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本田 譲司 院長の独自取材記事
ほんだ動物病院
(国分寺市/国立駅)
最終更新日: 2023/01/22
国立駅から住宅街を歩いて10分ほど。大通り沿いの好立地にある「ほんだ動物病院」は犬・猫を診療する動物病院だ。本田譲司院長のはっきりとした物言いに信頼を寄せる飼い主が多いそうで、開業から13年あまり、地域に密着して診療を続けてきた。今でも積極的に勉強を続けるバイタリティあふれる院長。今回は、病院のこと、院長のことを知ってもらうべく、インタビューを行った。 (取材日2016年11月15日)
なんでもはっきりと話すことで信頼関係を築いていく
先生が獣医師をめざしたきっかけを教えてください。
月並みですが、もともと動物が好きだったからです。子どもの頃は団地に住んでいたので犬も猫も飼えない環境でした。その代わり、野良猫の世話をしたりしていましたね。最初は獣医よりも盲導犬の訓練をしたり、大動物にも興味があったのですが、最終的に身近な小動物の治療を行う獣医になりました。実は、同年代の獣医と比べて僕は開業が遅いほうなんです。日本大学の獣医学科を卒業後、いったん獣医の道を離れ、まったく違う仕事をしていた時期がありまして。老人ホームで働いたこともあり、そのときはお年寄りに運動や筋トレをしてもらって、精神的にどう作用するのか……運動心理学というのですが、そちらに興味を持ってまったく違う大学で勉強をしたり。その中で、動物病院でアルバイトをしていたことがあったのですが、そこで出会った先生の人柄や獣医という仕事に対する姿勢に非常に感銘を受け、ふたたび獣医の道に戻ってきました。
開業して13年ほどになりますが、患者さんとの関係はいかがですか?
僕は決して優しい雰囲気の獣医ではないので、そういう雰囲気を求める方にはマッチしないところもあるかもしれません。その分、はっきりと何でも意見を言うところを、皆さんに認めていただいていると感じています。たとえば、ここで治療できないものに関しては、はっきりそのことをお伝えします。下手に自分の病院だけで抱え込もうとせず、大学病院にお願いすることも考えていますので、そういう点で安心して来てくださっているのかな、と。さすがに13年にもなってくると、開業当初から来てくださっているワンちゃんが亡くなったりということも増えてきましたし、自分自身や病院自体のスタンスの変化もありましたが、信頼関係を築いてこられたと思います。やはり、診た動物の病気が治ってよくなることがとてもうれしいですし、飼い主さんに感謝していただけるのがうれしい。それがこの仕事のやりがいだと思います。
どのような疾患が多いですか?
一般的に多いと思いますが、猫であれば腎臓病、犬ならば皮膚のアレルギーなどですね。また、このあたりは土地柄、予防医学に対する意識の高い飼い主さんが多いので、漢方薬の処方も行っています。主に、アレルギーや消化器症状改善の補助として用いていますが、今も漢方の勉強会に参加するなど、少しでも知識を深めようとしています。
動物に対して五感で接することが大切
こちらの病院の強みを教えてください。
循環器科に力を入れています。超音波検査のための機械も、町の病院としてはグレードの高いものを導入していますので、より精密な検査が可能です。僕たちが大学にいた頃に比べ、今はエコーの技術も進んでいます。ですので、今も週1回の休みを利用して、近くの大学に勉強に通っています。やはり、新しいことは知識として知っておきたいですし、できるようにしていきたいですからね。他の病院で漫然と治療を続けており、不安を抱えていた飼い主さんが、ここならきちんとした検査ができる、とクチコミで聞いて来てくださることも増えました。ただ、やはり大学に比べるとできることは限られてしまうので、ここで手に負えないものは大学病院をご紹介しています。
先生が診療の際に気をつけていることはありますか?
