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もしものために知っておきたい 犬と猫のがん治療

西調布犬猫クリニック

(調布市/調布駅)

最終更新日: 2021/10/12

飼っている犬や猫に、がんが見つかるなんてことを考えたことがあるだろうか。しかしペットも生き物である以上、がんを患うリスクは存在する。また近年は、犬や猫も長生きするようになったことで、がんを患うケースも増えているという。大学病院の腫瘍科にて勤めた経験を持ち、日本獣医がん学会の認定医 の資格を持つ、犬や猫のがん治療に詳しい「西調布犬猫クリニック」の小川圭一院長に、がん治療の現状と飼い主の心構えについて伺った。(取材日2015年12月2日)

見つかりにくい犬や猫のがん。定期健診で早期発見、早期治療を

  • Q.がんの初期症状には、どのようなものがあるのでしょうか。

    A.

    ▲手術の後は経過を写真に収め、しっかりと飼い主に情報提供を行うという

    見て、触ってわかるものとしてはまずシコリです。シコリかどうかわからない場合には左右同じ場所を比較してみるといいですね。右にあって左になければシコリの可能性があります。精巣腫瘍の場合は睾丸が硬く腫れます。リンパ腫などの場合ですと、目が赤くなったりすることもあります。両目が真っ赤になったら要注意です。膀胱がんや前立腺がんでは血尿がみられることもあります。また、がんが原因で貧血になることもありますが、その場合、歯茎や舌が白くなっていきます。そういったことを意識してみるだけでも、早期発見につながることがあります。しかし残念ながら実際には元気や食欲がないということで来院され、各種検査によってがんが見つかるケースがほとんどです。がんを早期治療をするには、定期的な健康診断が欠かせません。
  • Q.がんの検査や治療は、どのように行われますか?

    A.

    ▲がん検診の際は血液検査などと併せて、触診もしっかり行うという小川院長

    がんが疑われる場合、血液検査やX線検査、超音波検査でがんがあるのか、あるとすればどこまで広がっているのか、などを確認します。またしこりがあれば、針で取った細胞を検査をする細胞診や小さく組織を切り取って行う組織生検を行いどんながんなのかを調べます。場合によってはCTでの画像診断を依頼することもあります。治療については、三大治療である外科手術、抗がん剤治療、放射線治療を中心に行います。皮膚の小さなしこり程度なら日帰り手術もできますが、大きな手術であれば数日の入院が必要です。抗がん剤の治療では、定期的な通院。放射線治療は、大学病院への通院になります。治療を終えてから2年間、再発や転移がなければ、治癒したという1つの区切りにしています。
  • Q.具体的な症例を教えてください。

    A.

    ▲がん学会認定医による治療を受けられるため、遠方から通院するペットも少なくないとのこと

    最近、口の中にできた腫瘍に対する手術の依頼がかなり増えています。犬ではメラノーマ、扁平上皮がん、線維肉腫。猫では圧倒的に扁平上皮がんが多いですね。特に猫の扁平上皮がんは治療が難しいとされます。当院では猫の口にできた扁平上皮がんに対しても積極的に手術を行っています。当院に来院された猫の場合、かなり進行していることがほとんどですので、完治できる可能性は低いのですが、なかには手術後2年生存した例もあります。ほとんどの場合は手術後半年から1年以内に亡くなってしまいますが、手術しなければそんなに生きることができないがんですので、飼い主様からは「1〜2ヶ月だと思っていたからこんなに生きてくれて、お別れまでの時間をとても有意義に過ごせました」と仰っていただいたりします。
  • Q.末期がんの余命は、どのように過ごせば良いのでしょうか。

    A.

    ▲腫瘍のオペも行える手術室も完備

    もし末期がんが見つかって、すぐに命に関わる状態でなければ、痛みを抑えたり、食欲などを維持するための治療を行います。体が弱ってくると免疫が落ちるので、免疫力を上げるためにインターフェロンやサプリメントなども積極的に使っています。風邪などでさらに体調が悪くなってQOLが下がるのを防ぐ効果があります。末期がんの場合は、がんに対する治療は行いません。残りの時間を家族と穏やかに過ごすためのサポートをしていきます。末期がんの場合、余命がどれくらいかというのはある程度わかりますので、飼い主様は一緒にいる時間を大切に過ごして頂く中で、気持ちの整理をつけることができます。心臓発作などで突然、別れも言えずに亡くなってしまうのとは違うので、飼い主様も十分覚悟ができている場合がほとんどですね。
  • Q.がんにさせないために気をつけることはありますか?

    A.

    ▲定期的に健康診断を受けることが、早期発見の一番の鍵となる、と語る

    残念ながら、がんを予防することができません。がんの原因は多岐に渡ります。しかしその中で唯一、対策ができるとすれば、犬や猫がいる部屋では、たばこを吸わないことです。人に対するたばこの影響はよく知られていますが、それは犬や猫に対しても同様です。特に猫の場合は、グルーミングで体を舐めます。体についたたばこの煙に含まれる成分を常日頃から舐めてしまっているのです。それによって口の中にがんができると言われています。そのため、飼い主様が喫煙されるのであれば、別の部屋でされたほうが良いでしょう。またがんは、早期発見と早期治療が大切です。人の4〜5年が犬猫の1年だということを考えれば、半年に1回は健康診断を受けることがお勧めします。

動物病院からのメッセージ

飼っている犬や猫にがんが見つかったとしても、あまり悲観的にならないでほしいと思います。がんになってしまったということは、それだけ長生きをしたということでもあるからです。そしてがんになってしまったからといっても、その子の命はそこで終わりではありません。可能性があるのであれば、積極的な治療をすることで完治することもあります。完治はできなくとも、緩和的治療で痛みや苦しみから解放させてあげられるかもしれません。可能性があるのであれば、安易に「がん治療をしない」という選択をしないことが重要と考えます。もちろん、治療によるデメリットが大きいのであれば、そこは対症治療により余生を穏やかに過ごさせるのも1つの手です。ただ、手術や抗がん剤がかわいそうだから、という理由だけで治療をせず、かなり進行して見た目も酷くなり、状態も悪くなってから「やっぱり治療して」と来院される方が非常に多いと感じています。飼い主様自身ががんになったらどうするかをよくお考えになり、手遅れにならないうちに後悔のない決断をしてほしいと思います。

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