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高柳 信子 センター長、浴本 涼子 先生、フリッツ吉川 綾 先生の独自取材記事
アニマル・メディカル・センター
(渋谷区/神泉駅)
最終更新日: 2023/04/18
渋谷区松濤の閑静な住宅街、山手通り沿いにあるレンガ模様のビル1階にあるのが、「アニマル・メディカル・センター」だ。広くて清潔感のある院内が印象的な同院は、犬と猫を対象に一般診療から腫瘍の外科治療のほか、鍼灸、行動療法、理学療法まで専門性の高い医療を提供。加えて、グルーミングサロンも併設しており、動物の健康と美容をトータルで診ることをめざしている。さらに、猫に関する専門的な知識と質の高い医療が提供できる「キャット・フレンドリー・クリニック認定病院」である点も特徴。そんな同院の高柳信子センター長と浴本涼子(えきもと・りょうこ)先生、フリッツ吉川綾(ふりっつきっかわ・あや)先生の3人に、それぞれの専門や動物診療にかける思いなどを聞いた。(取材日2023年3月3日/更新日2023年4月13日)
犬と猫の健康と美容をトータルでケアすることをめざす
まずは、病院を紹介していただけますか?
【高柳センター長】当院の対象は犬と猫です。グルーミングサロンも併設しているので、ワンちゃんと猫ちゃんを健康と美容の両面からトータルでケアできます。病気を早期発見するため、具合が悪くなってからではなく、日頃から健康チェックやシャンプーに来ていただければと考えています。そのためにも、気軽に相談できる場になることが地域に密着したかかりつけ動物病院の役割と考え、飼い主さん向けの歯磨きセミナーの開催やSNSによる情報発信にも努めています。診療ではいわゆる一次診療に幅広く対応する一方で、大きな手術や入院が必要になった際は二次診療施設や大学病院へ紹介し、適切な診療を受けられるようサポートすることも、かかりつけの大切な役割と考えています。また、獣医師がそれぞれの専門分野において治療を行っていることも当院の特徴です。地域柄もあってハードルが高いと思われることもあるようですが、普通の動物病院と変わりません。
高柳センター長の専門について、教えてもらえますか?
【高柳センター長】私の専門分野は腫瘍です。最近は犬と猫の両方に発症の増加傾向がみられるようです。一般的に犬は皮膚腫瘍、猫はリンパ腫という血液腫瘍が多いですね。治療は腫瘍の種類によって違いますが、基本的に標準治療は人と同じで、手術で腫瘍を切除する外科療法、放射線療法、抗がん剤が主となる化学療法です。当院では、大きな手術で何日も入院が必要な場合、放射線治療が必要な場合などは二次診療施設や大学病院を紹介しています。しかしさまざまな理由から、飼い主さんが積極的な治療を希望しないこともあり、場合によっては緩和ケア、終末期治療を行います。
緩和ケアはどのように行うのですか?
【高柳センター長】たとえ治癒が難しくても、いかに生活の質を守るかを飼い主さんと一緒に考え、緩和ケアにあたるようにしています。当院では、LEDを用いた動物専用の光線治療器を導入しています。心地良い温熱感で、関節炎や椎間板ヘルニアなどの痛みや炎症を和らげることが望め、当院ではがんの疼痛ケアにも積極的に使用しています。また、光線治療器による光温熱療法は、がん細胞が正常の細胞よりも熱に弱いことを利用し、がん細胞のみを抑えることが期待されています。痛みをコントロールし、最後までできるだけ生活の質を下げないことを大切にしています。
先進の機器を用いた治療や鍼灸、行動診療にも注力
先進の機器も積極的に導入しているそうですね。
【高柳センター長】ええ。手術をする際、おなかの中で血管などを止めるときに糸を使うと、それが後々肉芽腫というしこりになってしまうことがあります。それを避けるために、外科手術用エネルギーデバイスという機器を導入しています。これを使えば、手術でも糸を使わずに血管を止血、切断できます。手術時間も短縮でき、動物の体にかかる負担軽減もめざせます。もう一つは、オトスコープと呼ばれる耳の内視鏡です。犬や猫の病気の中でも、耳のトラブルはかなり多くみられます。この機器を使用することで鼓膜や耳道内を拡大して映し、モニター画面でトラブルとなっている原因を確認できます。さらに内部の洗浄や異物や細かい耳毛の除去、しこりなどの詳しい検査や治療も可能になりました。
浴本先生が力を入れていることは何ですか?
