鈴木 憲人 先生の独自取材記事
hanaペットクリニック
(文京区/江戸川橋駅)
最終更新日: 2025/02/28

飼い主にとって大切な家族である動物に、正しい獣医療を届けたい。そんな思いを抱きながら、地域の獣医療に貢献している「hanaペットクリニック」。現在は鈴木憲人先生が中心となり、犬と猫を対象に、一次診療施設として幅広い診療に対応している。中でも鈴木先生の専門分野である歯科に注力しており、口腔内のクリーニングの他に、重度の歯周病治療や破折歯の神経の治療、乳歯遺残などによる不正咬合の矯正など専門性の高い歯科診療も院内で提供している。「飼い主さまと動物がより良い生活を送れるように、さまざまな技術を磨いてきました。得意分野である歯科はもちろん、それ以外の分野のことも何でもご相談ください」と優しい笑顔で話す鈴木先生。取材では得意とする歯科について、診療の際に心がけていること、今後の展望などを詳しく聞いた。(取材日2025年1月21日)
専門性の高い歯科診療も可能な、地域に根差す動物病院
鈴木先生は歯科を専門とされているとお伺いしました。

そうですね。大学卒業後はしばらく一次診療を提供する動物病院に勤めていて、その時の経験から何か専門性を身につけたいと考えるようになりました。歯科疾患、特に歯周病は犬も猫も、皆がかかる疾患でありながら、専門的に治療を行う獣医師は少ないと思っています。何度も歯科治療を受けてもよくならない、またすぐ再発してしまうということは、実はよくあるのですが、「罹患率の高い疾患だからこそ、一次診療施設で100%治してあげられるようになりたい」と思ったのが歯科を選んだきっかけですね。その後は杉並区にある歯科に注力する荻窪ツイン動物病院に勤務し、歯科に関する多様な知識・技術を取得しました。当院へ来てからは、ここでも高度な歯科診療を提供できるように体制を整えましたね。
具体的にどのような歯科診療を提供されているのでしょうか?
歯科治療用ユニットや歯科用エックス線などの機器をそろえて、口腔内のクリーニングや重度の歯周病治療、歯が折れたり欠けたりした破折、生後7ヵ月頃までに乳歯が抜けず残ってしまっている乳歯遺残、歯の生え替わりがうまくいかないことで起こる不正咬合、猫で多い口内炎や舌炎などに対応しています。口腔内腫瘍に関しては、診断までを当院で実施し、治療が難しい部位や状態である場合は二次診療施設をご紹介。このように一般的な症例から専門的な知識・技術・設備がないと対応が難しい症例まで、口腔内のことならほとんど院内での対応を可能としています。気軽に受診できる地域の動物病院で、専門性の高い歯科診療を受けられるというのが、当院の大きな強みではないでしょうか。
高齢動物への歯科治療も多く対応されているそうですね。

ええ。歯周病をはじめ、歯科疾患の多くは高齢になるほどかかりやすくなるのですが、「高齢だから全身麻酔をかけての歯科治療は難しい」と対応を断られるケースがよくあります。また麻酔は怖いからと、無麻酔下での歯科治療を検討される方もいると聞きます。しかし実は、高齢だからといって麻酔が必ずしもかけられないということはありません。術前検査をしてみると問題なく実施可能であることが多いんです。もちろん麻酔によるリスクは少なからずありますが、術前にしっかりと検査を行い、安全性に配慮して徹底した管理下で行えば実施することが可能です。むしろ無麻酔下で歯科治療を行うと、正しい治療につながらず、十分な効果が期待できません。加えて顎の骨が折れたり、目や顔を傷つけたり、動物がトラウマを負ったりする恐れもあります。「高齢だから」「他院で断られたから」と諦めずに、口腔内のことで気になることがあればぜひ相談しに来てください。
丁寧な対応で、飼い主と動物が安心できる診療を
改めて、こちらで提供されている診療内容を教えてください。

