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高柳 信子 センター長、浴本 涼子 先生、フリッツ吉川 綾 先生の独自取材記事

アニマル・メディカル・センター
(渋谷区/神泉駅)
最終更新日: 2023/03/14

神泉駅から徒歩約8分。山手通り沿いにあるレンガ模様のビル1階にあるのが、「アニマル・メディカル・センター」だ。広くて清潔感のある院内が印象的な同院は、犬と猫を対象に一般診療から腫瘍の治療や鍼灸、行動療法、リハビリテーションなどまで専門性の高い治療も提供。加えて、グルーミングサロンも併設しており、動物をトータルで診ることをめざしていると言う。そんな同院の高柳信子センター長と浴本涼子(えきもと・りょうこ)先生、フリッツ吉川綾(ふりっつきっかわ・あや)先生の3人に、それぞれの専門や動物診療にかける思いなどを聞いた。(取材日2023年3月3日)
犬と猫の全身をトータルでケアすることをめざす
まずは、病院を紹介していただけますか?

【高柳センター長】当院は、グルーミングサロンも併設しながら、犬と猫の病気から全身のケア、美容面まで全身をトータルで見させていただけるような、地域に密着したかかりつけの動物病院になることをめざしています。対象は犬と猫で、いわゆる一次診療に幅広く対応しています。その中で、大きな手術や入院が必要な場合には、適切な二次診療施設や大学病院に紹介することも大切な役割だと考えています。地域柄もあって敷居が高いと思われていることもあるようですが、実際には普通の動物病院と変わらない感じです。特徴としては、獣医師のそれぞれが専門の分野を持ち診療していることがあります。また、猫に専門的な知識と質の高い医療が提供できるキャット・フレンドリー・クリニック認定病院にもなっています。
高柳センター長の専門について、教えてもらえますか?
【高柳センター長】私は腫瘍が専門ですが、最近は犬と猫の両方で増えていると感じています。一般的に犬は皮膚腫瘍、猫はリンパ腫という血液腫瘍が多いですね。治療は腫瘍の種類によって違いますが、基本的に標準治療は人と同じで、手術で腫瘍を切除する外科療法、放射線療法、抗がん剤が主となる化学療法です。当院では、大きな手術で何日もの入院が必要であったり、放射線治療が必要な場合などは、二次診療施設や大学病院を紹介しています。しかし、さまざまな理由から、飼い主さんが積極的な治療を希望しないこともあり、場合によっては緩和治療、終末期治療を行います。
そのようなときは、どうするのですか?

【高柳センター長】たとえ治せないとしても一緒にできることをしていましょう、という治療が緩和ケアになります。当院では、LEDを用いた動物専用の光線治療器を導入しています。効果として心地良い温熱感が期待でき、関節炎や椎間板ヘルニアなどの痛みや炎症を和らげることが望めるのですが、当院ではがんの疼痛ケアにも積極的に使用しています。また、光線治療器による光温熱療法は、がん細胞が正常の細胞よりも熱に弱いことを利用し、がん細胞のみを抑えることが期待されています。ですから、痛みをコントロールし、最後までできるだけ生活の質を下げないことを大切にしています。
先進の機器を用いた治療や鍼灸、行動診療にも注力
先進の機器も積極的に導入しているそうですね。

【高柳センター長】そうですね。手術をする際、おなかの中で血管などを止めるするときに糸を使うと、それが後々肉芽腫というしこりになってしまうことがあります。それを避けるために当院では、外科手術用エネルギーデバイスを導入しています。これを使えば、手術でも糸を使わずに血管を止血、切断することができます。手術時間も短縮できるので、動物の体にかかる負担も少なくすることがめざせます。もう一つは、オトスコープと呼ばれる耳の内視鏡です。犬や猫は外耳炎や耳垢で汚れていることがよくあります。また耳の奥にしこりが見つかることもあります。この内視鏡を使えば、耳の奥を見られるのに加えて、耳垢とか耳毛などの異物を取ることができるので、これまでなかなか治らなかった耳のトラブルも治療することがめざせます。
浴本先生が力を入れていることは何ですか?
【浴本先生】私は鍼灸を得意としています。現在は、椎間板ヘルニアなどの運動器疾患に行うことが多いですが、老犬のケア、内科疾患にも有用と言われています。針を刺すことは痛いというイメージがありますが、普通の注射針よりずっと細いので、痛みはほとんどありません。初めてで怖がる子には押さえつけてやることはなく、できる範囲で行います。ですが、やっても痛くないとか、気持ちが良いということがわかると受け入れてくれる子がほとんどです。鍼灸は、自然治癒力を高める、その子が本来持っている治る力をサポートしてあげられるところが良いと思います。
吉川先生の専門は何でしょうか?

