櫻井仁人 院長の独自取材記事
さくら咲く動物病院
(戸田市/戸田駅)
最終更新日: 2023/01/22
戸田にある「さくら咲く動物病院」は一般的な動物病院のイメージを払拭するような、明るい内装が印象的だ。診察室の壁紙は花柄、院内にはアロマの香りが漂い、リラックスできる雰囲気。同院の院長を務める櫻井仁人(きみと)医師は、「病院だからこそ明るい院内をめざしました」と言う。病院は気持ちが暗くなりがちな場所だが、それまで動物と楽しい時間を過ごしていたことを忘れないでいてほしい。そんな願いをこめたのだ。同院で診療を受ける動物は、驚くほど櫻井院長のことが大好き。そのわけはアロマのリラックス効果だけではなく、動物の立場にたって丁寧に接している櫻井院長の姿によるものだ。動物が病院に来ることを嫌がらなくなるほどの、櫻井院長の動物への思いをじっくり伺った。 (取材日2015年10月28日)
ハリネズミなどのエキゾチックアニマルも診療
こちらではどのような動物を診察していますか?
ペットの種類は小型犬と猫が多いです。土地柄、オーナーさんは20〜30代ぐらいの若い人が多めでしょうか。僕は専門とは言えないですが、エキゾチックアニマルもできるだけ診てあげたいと思っています。今はエキゾチックアニマルを診る病院も少しずつ増えてきていますが、それでもまだまだ少ないですからね。最近ではハリネズミをよく診察していますね。ハリネズミだと「体をかいて、毛が抜ける」という症状を訴えるオーナーさんが多いです。ハリネズミには高確率でヒゼンダニがいるため、このような症状はよく見られますね。ハリネズミの治療には専門の薬がないので、ハリネズミに使っても安全な犬用や人間用のお薬を適量使います。
先生のポリシーを教えてください。
インフォームド・コンセントをしっかりするようにしています。そのために診察時間が長くなりますが、治療への理解は必ずしてもらわなければならないと思っています。他の病院から当院に診察にいらっしゃった患者さんの中には「なぜこの治療をしているのでしょうか?」と僕に質問される方がいらっしゃいます。治療の内容がわからないと不安になるんだと思います。だからこそ、できるだけ理解してもらいたいので、説明の言葉も選びます。われわれは専門用語を使ったほうが手っ取り早いのですが、オーナーさんにもわかるようにかみ砕いた言葉を選んでいます。また、説明の際は、必ずメモを渡しています。絵や字をまじえながら説明すると、記憶にも残りやすいです。自宅に帰られてからのケアも、必要があれば可能な限り書いてあげています。
先生が得意とされている診療について教えてください。
得意な専門分野をひとつ持つというよりは、ジェネラリストでありたいと思うタイプです。将来開業しようとは思っていたのですが、大学時代は様々な経験を積むために生化学教室で環境ホルモンの勉強をしていましたね。一次診療の動物病院としてエキゾチックアニマルも含めてなんでも診て、必要であれば専門的な治療を行う二次診療の動物病院を紹介できることが大事だと考えています。今後はもっとエキゾチックアニマルを診られるようになるといいと思っています。専門病院とはいかないですが、二次診療の機関にまで行かなくてもできる治療はもっとあるはずだと考えています。
意外と知らない人が多い、犬や猫の正しい飼い方をサポート
寄せられる相談にはどのようなものがありますか?
初めてペットを飼った方からの飼い方がわからないという質問が多いですね。意外かもしれませんが、ペットとしてポピュラーに思える犬や猫でも飼い方をよくわかっていない方も多いです。飼い方のイメージが先行し、その通りでなかった時にどうしたらいいかわからないことが結構あるようです。正しい飼い方を知っておくことはしつけをきちんとするためにも大切です。犬や猫は、生後一年経てば人間でいうところの20歳になるので、教育にかけられる時間がとても短いです。ペットたちはその短い期間で多くのことを学ばなければなりません。当院では、しつけのアドバイスはしっかり飼い主さんに説明するようにしています。その時には歯磨きの重要性も伝えるようにしております。特に、犬は小さい頃に歯磨きされることを覚えればきちんと我慢できるようになるので積極的にやっていただきたいです。
歯磨きをしつけるコツはありますか?