一見、簡単そうな病気でも、その裏に何かほかの病気が潜んでいるかもしれない、ということは必ず頭の片隅に置いて気をつけています。また、これは飼い主さんにもよくお話ししているのですが、においや触ったときの感触など、五感を大切にすることですね。診察に来てもらった患者さんに対しても、調べる前にまず触ります。今はインターネットでなんでも調べられてしまうため、飼い主さんから「うちの子がこんな感じだからこの病気かも」と言われることも多いのですが、触ることでわかることもあります。普段と違うな、という感覚が重要ですね。よほど嫌がる子でない限りは、毎回必ず触らせてもらっています。
最近はペットの高齢化も進んできましたが、治療にあたってはどのようなスタンスをお持ちでしょうか?
やはり高齢のペットの来院は多いですね。そこで、最先端の治療のお話もしますし、もちろん大学病院のご紹介もします。ですが、それだけを求めている飼い主さんだけではありません。なるべく切ったり貼ったりをしたくない、という方もいらっしゃいます。ですので、末期が近づいてきたら、なるべく死についてのお話はさせていただくようにしています。いわゆるターミナルケア、いかに看取るか、についてですね。もちろん、そういうお話をされたくない方には言ってください、とお願いしていますが、ターミナルケアを希望される方も多くいらっしゃいます。
たとえばターミナルケアとはどのようなお話をされるのでしょうか?
たとえば、猫は慢性腎臓病の末期では高頻度で痙攣発作が起きるので、インフォームドコンセントをしっかり行います。この場合のけいれんは、苦しくて起きているのではなく、神経が刺激されて勝手に起きているのだから、焦らず冷静に対応していいんですよ、というお話などですね。それを事前にお話しておくと、発作が起きたり、その後亡くなったときも、「事前に聞いていたから冷静な対処ができた」と感謝していただけることもよくあります。
患者のニーズに合わせて病院の方向も決まっていく
こちらはトリミングもとても人気だそうですね。
こればかりはスタッフのおかげです。僕自身ははじめ、トリミングを行うつもりはありませんでした。ですが、当院の看護師がトリマーの資格も有しており、患者さんからのニーズもあり、はじめてみたら大盛況で。病院でのトリミングのメリットは、施術の最中に何か疾患を見つけたときにすぐに対処ができること。それから、心臓病などで長時間のトリミングに耐える体力がない子でも安心してお越しいただけることでしょうか。今は予約を2ヵ月先までに限定させていただいているのですが、病院自体の盛り上がりにも繋がっているので、ありがたいことですね。
今後はこの病院をどのような病院にしていきたいですか?
人間はどうしても「生かす医療」の進歩を重点的にしてしまいますが、そちらを意識しつつも、そうではない選択肢に対しても取り組んでいきたいですね。僕がこの地域でどのように必要とされているかによって、この病院も変わっていく必要があります。僕の信念に飼い主さんがついてきてくださる、という方がかっこいいのかもしれませんが、ニーズに柔軟に対応していくのが僕のスタイルです。それは、開業するときにも尊敬する獣医の先生からも言われたのですが、その地域の飼い主さんからどのようなニーズが多いのかによって、自分の専門分野もおのずとその方面を育てられていくものだ、と。実際にそうなってきたように感じてはいますね。僕が「この治療をしたい、この勉強をしたい」ではなく「患者さんのニーズに合わせて勉強を重ねていく」と。
それでは最後に読者の方にメッセージをお願いします。
まず、動物を見るときには五感を大切にしてください。僕自身の診療方針でもありますが、飼い主さんにもそこは忘れないでいただきたいですね。それから、なんでもはっきり相談していただきたいと思います。たとえば、検査にはどうしてもお金がかかりますが、そういう相談はしづらい部分があるでしょう。また、何度も検査に連れてくるのは飼い主さんの身体的に厳しいこともあるかもしれません。ですので、そういった点もはっきり相談していただければと思います。ペットにおいても、治療のための検査ではなく、検査のための検査になってしまうことは人間同様によくあることです。当院では、検査を行うのがベストだと判断した場合はそうお伝えしますが、それが難しければ多少のリスクはあるかもしれませんが、ベターな選択も提案します。その代わり、本当に必要なときはきちんとお伝えしますので、信頼して相談していただけるとうれしいですね。