村上 彰一 院長の独自取材記事
埼大通りどうぶつ病院
(さいたま市桜区/南与野駅)
最終更新日: 2023/10/13
さいたま市桜区の埼大通り沿いで、犬と猫を対象に地域密着の獣医療の提供をめざしているのが、「埼大通りどうぶつ病院」だ。大型犬が入ってもゆとりがある、広々とした明るい待合室が印象的な同院。村上彰一院長は、同院を開院するまでは救急医療に特化した動物病院に勤務し、従事してきた獣医師。同院でもその経験を生かしながら、一次診療に加え、救急を含む夜間診療や手術など専門性の高い治療にも取り組んでいる。「こんな些細なことで受診して良いのかと思わずに、日中でも夜間でも気兼ねなく利用してほしいと思っています」と気さくに話す村上院長に、同院について詳しく話を聞いた。(取材日2023年9月11日)
夜間救急にも対応する地域密着の動物病院
最初に、こちらの動物病院の概要を教えてください。
当院は、犬と猫を対象に地域に密着した獣医療を提供することをめざしています。急な症状にもできるだけ対応したいので、夜間救急診療も行っています。設備としては、内視鏡、デジタルエックス線撮影機、超音波検査装置、歯の治療機器、歯用のエックス線撮影機のほか、手術室やICU、犬と猫で別々の入院室などを備えています。院内は、大型犬などが来ても窮屈に感じないよう飼い主さん側のスペースを広くして、快適に過ごせるよう工夫しています。また、長く救急医療に携わってきたこともあって、重症の子が来てもスムーズに対応できるような院内の動線を意識しています。例えば、ICUは処置室に設置し、従業員の意識が行き届きやすくしています。ICUが奥の部屋にあると急変したときに気づきにくく、迅速な動けませんからね。処置室にあることで、何かあった時でもすぐに対処できるようにしています。
特徴はどのようなところでしょうか?
一番は夜間救急診療に対応していることです。平日診療日は、午前と夕方に加えて21〜24時も診療をしています。私は、これまでに所沢市にある救急医療専門の動物病院に5年ほど勤務し、経験を積んできました。そこでの経験を生かしていきたいという思いがあります。実際に、心臓病などの持病があって夜に急変したり、ずっと調子が悪そうではあったけど、飼い主さんが日中は忙しく、なかなか病院に連れて行くことができずに、そのうちすごく具合が悪くなってしまったりなど、夜間は意外と需要があります。また、夜間救急診療と言っていますが、救急を要する状態でなくてもご利用いただいて大丈夫です。
ICUでは、24時間の管理をしているのですか?
よほど具合の悪い子がいるときは、夜通しで診ることもあります。夜中の2〜3時くらいまで診ていることは、よくありますね。以前から「急に具合が悪くなったら診てくれるのか」、「入院で預かったときに夜通しで診てくれるのか」という質問が飼い主さんから多かったんです。すごく求められていることがわかり、24時までですが夜間救急診療を受けつけることにしました。私のほか、勤務獣医師も救急に関して豊富な経験があり対応に慣れていますので、救急でも慌てずにその時に何が一番必要なのかを迅速に判断できます。苦しんでいる子がいれば、検査ばかりに追われてその子の状態がどんどん悪化してしまう、下手したら命を落としてしまうことにもなりかねません。緊急時には検査も重要ですが、必要最低限なものを迅速に済ませ、まずは容態の安定に重きを置いて対応するようにしていますので、飼い主さんには安心していただきたいですね。
口の中の治療やケアにも力を入れる
ほかに力を入れていることはありますか?
