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河合 博明 院長の独自取材記事
キロロ動物病院
(八王子市/八王子駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR中央線西八王子駅から車で20分の「キロロ動物病院」は開院して19年。ペットを持つ飼い主の地域のよりどころとして長く親しまれている。河合博明院長をはじめ8人の獣医師が在籍し、常に3人が診療、多くの飼い主・ペットに対応している。河合院長がめざしているのが、相談しやすい動物病院。飼い主が求めていることを把握するためにコミュニケーションを大切にしている。今までに同院から8人の獣医師が巣立ち、近隣を中心に開業、地域の獣医療の発展にも貢献している。「飼い主さんやスタッフの言葉を受けて、折々に初心を思い出すことが大切」と話す河合院長にプライベートなことも含めて聞いた。 (取材日2017年3月10日)
双方向のコミュニケーションで患者の希望を把握
開院して19年がたちます。どんなクリニックをめざして日々の診療に臨まれていますか?
相談しやすい、地域密着の動物病院でしょうか。隣の上川町が僕の地元なんですよ。飼い主さんは八王子市内にお住まいの方が中心で、今でこそ紹介などで茨城県や山梨県などの遠方からもいらっしゃるようになりましたが、開業当初は同級生やその親御さんなど知り合いばかりでした。来院された際には、スタッフのほうから飼い主さんへ声をかけ、診療時には私たちのほうから自己紹介をして、飼い主さんが話しやすい雰囲気をつくることを心がけていますね。
コミュニケーションを大切にしているのですね。その際に心がけていることはありますか?
獣医師側からの一方通行にならないようにしたいと考えています。医療的に正しいと思うことがあっても、それを飼い主さんが求めているかはまた別なので、飼い主さんが何を希望されているかを把握することが大切なのではないでしょうか。今はインターネット上にたくさんの情報が書かれていて、その中には誤ったものもあります。飼い主さんは病気を治したいお気持ちがありますから、何らかの方法で病気が治ったという体験談を信じてしまう傾向にあるんですね。でも、実際はペットの種類や年齢、飼育環境、病気の進行具合などによって違うので、僕たちのような専門家がペットを診て、飼い主さんにわかりやすく説明することが大切です。
クリニックが2階建てで、診療室が3つもあります。体制が厚そうですね。
僕と副院長の妻をはじめ8人の獣医師が在籍し、看護士は5人います。開業当初は僕一人だったのですが、段々と対応が難しくなり、いらっしゃる飼い主さんの数に見合った人数を採用していったところ、こうした体制になりました。それに、僕はスタッフがたくさんいて賑やかなほうが好きなんです。スタッフが多いとその分、いろいろな意見を聞けますし、例えば、新人の子に獣医師としての初心を思い出させてもらえることもあります。僕は割と人には恵まれているほうなので、病院経営は最終的には人によるのではないでしょうか。2階のスペースはスタッフ向けのセミナーなどに利用しています。
スタッフにもさまざまなことを吸収してもらいたい
院内でセミナーも開いているのですね。教育にも注力されているのですか?
そうですね。スタッフが働きやすく、成長できる環境を整えたいと思っています。この仕事はけっこう過酷です。夜に手術が入るなど時間は不規則ですし、命を扱いますから心が折れそうになってしまうこともあります。実習生には決して楽だとは言えませんが、それでもこの仕事にやりがいを感じる人が来てくれるとうれしいですね。だから、各分野に精通した先生を招いてセミナーなどを開いて僕が伝えられないことも吸収してもらいたいんです。今思えば、若い時は理不尽に怒ったこともありましたが、年を取ったせいかだいぶ丸くなりました(笑)。当院を巣立ち、開業した先生も8人います。みんな割と近所で開業しているので、今でも協力し合っていますね。カラーの違う動物病院がたくさんあったほうが、飼い主さんも選択肢が増えていいのではないかと思っています。
近年、飼い主やペットで変化したと思われることはありますか?
飼い主さんもペットも高齢化していることと、飼い主さんの飼う意識が高くなっていることでしょうか。まず室内飼いが多いですよね。それに伴っていろんな食事をあげがちだったり、階段などで滑って関節を悪くしてしまったりすることなどが増えているので、食事や飼育環境についてアドバイスすることも多いです。食事についてはその場だけの楽しみでなく、10年先の健康を考え、ドッグフードを基本にしていただいたり、飼育環境的には滑りにくい素材をご紹介したりしています。それと、定期的に検診を受けていただくことは大切です。当院の飼い主さんは結構まめに来院される方が多いので、うれしいですね。まめに来院してくださることで、ペットの小さな変化にも、早期に気付きやすいといったメリットがあります。早期発見で治る病気もありますから、飼い主さんにはぜひ定期的に来院してほしいですね。
先生ご自身のことをお聞きします。どんな少年時代を過ごしましたか?
近所でもいたずら好きの子どもとして知られていました。獣医師になった後に、「あらまあ、あなたが先生になったなんて」と言われるくらいです(笑)。スポーツでは小学校に入る頃から野球をしていて、当時はプロ野球選手になる気満々でした。テレビ中継されるスポーツも野球くらいしかなかったですし。今でも観戦するのは好きですよ。神宮の外野席に結構いますね。スタッフと行ったり、子どもと行ったり。子どもは女の子3人、男の子1人いるんですが、中でも一番上の中学2年の女の子が観戦が好きなんですよ。知らない人とタッチしたりしてわいわいするのが気に入ったみたいで。昔は仕事ばかりですが、最近は父親しているなあと自分でも思いますね。
キャリアを積んだ今、地域貢献も視野に
獣医師をめざされたのは、やはり動物が好きだったから?
そうですね。小さな頃から虫好き、動物好きで、クワガタや犬、猫、鳥などを飼っていました。それに、本家が当時、牧場を経営していて乳牛の世話の真似事をすることもありましたね。ハクビシンや狸を見ることもしばしばで、この辺りは今でも狸やイノシシが出るんですよ。動物が好きだったので自然に獣医師をめざしたのですが、親に「犬を飼ってるだけじゃ生活できないよ」と言われたことも影響しているかもしれません。それで北海道の酪農学園大学に進みました。今も犬を6匹、猫を4匹飼っているのですが、これでもだいぶ減ったほうです。捨てられた子を放っておけなくて、そのまま飼っていることが多いですね。
獣医師としてのやりがいはどんな時に感じますか?
飼い主さんからお礼を言われる時ですが、特にペットが亡くなった後に今までのお礼が書かれた手紙をいただくとぐっときますね。ペットは僕にとって子どもと同じような存在。でも獣医師をしていると客観的に診なければならなくて、ともすると第三者に寄りすぎてしまうこともある。でもペットの死に触れ、その時の飼い主さんを見ていると、改めて「ああ、ペットってやっぱり大切な存在だよね。獣医師としていいケアができたのかな」と振り返ることができます。「どうして獣医師になりたいの?」と実習生に聞く時にも「あれ、俺は何で獣医師になりたかったのかな」と回想できます。獣医師としてキャリアは積んできましたが、折々にそうやって気付きを得ることは大切ですよね。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
地元の八王子が大好きなので、今後も地域の飼い主さんに貢献できる獣医療をご提供できたら、と思います。それと、若い頃は正直に言って自分が良ければいいと思っていましたが、この年になると何か社会に貢献できることができないかなとも考えています。震災時に被災地に出張して動物たちの診療する先生もいましたし、最近いろいろな立派な先生と話す中で、自分も何らかの活動をしていきたいなと。これから具体化を図っていきたいですね。