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楠田みさき 院長の独自取材記事
あい動物病院
(大田区/洗足池駅)
最終更新日: 2023/01/22
「愛」をもらい、「愛」を届けたいという気持ちから名づけられた「あい動物病院」。その名の通り、動物たちを心から愛する楠田みさき院長が診察を行っている。飼い主さんとの信頼関係を大切にし、通院しているペットたちに献身的な治療をしてくれると評判。シャンプーや歯磨きなどの日頃のケアをはじめ、しつけなどの相談にも気軽に乗ってくれる。インタビュー中、楠田みさき院長は「うちは飼い主さんが大変なんです」と何度も口癖のように言っていた。その言葉の裏には、予防のためのケア、ペットの負担にならない治療を飼い主さんと一緒に実現したいという優しい思いがある。そんな楠田みさき院長に治療方針などを伺った。(取材日2011年5月9日)
シャンプーや歯磨きなど日頃の予防ケアの大切さを伝える
獣医師を目指されたきっかけは、やはり動物好きだったからですか?
小さな頃から犬や猫はもちろん、いろいろな動物が好きでよく飼っていました。中学生の時、家族旅行で行った宮城県松島では、自分へのお土産にカメを買ったくらい(笑)。カメって、市販のドライフードより、生きたミミズが好きなんですよ。なので、カメのためにミミズも育てていて、そちらの世話のほうが大変だったのをよく覚えています。思えば、その頃から動物にかかわる仕事をしたかったのかもしれませんね。でも、いったんはフェリス女子大学の文学部を出て、専業主婦をしていました。そんな私に転機が訪れたのは母が亡くなった時です。その時の主治医がとても信頼できる良い方だったんです。良い医師との出会いの大切さを実感し、ましてやしゃべれない動物だったらなおさらだと思って、改めて勉強し直し、日大の獣医学部に入学しました。
治療方針を教えてください。
当院では予防指導を重視しています。そのために飼い主さんにはシャンプーや歯磨きなどの日頃のケアの大切さをお伝えしています。例えば、軽度な膿皮症(のうひしょう)でしたら、シャンプーだけで治るんですから、抗生剤などのお薬は必要ありません。ただし、コツがあるので、シャンプーの裏技をまとめたものを待合室に置き、飼い主さんが自由に読めるようにしています。また歯石も、取るのではなく、ならないようにするのが一番です。日頃から、水で濡らしたガーゼで口の中を拭いて食べかすを取るようにお願いしています。うちは診療代が比較的安上がりに済みますが、その代わり飼い主さんはお世話が大変なんです(笑)。
飼い主さんと接する時に心掛けていることは?
飼い主さんから質問していただきやすい雰囲気を作っています。本当はシャイで無口なんですが、がんばってしゃべっています(笑)。そうすると、「実は・・・」と悩みを打ち明けてくれるケースもあって、そうしたお話を聞いて、できるだけ飼い主さんの望む治療に添ってあげたいと思います。でも、ワンちゃんやネコちゃんの治療ではクオリティオブライフも大切。飼い主さんの希望とその子にとってベストな治療の折り合いをつけることも私の役目だと思うんです。例えば、癲癇(てんかん)の子に対して飼い主さんが狂犬病の予防接種を希望していてもそれは止めます。飼い主さんと信頼関係ができていて、ちゃんと説明すれば、大方の飼い主さんは納得してくれます。時々、「避妊手術はいくらですか」と電話で聞かれることがあります。しかし、初めての方には手術はしません。まずは来院していただき私を知っていただいた上で、手術するかどうかを決めてもらいたいんです。その子の命にかかわることですからね。治療する上で、まずは飼い主さんと信頼関係を作るのが先だと思っています。
犬の一番の主治医である飼い主をフルサポート
治療する上で大切にしていることは?
私が常々、「犬の一番の主治医は飼い主さん」だと思っているんです。一番そばで、その子のことを見ているのは飼い主さんですからね。ですから、飼い主さんの「何かいつもと違う」を大切にしています。動物って、家族以外では弱みを見せまいとすることがあるんですよ。例えば、飼い主さんは「足を痛がっている」とおっしゃって連れてきても、ここでは普通に歩くんです。ですから、普段の様子とどこが違うのかじっくり聞くようにしています。また、うちはできるだけご自宅で面倒を見てもらうようにしているんです。治る可能性がある子でも、入院して環境が変わると緊張から、悪化してしまうこともあるんですよ。特にネコちゃんは入院すると食べなくなります。ですから、うちに通っている飼い主さんは本当に大変です。その代わり、私もしっかりそれをサポートしています。初診の子にはしていませんが、通っている子に対しては夜間でも診ています。私は病院の上の階に住んでいるので、夜勤は365日受けています。でも、飼い主さんはちゃんとした方ばかりで、本当に困った時にだけ連絡をくれますから、苦ではありません。それに、通っている子は自分の子のような感じなんです。夜間診療もやってあげているというよりも、好きでやっているんですね。
こちらにはどんな症状のペットが多いんですか?