歯科治療です。特に、高齢の犬や猫は歯が悪いことが多いのですが、「高齢で麻酔をかけられないからしょうがない」とそのままにしていることも少なくないようです。当院では年齢を確認することはもちろんですが、まずは検査を行い、全身の評価をして、大丈夫そうであれば麻酔をかけて歯科処置を行っています。もちろん麻酔には注意を払って、丁寧に行うようにしています。そして、当院では歯用のエックス線撮影機を導入しています。歯の根の状態を適切に評価でき、抜歯の判断なども的確にすることがめざせます。また、歯石取りや抜歯に使用する動物用歯科ユニットも導入しており、効率的に安全に配慮して歯科処置を行うことができます。
動物も口の中の健康は大切なのですね。
私は大切だと思っています。最近は人間でも歯周病が糖尿病やアルツハイマー病、心臓病、肺炎など全身の病気に関係していると言われています。動物の場合は、はっきりとした因果関係はわかっていませんが、同じようなことがあるのではないかと考えています。例えば、高齢で初めてけいれん発作が出たとか、肺炎になったとか、そのときの病態としてはそれぞれの臓器が悪いのは間違いないでしょうし、口の中に原因があるというのは調べようがありません。ですから、そういう可能性があるということを飼い主さんに話して、そうなる前に処置やケアをしてあげるのが大切だと考えています。歯周病になると単純に痛いでしょうし、口臭もひどくなります。それがその子自身やご家族の生活の質を下げることになるでしょうから、積極的に診ているというのもありますが、長い目で見てまた別のメリットもあるのではないかと考えています。
診療の際に心がけていることはありますか?
飼い主さんに、状況をできるだけわかりやすくお伝えすることですね。自分の子の持病やどんな薬を飲んでいるのかを把握していない飼い主さんもいますから、わかりやすく伝えて理解してもらえれば良いなと思っています。あとは、動物病院は基本的に病気で来るところですから、言い方が適切ではないかもしれませんが、満足して帰ってもらうこと。例えば医学的にはそこまでする必要はないことでも、飼い主さんが心配されるのであれば、できる限り希望に応えるようにしています。さらには、治療方法の選択肢をここではできないことも含めて隠さずに提示すること。その上で、どうすれば良いかわからないようであれば、自分の子がこういう状況だったらこうしますというように、お伝えするようにしています。
夜間でも気兼ねなく利用してほしい
飼い主が安心するための取り組みはありますか?
例えば、超音波検査はすぐにやりますね。その場で迅速にほとんど負担なく実施できるため、診療において特に重要なツールだと思っています。装置にもこだわり、精度の高い検査がめざせるものを入れています。また、超音波検査はその扱い方、どこに着目して検査を進めていくかで検査の質が変わってきますので、これまで積み重ねてきた経験をもとに適切に対応するよう心がけています。それに、例えば心臓のエコー検査をするときは、動物の体を横にして押さえてするのが基本ですが、苦しがっている子にはそんなことはできませんから、座っている状態で検査することもあります。超音波検査は、動物への負担も少なく、結果として何もなかったり、何か異常があれば精査したり、飼い主さんにも安心してもらえるのではないでしょうか。
話は変わりますが、先生はなぜ獣医師を志したのですか?
単純に動物が好きだったからですかね。人の医師になりたいと思っていたこともありました。でも、進路をいろいろ調べていた時に、今の人の医療のように専門分野に特化するよりも、自分で全体的に診られるほうがやりがいがあるなと考えて獣医師に興味を持ち、獣医学部に進学しました。卒業後は数年、一般診療をしていたのですが、すごく苦しそうとか、ぐったりしている子が連絡なしで来たときに、全然動けていない自分がいたんです。それがすごく嫌で、救急医療のことをしっかり勉強したいと思って、もともと興味のあった救急専門の動物病院に勤務することにしました。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
今は、自分のしたいことが割とできている実感があります。ですが、高度な手術などは紹介せざるを得ないところがあるので、もっと自分が対応できる幅を広げていければ、苦しんでいる子たちを少しでも早く楽にしてあげられるのではと思います。当院は夜間診療を設け、雰囲気も良いところだと思いますので、気兼ねなく来ていただきたいですね。よく、こんなことで来て良いのですかと聞かれますが、動物は自分のことは話せませんし、大丈夫そうに見えても実はまずい状況だったということもあり得ます。そういうことを見落としたくないので、受診のタイミングについてまったく気にすることはありません。また、動物病院に慣れておくことも大事ですので、雰囲気を見るだけとか、ちょっと寄っていただくだけでも大歓迎です。