西武新宿線花小金井駅より徒歩5分にある「花小金井動物病院」の林一彦院長はイギリスへの留学も果たした動物歯科のエキスパート。受付では、同じく獣医である妻と飼い犬のダックスフンド・ナナちゃんが出迎えてくれる。「飼い主に左右されてしまうペットには、僕は優しいですよ」と語る林院長だが、話好きで、親身になって指導を行い、その後、林院長が教授を務めるヤマザキ学園大学へ聴講生として訪れる飼い主もいるほど人気の獣医師だ。そんな林院長に、世界でも珍しい動物歯科クリニックを開業した経緯、飼い犬へ今すぐ実践できるケア、また獣医としての今後の展望に至るまでたっぷりと語ってもらった。
(取材日2016年7月6日)
―どのような経緯で、動物歯科をご専門とされたのでしょうか?
小さい頃は人間より動物が好きだったので獣医をめざし、獣医学部卒業後、晴れて獣医師免許を取得することができたんですが、指導教授に、その頃大学に歯学部が新設されたということで、そこへの就職を勧められました。僕は当時、妻と結婚をする予定だったので、2,3年したら辞めようと思っていたのですが、途中、高い競争率の中、イギリスの大学へ留学する機会を得たこともあり、余計に辞めづらくなってしまいました(笑)。ですが、そこでの経験がその後の僕に大きな影響を与えました。
―イギリス留学で影響を受けたことはなんですか?
元々は、歯学部で歯の研究をするために渡英しました。イギリスへ渡ってすぐに、軍用犬の治療を目にする機会があったんですが、医学部、歯学部、獣医学部が密に連携して治療にあたっているのを目の前にし、それが日本では考えられないことだったので、とても大きなカルチャーショックを受けました。帰国したら、これまでの歯科の研究を生かしながら、将来は自分の出身である獣医として社会に貢献していきたいと思うようになりました。その後、大学に新設された動物歯科センターに招かれ、臨床を行いながら、今に繋がる研究に従事し、3年前に開院しました。猫には歯周病が少ないので、当院ではやはり犬を診ることが多いですね。
―なぜ、動物歯科専門のクリニックを開院しようと思われたのでしょうか?
町の動物病院では1人の獣医が全診療科を診るのが当たり前となっていますが、人間の病院のように、専門性を高め、診療科を分けるべきであり、人間の医療体制と大きな差があるのは問題だと思います。また、歯石を除去するのに動物病院へ行くと全身麻酔を掛けられてしまうという理由から、ペットショップにお願いする飼い主さんも多いのですが、そこでのトラブルも少なくありません。それでも麻酔を避けるために動物病院ではなく、そこへ頼まざるをえない人が後を絶たない現状に我慢ならず、立ち上げることにしました。動物の歯科専門クリニックは世界で見ても大変珍しいことであり、開業は勇気のいることでしたが、僕はもともと、口腔病理学の専門であり、歯について基礎から研究してきましたので、知識と技術に自信がありました。
ドクターズ・ファイルの情報をスマートフォン・携帯からチェック!スマートフォン版では、GPS位置情報を利用した最寄りの病院探しができます。