堅木 道夫 院長の独自取材記事
かたぎ犬猫病院・川越どうぶつ医療センター
(川越市/的場駅)
最終更新日: 2024/07/16
的場駅から徒歩13分。「かたぎ犬猫病院・川越どうぶつ医療センター」は、飼い主やペットの気持ちをくみ取った医院環境を整えている。動物病院には珍しく院内の動物のにおいはまったく感じられない。またクリニックの脇には周囲から隔離された中で犬が運動を楽しめるドッグランがあり、ペットが運動をする場所も取りそろえている。獣医学の高度化により、近年のペットは高齢化が進んでいるが、その中で前よりも向き合う必要が増えた「重度のがんなどに伴う終末期のケア」についても、副作用で苦しむことの少ない東洋医学によるサポートなどの選択肢を用意したりするなどさまざまな方向から飼い主、ペットのことを考えている堅木院長に、診療に対する優しい姿勢を聞かせてもらった。(取材日2016年8月1日)
高校生の時に犬の外科手術をサポートし、獣医師の道に
獣医師になったきっかけをお聞かせください。
当院は、父の代に開業して現在で50年ほどになります。そのため、私も小さい頃から動物に囲まれているのは当たり前という暮らしを送ってきました。獣医師になろう、とはっきり思うようになったきっかけは、高校生の頃の夏休みですね。父に「手伝ってほしい」と言われ、ある犬を外科手術する際のアシスタントをやりました。何をサポートできたわけでもないのですが、手術の翌日にはその犬は立ち上がれるようになり、日に日に元気になっていくという姿を見ていることが本当にうれしかったのです。動物の命を救う仕事に魅せられてしまいました。それで、北里大学の獣医学科に進学したわけです。卒業後は日本獣医生命科学大学で研修医として勤め、そこで同じ獣医師である家内にも出会っています。
その後、当院での診療を始められていますね。
若い頃には高度で先端的な獣医療に深入りしたものですが、近年では私もホームドクターとして地域の飼い主さんや動物に寄りそうようになっていますから、循環器を主に専門にしつつも、大筋としては父が開院したクリニックのやり方に原点回帰しているのでしょう。その後、自分がやや年齢が上の立場として若い獣医師に出会うようになると、若い頃というのは技術の専門性に夢中になるものだな、と自らの過去も客観的に見られるようになりました。専門的な獣医療は細分化されているから、次第にごく一部の専門家以外には追いつけなくもなるものです。そこに気づいた後に何ができるか、が特に臨床を担う獣医師にとっては大事なことになりますね。
診療において重視されていることは何ですか?
もちろん、技術の面でも勉強は続けていますが同様に大事にしているのは、飼い主さんの不安にどう向き合うのか、です。飼い主さんが抱いている不安をどのように解消してあげられるのか、を常に考える診療をめざしております。飼い主も獣医師も人間です。そこには、人と人との関わりがあり、今、この飼い主さんが何を望まれているのか、に耳を傾けて、腹を割った状態で打ち解けられると、いい診療につながると思っています。動物は話すことができませんからね。ペットにまつわる細かい情報はすべて飼い主さんから伺うことになります。コミュニケーションを大事にしなければ、状況も把握できないのです。また健診や予防接種などで定期的に来てもらっているペットは体重や様子が「いつもと違うな」とこちらから感じられるので、飼い主さんが気づかなかった病気がそこで見つかったりすることもありますね。
言いにくい情報も、できれば早めに正直に伝えてほしい
飼い主とのコミュニケーションで必要なことは何だと思われますか?