ホームドクターですから幅広く診ています。検診・予防のためや、ちょっと調子が悪くなっただけのケースも多いですしね。ちょっと調子が悪いっていう時に来ていただいて、原因を一緒に見つけましょうというスタイルです。自分で治療の難しい重度のケースでは、歯科や眼科などの専門医を紹介します。私、飼い主さんだけではなく、先輩や恩師にも恵まれているんですよ。日大獣医学部を卒業後、研究生として行った東京大学の先生方にはとっても良くしてもらっています。今でも教授に質問のメールをすると、すぐに電話をくれたりするんですよ。その先生方とは信頼関係ができているので、うちの患者さんたちを安心して預けられますね。
治療したペットで印象に残っている子はいますか?
勤務医時代に出会ったパピヨンのことです。初診の際、「うちの子、元気ないんです」と飼い主さんはおっしゃるんですね。でも、2〜3歳と若いし、触っても痛がらないし、一見元気そうなんです。ところが、血液検査をしたら、生きているのが不思議なくらい悪い値で。即入院となりましたが、ほかの先生からは「もう助からないかも」って言われていました。でも何とかしてあげたい一心から、病院の鍵を預かって夜も治療していました。その甲斐あって元気を取り戻してきたんですが、そうしたら、跳ねるは噛むは唸るはで。その姿を見て、飼い主さんが「これがうちの子です」って喜ばれたんです。あの時、諦めなくて良かったと思いましたね。その子以外でも、一つひとつの出会いから、いろいろ教えてもらっているといつも思います。
ペットが元気になって帰っていく姿を見るのが何よりうれしい
やりがいを感じるのはどんな時ですか?
やりがいはいつも感じています。大変だっていう感じはないですね。この前も、将来獣医になりたいという中学生の女の子が社会科のレポートのために見学に来ていたんです。その子に「何が大変ですか?」って聞かれた時も、「何も大変なことがないのよ」って答えました。噛むような子でも、「フン!帰るわよ」と言っているようにお尻をピンとあげて、元気に帰っていく姿を見ると心からうれしいですね。不幸にして亡くなった子でも、飼い主さんに「ここで良かった」って言ってもらえると号泣。飼い主さんより先に泣いちゃいます。一緒に治療をしてあげられて良かったと思いますね。
プライベートではどう過ごされているんですか?
実はプライベートでも動物にべったりなんです。今は看板犬でもあるトイプードルのチェルシーとドーベルマンのキャンディ、ネコで17歳のリンダ、そして唯一の男の子ネコで3歳のクッキーと生活しています。本当はドーベルマンのキャンディを看板犬にしようと思ったんですが、落ち着きがなくて無理で(笑)。今は血液ドナーとして何匹ものワンちゃんを助けています。このキャンディは運動量が必要ですから、休日はもちろん、診察前にドックランに行ってたっぷりと遊ばせています。トイプードルのチェルシーは日本動物病院福祉協会のセラピー犬で、もうすぐデビューさせようと思っているんです。先代の子と同じようにCAPP(Companion Animal Partnership Program=人と動物のふれあい活動)セラピー犬認定を取れるように目下トレーニング中です。
飼い主さんは日頃気をつけてもらいたいことはありますか。
その子の普段の生活をよく見ていてあげてください。「ちょっとおかしいな」と思うような行動が病気の原因になっていることって、けっこうあるんです。例えば、壁をよく舐める子がいたんです。小さい時からそうだったんですが、拾い食いしているわけではないからと飼い主さんは放っておいたんですね。だけど、10歳くらいになって胃腸障害が初めて出てきたんです。このように、小さい時は大丈夫でも、年を取って出ることがあるんです。ですから、先のことを見据えて、日頃の生活ぶりをよく見ていてください。また、危険性をご存じなく、紙や土を食べても大丈夫だと思っている飼い主さんもいるんです。これも腸閉塞などのトラブルの原因になります。ワンちゃんネコちゃんの行動で疑問に思うことがあったら、些細なことでもかまわないので、獣医さんに相談してみてください。