当院では犬と猫を対象としています。診療内容は専門的な歯科診療の他に、体重減少や食欲不振などの一般診療、避妊・去勢をはじめとする一般外科手術、定期的な健康診断として行っている「ペットドック」、各種ワクチン接種などに対応しています。CTやMRIなどを用いた精密検査や、悪性腫瘍の治療など専門的な医療が必要な場合は、無理に院内完結をめざすのではなく、近隣の二次診療施設をご紹介していますので、ご安心ください。
診療の際に大事にされていることはありますか?
診療の前にしっかりとした説明を行い、それに対して飼い主さまが十分に理解と納得をされた上で診療を進める「インフォームドコンセント」を大事にしています。特に歯科診療の初診時は必ず、30分~1時間ほど時間をかけて丁寧に飼い主さまのお話をお聞きしたり、疾患や治療などの説明をしていますね。歯の構造からどんな疾患があるのか、どんな治療の選択肢があるのかなどを、模型や画像などを用いながらわかりやすく説明させていただいています。そうすることで、不安が少なく満足度の高い治療につながっています。実際、こんなに丁寧に診てもらったのは初めてとの声もよくいただきます。また受診回数を重ね、僕と飼い主さまのお互いに、相手への理解が深まり、良い関係が築けた際にも、細かい気遣いや感謝を忘れないように意識しています。
動物と接する際にはどのようなことを心がけていますか?

歯科でいえば患部である口腔内を診させてもらえないと診療になりません。ですから動物に対しては、時間をかけて優しく接することを大切にしています。そうして信頼関係を築き、少しずつ触っても問題ない箇所を増やしていくことで、最終的に患部を問題なく診させてくれるようになるんです。口周りを触られるのを嫌がる動物は多いですが、当院ではほとんどの子が診させてくれています。飼い主さまにはよく、「いつもは触らせてくれないのに!」と驚かれますね。
専門的な相談も。何でも頼れる動物病院をめざして
ちなみに、鈴木先生はいつ頃から獣医師を志されたのでしょうか?

母が獣医師である影響から、小学生の頃には自分も獣医師になりたいと考えていました。その後も他の進路に揺らぐことなく、真っすぐ獣医師への道を進んできましたね。大学卒業後は8年ほど勤務医として勤めていましたが、もともと開業か母の動物病院の継承をしようと決めていました。ですから十分に経験を積めたと感じたタイミングで当院へ来ました。当院で診療をするようになってから強く感じたのは、飼い主さまとの距離の近さです。勤めていた動物病院のように複数の獣医師が在籍し協力しながら診療を行う場合、飼い主さまは獣医師というより、その動物病院自体に根づくことが多いでしょう。一方で、ほぼすべての診療を僕が担当している現在は、飼い主さまは僕のことを信じて診療を受けに来てくれていることが、ひしひしと伝わってくるのです。その期待に応えられるように、常に気を引き締めて、しっかりと向き合っていきたいと思っています。
今後の展望・目標をお聞かせください。
これからも歯科のニーズはなくなりません、むしろ高まっていくでしょう。そうした状況を踏まえて、一匹でも多くの動物により正しい歯科診療を届けたいと考えています。そのためにも院内のスペースを拡充させたり、スタッフを増やしたり、少しずつ体制を整え手を広げていく予定です。また歯科以外にも、皮膚科や循環器科など、ニーズの高い分野を専門的に診られるようにしたいと思っています。まず今は皮膚科を勉強中でして、日々新しい知識・技術の習得に努めています。皮膚科の治療は長期的なものが多いですから、飼い主さまと動物、それぞれにとって負担が少ない治療の提案をしていきたいですね。まだ「専門的」とまでは至っていませんが、しっかりと診ていくことを大事にしていますので、皮膚のことについても相談していただけたらうれしいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

動物病院は受診のハードルが高い、と感じている飼い主さまは少なくないと思います。しかしそれだと、疾患が重症化してからの受診になりやすいです。手遅れになることを防ぐためにも、動物病院には、疾患が早期の段階、あるいはまだ発症していない予防の段階で来ていただきたいです。そこで受診のハードルを下げるためにも、爪切りや肛門腺絞りのために、散歩のついでにと、特に症状がなくても気軽に来てください。そうして飼い主さまと動物にとって、身近な存在になれたら幸いです。また昨今はインターネットが普及しさまざまな情報が飛び交う時代ですから、「何を信じたらいいかわからない」と悩んだ際にもぜひ相談しに来てください。お待ちしています。