【吉川先生】私は行動診療と言って、問題行動に対する予防、診断、治療が専門になります。問題行動とは、動物から見て異常とかではなく、飼い主さんなど人から見て問題だと感じる行動を言います。具体的には、犬だと噛む、唸るなどの攻撃行動や、常同障害と言いますが、よくあるのが自分の尾っぽを追いかけて噛んでしまう行動など。猫の場合も攻撃行動のほか、トイレ以外の場所での排泄や同じ場所ばかりを舐めて毛がはげてしまうことなどがあります。多くの場合でストレスや恐怖、嫌だなということを感じてそういう行動を起こしているので、動物も困っています。原因を突き止めた上で、行動療法や環境改善、薬物療法などを組み合わせて、治療を行っていきます。行動診療はまだあまり知られていませんが、そういうことで困っている飼い主さんがいれば、ぜひ相談に来ていただきたいと思います。
気軽に足を運んで、なんでも相談をしてほしい
リハビリテーションにも取り組んでいると伺いました。

【高柳センター長】リハビリテーションにも力を入れています。当院には動物のリハビリテーションが得意なスタッフがいるほか、アンダーウォータートレッドミルと言って、水中で歩行運動をさせることができる設備を導入しています。関節にかかる負担が軽減できますので、ダイエットや関節などの手術をした後にもお勧めです。それ以外にも、バランスボールやバランスディスク、コーンを立てての歩行練習やマッサージなどのリハビリテーションにも取り組んでいます。もう一つ、当院には医療用のオゾン水発生装置があります。オゾン水には抗菌作用がありますので、例えば、皮膚病などでできるだけ抗生物質を使わずに治療をめざすときや、トリミングのときのシャワーで使って、汚れやにおいを取るために使用できるなどのメリットがあります。
診療の際に心がけていることはありますか?
【高柳センター長】インフォームドコンセントと言いますが、飼い主さんにわかりやすく十分に説明して、納得と同意を得た上で一緒に治療をするというスタンスを大切にしています。そして、飼い主さんが一生懸命考え抜いて選んだのであれば、それが獣医学的にはベストではなくても、それがベストな治療だと考えて進めるようにしています。 【浴本先生】その子が嫌がることはできるだけしないこと。どうしてもやらなくてはいけないのであれば、できるだけ短時間にするなど、その子の気持ちを大切にしたいと思っています。 【吉川先生】飼い主さんと動物の両方の気持ちに寄り添うこと。私は獣医師ですから、動物を救おうという気持ちになりがちですけど、両方の気持ちに寄り添って、それをつなげるのが私の役割なのかなと思っています。
今後の抱負とメッセージをお願いします。

【高柳センター長】私たちもさらにスキルアップし、先進の機器も積極的に導入し、最新の治療がご提供できるようにしていきたいです。そして、もっと飼い主さんとワンちゃん、猫ちゃんに寄り添って、役立てる病院にしていきたいですね。当院はあまり宣伝をしてないこともあって、ここに動物病院があったの?って言われることもあります。ですから、まずはここに当院があるということを知っていただきたいですし、いろいろな専門の獣医師がいて、その子の全部を診させていただきたいと思っています。少しでも皆さんのお役に立ちたいと思って頑張っているスタッフばかりですし、完全予約制なので、臆病や人見知りのワンちゃん、猫ちゃんでも大丈夫です。時間もお待たせしませんので、ぜひ気軽に足を運んでいただいて、いろいろなことを相談してほしいと思います。