日野市にある「あおい動物病院」の院長 野中哲氏と、副院長の喜美子氏はとても仲のいい夫婦である。同院では、初診は可能な限り、院長と副院長の2人体制で行うという。そのメリットは、飼い主を含めて治療方針を相談する雑談スタイルが、1対1で獣医師と対峙するよりも飼い主が緊張感を持たずに、診療にのぞめるのではないかということにある。また、1人では偏りがちな診療方針に新たな視点が加わることで、多角的な治療が可能になる。飼い主は、提示される診療方針が導き出されるまでの過程を目の前で確認できるので、安心して治療に臨むことができる。現在は診療動物の6〜7割が犬、2〜3割が猫。ウサギやハムスターなどの小動物は1割ほどだが、飼育環境の改善なども含めた専門的な治療を実践する。また、大学で魚病学を専攻してきた2人は、魚の病気にも対応する。これまでの経緯や同院での診療について、お二人に詳しく伺った。
(取材日2014年12月3日)
―診療はいつも、お二人でされているのですね。
【野中院長】はい。初診は、可能な限り私と副院長の2人で臨み、時間もたっぷりとかけています。2人診療のメリットは、多角的な視点で診断が行える点です。1人だと治療方針なども凝り固まってしまいがちですが、横から新たな考えが入ってくることで、より幅広い治療が可能になります。
【喜美子副院長】当院の診療は、2人の獣医師が、飼い主さんの目の前で治療のメリットデメリットを相談するスタイルなので、「診察というよりも、雑談の中に居るような感じ。会話を通して自然に色々な話ができた」と言っていただいています。飼育上の過失などを飼い主さんが獣医師に伝えるのは、とても勇気の要ることです。些細なことだからと、あえて伝えない場合もあるでしょう。ですが、そうした中にこそ病気の原因が隠れていることが少なくありません。医療者と飼い主さんの間にある垣根を、どれだけ無くすことができるか? それが、クオリティーの高い問診に繋がるのだと思います。
―エキゾチック動物(ウサギ・ハムスター・モルモットなどの小動物の総称)の診療にも、定評があるのですね。
【喜美子副院長】デリケートなエキゾチックの治療は、犬・猫の延長線上では難しいですよね。やはり、それぞれの動物の習性や特性をしっかりと把握し、飼育環境の指導からできなければ意味がありません。当院では飼い主さんに、その動物の祖先の特性からお伝えすることもあります。
【野中院長】病院は彼らにとって異空間ですから、診察で普段の様子をうかがい知るのは難しいことです。そのため、小動物の診察では、獣医師が物陰からこっそりと観察することもあるんです(笑)。また、小鳥やハムスターなどは、呼吸状態が悪いときに保定してしまうと、胸部が圧迫されて呼吸が止まってしまうことがあります。ですから、エキゾチックの治療では、犬・猫以上に問診と視診が重要になるのです。普段の様子を飼い主から徹底的に聞きだすスキルが必要になります。薬による治療だけでなく、飼育環境の改善や食事療法も大切な治療の一環です。
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