獣医師としては、まずコミュニケーションの壁を作らないように、と心がけています。本音を言ったら怒られるのではないか、なんて思わせる雰囲気にしてはいけませんから。と言うのも、動物のことを大切に思っているものの、経済的な理由などから、このぐらいの治療はできるけど、これ以上費用のかかる治療はできないといった事情を抱えている飼い主さんもおられるからです。それは、最初に言っていただいたほうが治療を進めていきやすい情報なのです。飼い主さんのある種の不注意が病気のきっかけになっている場合でも、もちろん叱責などはいたしません。むしろ「こんな食事を与えてしまったのだけど」などと正直に言っていただけたらその後の処置を適切に行えることがあるのです。
高齢のペットに対して対応の選択肢に幅があるのも、当院の特徴ですね。
高齢のペットの場合、状況によってこれまでは手術をする、何もしないで様子を見るというような選択肢が主なものでした。大抵の飼い主さんは「何もしないのは気が引ける。何かをしてあげたい」と思われるものです。しかし、高齢の動物には手術で麻酔を用いることによるリスクが高いという場合もあります。治療法によっては毎週来ていただかねばならない場合もあります。手術や投薬という選択が現実的ではない時もあるのです。その他さまざまな症例に対して、東洋医学による方法も併用できますよ、などとできることを選択肢として提示をしているのが当院なのです。西洋による副作用の重さが気になるが、何もしてあげないのは嫌だ、という飼い主さんの要望にもお応えしたくてそのようになっていきました。
ペットが入院する時に飼い主も一緒に泊まれるようになっているんですね。
飼い主さんが動物病院に来られる時には、不安を持っていらっしゃると同時に、苦しんでいる動物と少しでも一緒にいてあげたいという思いがあるのですね。診療を続ける中でそこを痛感してきましたから、一緒に泊まっていかれることもできますよ、と、これも選択肢の幅を広げたわけです。人間がお休みできる畳の部屋を用意しています。入院というわけではなくても、動物が点滴を受けている間にその部屋で待機しながら付き添うというニーズもありますね。入院の際には犬と猫は違うスペースに分けておき、待合室でも犬と猫が主にいるテリトリーは分けてあるのも、飼い主さんや動物たちにとっての心地良さを考えてのことです。
クリニックの入口脇には、犬が運動できる場所もある
クリニックの入口脇にあるドッグランは犬にとってうれしい場所かもしれませんね。
柵の中で犬が自由に運動できるスペースは、単にドッグランとして使うというよりは、外で待つことができる場所を作りたくて「待ち合い広場」として設置したのです。動物にとっては、病院は、何をされるかわからない場所で、嫌がることもあるでしょう。そのような中でも、「あのドッグランで遊ぼう」という目的ができたら、飼い主さんも病院に連れていきやすくなるかもしれません。実際に、来院される飼い主さんからは「ここのドッグランで遊ぶことを、うちの子はいつも楽しみにしています」と言われることもあるのです。軽症の場合には診療後に動物におやつをあげるなど、病院に来やすい工夫は他にもしているつもりです。おやつが欲しくて私にシッポを振ってくれるワンちゃんも少なくありません(笑)。
お忙しいとは思いますが、お休みの日には何をして息抜きをされていますか?
時間がある時には、近くの日帰り温泉に行っています。自然のパワーをいただいて、心と体を癒やしてから帰ってくるんです。それが一番のリフレッシュ方法ですね。行く温泉は日高市とか車で15~20分の場所が多いですね。遠くに行きたいなあとは思いますが、動物はいつ具合が悪くなるかわからないので。あとは掃除も好きなので、家の掃除などをしてリフレッシュすることもあるんですよ。院内もきれいなほうがいいので、換気にこだわった部分もあるんですよ。院内の空気は外に流れるように設計したので、ここは動物のにおいがまったくしないようになっているんです。
良い「かかりつけ医」を見つけるためのヒントをお聞かせください。
相性の合う獣医師を探すのが良いと思います。人間同士のやりとりですから。意志疎通がきちんとできていれば、あるクリニックでは難しくても、望んだ処置のできる病院を獣医師が適切に紹介することもできるはずです。私の専門は循環器ですが、当院で行う範囲を越えた外科手術などを望まれる飼い主さんには、専門家だからこそ勧められる他院を喜んで紹介しております。結局は、途中でもお伝えしたように、こちらも腹を割ってお話をしますから、飼い主さんも正直に打ち解けて話してくださると、獣医師はより適切な治療を行うことができるのですということですね。飼い主さんや動物の安心や安全のために、私も、今後も力を尽くしてまいります。