のんびりやることですね。最初は、指で歯磨き粉をペットの口に付けたり舐めさせたりするところからスタートします。それに慣れてきたら、今度は歯ブラシに歯磨き粉を付けて舐めてもらいます。いよいよ歯ブラシを使って歯磨きするときは、磨きやすい犬歯から磨きます。そして、徐々にお口の奥まで磨くようにすると良いでしょうね。いきなり奥のほうまでやると嫌がりますし、トラウマになってもう歯磨きができなくなってしまうかもしれません。ただし、ゆっくりといっても生後4ヵ月を目安にするとよいでしょう。お口は将来、オーナー様の悩みの種になりやすいところです。早い子だと2〜3歳で飼い主さんが「お口の中が臭い」という理由で来院されます。特に、小型犬は顎が小さいため汚れが溜まりやすいですね。子犬を飼い始めたばかりでしたら頑張って歯磨きをしつけていただくことをお勧めします。
しつけの過程が小児歯科での診療を見ているかのようです。
人間のお子さんの診察とは似ているかもしれませんね。僕は当院に来た動物がこの場所を嫌いにならないようにするためにはどうすれば良いか、常に考えるようにしています。飼い主さんはもちろん動物たちにもリラックスしてもらうために当院ではアロマを使っています。また、動物は人間が早く動くのを嫌うことが多いので、ゆっくり動くようにしています。特に、猫は嫌がりますね。それと、少しでも病院の怖いイメージが取れるように治療を頑張った子にはごほうびをあげています。
飼い犬の影響でランニングが趣味に
獣医師をめざしたきっかけを教えてください。
僕の父が動物好きだったんです。ですから、生まれた頃からありとあらゆる動物がいました。犬、猫、ハムスター、ネズミ、モルモット、アライグマ、保護した野鳥、魚、トカゲ、カエルなどです。いつから、というのは覚えていませんが、小学校2年生の文集には将来の夢に「獣医師」と既に書いていました。その中でも一番印象に残っているペットは学生時代に飼っていたフェレットです。大学は北海道に1人暮らしで、フェレットが小さい頃からずっと一緒にいたペットでした。学生時代をともに過ごした友人という感じです。フェレットはそれまで飼ったことのない生き物だったので、どうやって飼うのが良いか調べて、考えるのが楽しかったです。実際に手で触れていて、育てた経験があると、オーナーさんにも「こうしたら飼いやすい」と説明しやすいですね。教科書に書いてあるとおりの説明をしても伝わりにくいんですよね。
先生の休日の過ごし方を教えてください。
飼い犬とランニングをしています。速いかどうかはわかりませんが、距離でいうと毎日10kmぐらいは走っています。というのも、僕の飼っているサルーキという犬種はとても運動量を必要とする犬です。僕自身はもともと、走るのが好きなほうではなく、こんなことになるとは思ってもみませんでした(笑)。最近では、ランニングが趣味の人はこういうところを楽しんでいるんだな、というのがわかるようになってきました。飼い犬によってライフスタイルも変わりましたね。今は暇さえあればフルマラソンにも出たいです。それと、最近は水槽で海の生物も飼い始めました。過去には淡水魚も飼ったことがあったので、今度は海水魚もやってみようと、サンゴにも挑戦しています。サンゴは機材がそろっていても飼育が難しく、またなかなか美しく育ちません。まだまだ初心者ですが、いかに美しく成長させるかを悩むのが楽しいです。全般的に動物に対して手間をかけてあげたい、という気持ちが強いのかもしれないですね。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
動物の元気がないと思ったら、まず診察に来てください。「少し様子を見てみたいのですが……」とおっしゃるオーナー様も多いですが、人間と同じで早期治療がより良い結果を生みます。人と動物の時間の進み方の差を理解してほしいのです。特に、エキゾチックアニマルは、飼い始めてから1週間以内に必ず健康診断を受けてください。もしも病気にかかっていた場合に間に合わなくなってしまいます。寿命が短いエキゾチックアニマルにとっての1週間は、人間の数ヵ月に相当することがあります。だから、「1週間様子をみていたのですが……」と来院されても残念ながら間に合いませんでした、ということが起こってしまいます。取り越し苦労であれば、それに越したことはないですしね。「なんともないですよ」「良かった」で帰れるならそれが一番です。動物病院の意義は病気を治すことだけではありません。オーナーさんと動物に安心してもらうための場所でもあるのです。