。夜間救急外来こそ行っていないが、365日ペットの健康をサポート。「ドクターを始めスタッフが日々モチベーション高く働ける環境を作ることが、患者さん・飼い主さんに喜んでもらえる医療提供の根本」との考えから、職場環境の整備にも力を入れている。インタビューでは藤田院長に、病院の成り立ちから地域での同院の役割のほか、病院専用アプリの話までを聞いた。(取材日2016年6月8日)
さまざまな思い出のある地・上尾に貢献したい
規模の大きな動物病院ですが、まず概要から教えてください。
28年前に開業した当時は、隣にある現在は花屋さんが入っているビル内で家内と2人だけで始めた病院です。9年間ほどそこで病院を続け、最後はスタッフも増えて総勢13人くらいとなりました。20坪のスペースで待合室もとても狭いため、その人数ですし、患者さんは増えて院内に入りきれないくらいでしたから、1997年にいまのビルを建てました。その後、獣医師が7~8人いるにもかかわらず、診察室が少なく、まだ待ち時間が多いということで、改装して診察室を増やし、ドクターや動物看護師、受付の方がまだまだ足りないということでドクター15人、スタッフも総勢46人まで増員し、現在の体制となっています。一方、2007年にたまたま向かい側のビルが空いたので、そちらにトリミングとペットフード部門を移して、という経緯ですね。
上尾の地に開院された理由は?
父が建築会社を経営していたのですが、会社が倒産してしまい、債権者会議の際に父親が責め立てられている姿を目の当たりにしたことが私の仕事に対する姿勢の原点です。その後、日本獣医畜産大学に入学しました。奨学金と多くのアルバイトで学業を続けられました。卒業後は、大阪の動物病院で勤務医として働きました。現在婦長である家内は京都市役所に勤める歯科衛生士で公務員でしたが、開業にあたり退職し、私の実家のあるこの上尾の地で妻と2人で病院を始めたのです。
先生のご専門分野は歯を含めた口腔外科ですね。
開院後、歯科衛生士をしていた妻に、歯科のケアのやり方がおかしいと指摘を受けました。歯周ポケット内の細かい治療を行っていないというのです。私は獣医師としては当時の普通の処置をしていたつもりでしたが、そこまで進んだ概念がまだなかったのです。そこから海外の文献を取り寄せて勉強を始めて、臨床研究の成果を学会で報告するようになったところ、本格的に研究しないかというお誘いを受けまして、日本大学大学院獣医学研究科の研究生となり、口腔内の免疫システムの研究で学位をいただきました。その後は、出版社の原稿の執筆や講演を依頼されるようになりました。
スタッフが万全だからこそ質の高い医療も提供できる
専門分野では遠方からも来院しているのでしょうか?
口腔内の疾患では県外の患者さんもおられますね。ただ口腔内疾患は全体の1~2割程度で、8~9割はその他の一般診療による来院です。当院には獣医師が15人いますので、それぞれが得意な分野や専門性を生かしながらも幅広く診察・治療をしています。口腔内疾患では二次診療施設と位置付けられていますが、その他の疾患においても一次と二次の中間的な役割を果たす病院となっていますね。それだけ責任が大きくなっているように思えます。
15人の獣医師間で担当分けなどは?
ドクター全員がレベルを高く保って、どのような疾患を抱える患者さんが来ても対応できるように努めていますが、ちょっと高度な治療、専門性を要する場合には、得意としてる獣医師に担当してもらうようにしていますね。同時に15人の獣医師がいるわけですから、その疾患を得意としている獣医師に意見を聞き、毎朝のミーティングでも情報共有を図っています。一方、エリアに夜間救急を受け持つ動物病院もできましたので、夜間救急医療はしていないのですが、それでも夜遅くまで勤務していることが多かったです。そこで診察時間を今年からさらに1時間短縮しました。最終は18時30分です。できる限りスタッフに休息を取ってもらい、診察時間には100%の能力を発揮してもらうためです。その代り、当院は正月も含め、365日診療しています。これもスタッフが多く、今はなんとか院内で人員のやりくりができるので行っています。
スタッフの働く環境整備にも力を入れられているそうですね。
一般的に私たち以上の年齢の獣医師の若い時代は、比較的安い給料で休みもあまり取れず、まるで丁稚奉公のような環境でした。いまは獣医学部の偏差値が高く、優秀な人材がこの世界に入ってくるようになりましたし、ひと昔前とは、まったく時代性が異なると思われます。私自身も院長と勤務獣医師が師弟関係のような古いやり方をしていた時期もあったのですが、現在ではスタッフが働きやすい環境を整えることが一番大切だと思っています。つまりCS(顧客満足)のためには、まずES(従業員満足)が必要不可欠です。そこから病院の経営理念も制作委員会を立ち上げて作りましたし、トップダウンではなく、現場スタッフの意見を大事にして、彼らが働きやすい環境を作ることが、地域の飼い主さんに質の高い医療を長く提供する根本であると認識しています。勤続年数10年前後、もしくはそれ以上というスタッフが増えたのも、そうした方針の結果だと思っています。
待ち時間を短くとの思いからアプリを開発
待合室に院長先生の鉛筆画が飾られていますね。
実は所属する獣医学会に美術ギャラリーを持つ団体がありまして、そこには会員が描いた作品を飾ることになっているのです。それで、1年に1作だけですが、描き上げていて、それらを待合室に飾っています。私は中・高と美術部にいましたので、描画や造形も好きです。絵を描くことは、手術手順と似通ったところもあり、獣医師になってからもそんなところが少しは役立っているかもしれません。
病院専用のアプリまであるのですが、この使い方は?
飼い主さんの利便性を図る目的で作りました。一番の目的は、待ち時間を短くするためです。スマホでアクセスすれば、いまお待ちいただいている患者さんの人数がわかりますし、まれに担当医師が急に朝、熱を出して休診になる場合にもそれがわかりますのでね。病院のクレジットカードはもっと以前から採り入れていますが、そういった飼い主さんへのサービス面については、婦長やスタッフたちがいろいろと助言してくれて、その都度、実現していますね。もともと歯のスケーリングの不備を婦長に指摘されて、悔しさの一念で勉強して今がありますし(笑)スタッフ、とくに婦長や動物看護師のアイデアは飼い主さん目線、スタッフ目線でみてくれているので、当院の運営には貢献してくれていますね。
今後の抱負をお願いします。
とにかくスタッフが育ってもらえる良い環境を作りたいですね。ドクターや動物看護師、医療助手やトリマーなどのスタッフがそれぞれクレド(経営理念)を大切にして、日々、患者さんと飼い主さんに寄り添う診療とサービスを提供していれば、自然とご支持いただける、長く続く病院になると思っています。さらに自立自走できる組織として機能していってもらいたいですね。「ES(従業員満足)がCS(顧客満足)を作る」という方針は今後も続けてまいりますので、地域の飼い主の皆さまにはどうかその点をご理解いただけましたらと思います。