【浴本先生】私は鍼灸を得意としています。現在は、椎間板ヘルニアなどの運動器疾患に行うことが多いですが、老犬のケア、内科疾患にも有用といわれます。針を刺すことに抵抗があるかと思いますが、予防注射などに使用する注射針と違い、ずっと細い針を使用するので痛みは少なく済みます。初めてで怖がるような場合は、リラックスできるようにまずは優しくマッサージしていきます。気持ちが良いとわかると受け入れてくれる子がほとんどです。私は自然治癒力を高めることにつながると考え、鍼灸を行っています。獣医師として、その子が本来持つ治る力をサポートしてあげたいと思っています。
吉川先生の専門は何でしょうか?
【吉川先生】私は行動診療といって、問題行動の予防、診断、治療が専門です。問題行動とは、飼い主さんなど人から見て問題だと感じる行動のことです。具体的には、犬だと噛む、唸るなどの攻撃行動や、自分の尻尾を追いかけて噛んでしまう常同障害などが挙げられます。猫の場合も攻撃行動のほか、トイレ以外の場所での排泄や同じ場所ばかりを舐めて毛がはげてしまうことなどがあります。ストレスや恐怖、嫌だなと感じる状況が問題行動を起こしている可能性が高く、言葉で伝えることができない動物のサインと捉えて治療に取り組む必要があると考えます。カウンセリングを通して原因を把握し、行動療法や環境改善、薬物療法などを組み合わせて治療を行っていきます。行動診療はまだあまり知られていませんが、ペットとの暮らしで悩んでいる飼い主さんがいれば、ぜひご相談ください。
気軽に足を運んで、なんでも相談をしてほしい
リハビリテーションにも取り組んでいると伺いました。
【高柳センター長】理学療法に基づいたリハビリテーションにも力を入れています。当院には動物の理学療法に精通するスタッフが在籍し、アンダーウォータートレッドミルという設備を使用して、水中での歩行運動を行っています。浮力の力を利用することで、関節にかかる負担が軽減できますので、ダイエットや関節などの術後の早期回復にもつながります。それ以外にも、バランスボールやバランスディスク、コーンを立てての歩行練習やマッサージなどのリハビリにも取り組んでいます。もう一つ、当院には医療用のオゾン水発生装置を導入しています。オゾン水には抗菌作用があり、例えば皮膚病になるべく抗生物質を使いたくないとき、トリミングでシャワーをするときなどに、汚れやにおいを取る目的で使用できるのがメリットです。
診療の際に心がけていることはありますか?
【高柳センター長】インフォームドコンセントといって、飼い主さんにわかりやすく十分に説明して、納得と同意を得た上で一緒に治療をするというプロセスを大切にしています。そして、飼い主さんが考え抜かれた結果に、獣医師として最善の技術と知識を持って治療にあたるよう常に意識し、不安を和らげることも大切だと考えています。【浴本先生】その子が嫌がることはできるだけせず、どうしてもやらなくてはいけないのであれば、できるだけ短時間にするなど、その子の気持ちを大切にしたいと思っています。 【吉川先生】飼い主さんと動物の両方の気持ちに寄り添うこと。私は獣医師ですから、動物を救おうという気持ちになりがちですけど、両方の気持ちに寄り添って、それをつなげるのが私の役割なのかなと思っています。
今後の抱負とメッセージをお願いします。
【高柳センター長】私たちもさらにスキルアップし、先進の機器も積極的に導入し、最新の治療がご提供できるようにしていきたいです。そして、もっと飼い主さんとワンちゃん、猫ちゃんに寄り添って、かかりつけ動物病院としての役割を果たしていきたいと考えています。当院はあまり宣伝をしてないこともあって、「ここに動物病院があったの?」と言われることもあります。ですから、まずはここに当院があるということを知っていただき、各専門の獣医師とその子の健康を一生サポートさせていただきたいと思っています。少しでも皆さんのお役に立ちたいと思って頑張っているスタッフばかりですし、完全予約制なので、時間を取ってしっかりとお話を伺うことが可能です。臆病で人見知りのワンちゃん、猫ちゃんでも安心してご来院ください。動物と飼い主さんの健やかな暮らしを願うスタッフ一同お待ちしています。