牧野 仁 院長の独自取材記事
本牧通り動物病院
(横浜市中区/山手駅)
最終更新日: 2025/01/27

本牧通りに面した「本牧通り動物病院」。牧野仁院長は一般疾患の他に、認知機能低下やけいれん発作などの脳神経系の疾患や歯科領域の診療経験も豊富な獣医師だ。同院を開院した竹田浩一先生とは大学での同期だったため、2018年から院長を務める。動物目線を大切にしつつ飼い主に寄り添い丁寧に接するとともに、スタッフの働きやすさにも配慮。スタッフとはチームワークを越えてファミリーとして、動物と飼い主をサポートしていきたいと語る優しい人柄も魅力だ。2024年11月にリニューアルして小動物の診察室は独立させ、犬猫それぞれの優先待合スペースを設けるなど、動物と飼い主が安心して受診できるような環境づくりにも努める。そんな牧野院長に同院の診療の特徴や動物医療への思いなどを聞いた。(取材日2024年11月27日)
本牧で長く地域に貢献し続ける動物病院
こちらの成り立ちを教えてください。

当院は1996年に竹田浩一先生が開院した動物病院です。私は大学時代の同級生にあたります。竹田先生が亡くなった後、奥さんの竹田智子代表に声をかけられ、2018年に3代目院長となりました。その後隣のテナントが空いたので、拡充する形で2024年11月にリニューアルしました。スタッフルームや小動物専用の診療室、猫優先の待合スペースを新たに設け、飼い主さんも動物も安心して来てもらえるような環境を整えました。
診療面ではどのような特徴がありますか。
専門性が高い獣医師が多数在籍し、多様な診療を提供しています。当院は開業してからの年数が長く、高齢動物が多いことから、私はよく腫瘍の症例を診ていますね。また小動物を専門とする先生もいて、うさぎやフクロモモンガ、ハムスターなどを診ています。中でもうさぎの診療経験が豊富なのは特徴でしょう。行動学を専門とする先生は、動物のしつけや問題行動の相談に乗っています。動物行動学に基づくアプローチで飼い主さんや他の犬との関係性、噛んだり吠えたりといった問題行動の改善を図れます。一般診療においては必要な設備を一通りそろえており、よく活用するのは動物への侵襲が少ない超音波検査ですね。当院で対応できない場合はきちんと診断をつけて専門施設に紹介しています。また元気で長生きするためには歯の健康も重要なので、歯科治療にも注力しています。歯科専用エックス線検査機器で精密に検査・診断した上での治療に対応しています。
パピークラスや子猫教室も開催しているそうですね。

そうですね。犬や猫も幼少期が大切です。小さいうちから来ていただくことで、動物病院や医療者に慣れやすいですし、飼い主さんに動物との上手な付き合い方や、病気の予防を考慮した飼い方のアドバイスもできます。犬は集団で過ごすほうが社会性が身につくので以前はパピーパーティーを開催していましたが、コロナ禍の影響から個別に行うようになりました。子猫教室を行っているのも当院の特徴です。個別対応で遊びながらトイレトレーニングやしつけ指導、歯磨きや爪切りの練習をします。動物病院に慣れ、楽しい場所だと感じてもらえる良い機会になっています。
歯科に注力。神経疾患の診療経験も豊富
院長に就任されるまでの経緯を教えてください。

獣医師を志した理由は、動物と触れ合うのが好きだったことは当然として、災害時などに人と動物を助けることができる人間になりたいと思ったからです。大学卒業後、東京大学獣医外科学研究室で2年間の研修を経て、埼玉県の動物病院に勤務しました。脊椎や神経の病気を得意とする先生がいて、ちょうどミニチュアダックスフンドのブームの頃だったので、椎間板ヘルニアの治療などについて研鑽を積めましたね。高齢になると発作などの脳神経症状を起こしやすくなるので、脳神経分野の診療に多く携われたことは役に立っています。また歯科を専門とする先生も在籍されていたので詳しく学ぶことができました。
そのためこちらでは歯科に注力しているのですね。
ええ。犬の場合は生後5~7ヵ月ぐらいまでに永久歯に生え替わります。この時期に乳歯が遺残すると、生えてくる永久歯の邪魔となり歯並びや噛み合わせが悪くなることにより、しっかりと噛めなくなったり、上顎に歯が当たったりするといった問題につながってしまいます。適切な咬合をめざすには生え替わりの時期からの受診がとても重要です。早めに受診していただければ、乳歯を抜いてスペースをつくるための外科矯正なども行えますからね。子犬をお迎えしたら健康診断も兼ねて、早めに受診していただけたらと思います。また猫の場合は慢性口内炎や吸収病巣といった歯が顎の骨に吸収される疾患もあるので、必ず歯科用エックス線で歯の根っこの確認を行う、丁寧な診療を心がけています。
口腔内ケアに関する啓発にも尽力されているとお伺いしました。

診療の際、おうちでのケアの重要性やコツもお伝えしています。例えばうまく歯磨きをするには小さい頃から慣れさせることと、歯磨きの途中で嫌がる様子があればすぐにやめることが大切だとご説明。無理強いしないと動物に伝われば、少しずつ信頼関係が築いていけるでしょう。あとはおやつをあげる際に口に触れて慣れさせることで、動物に「口を触られると良いことが起こる」と思ってもらえて、歯磨きを嫌がらないようになりやすいといったこともお話ししています。
動物や飼い主も加わるファミリーのような動物病院に
診療方針について教えてください。

動物が何を求め、何をすれば痛みや病気から解放してあげられるのかを第一に考えています。治療は標準的なものから新しい方法を選択することもあります。動物は話せませんからしっかりと向き合い観察し、適切な状態把握につなげることが重要です。あと飼い主さんに「相談してよかった」と思ってもらえるような対応を心がけることも重視。時には選択肢が限られ、つらい決断をせざるを得ないこともありますが、その中でも飼い主さんには、諦めたのではなく「やりきった」と思ってもらえるよう、少しでも笑顔になって帰ってもらえるようにしたいです。動物病院としては、スタッフ皆で連携するチーム医療はもちろん、家族のような温かさを大切にしたいですね。その中に飼い主さんと動物も加わってほしいと思っています。
今後の展望について伺います。
当院はこの地域で30年近く診療を続けてきた動物病院です。数ある動物病院の中から当院を選び、受診してくださっている飼い主さんの期待に応え、これからも変わらずに地域に根づき、安心を届ける存在でありたいと思っています。何代にもわたって通ってくださる方も多いですから、これからも地域の皆さんとのつながりを大切にしていきたいですね。そしてスタッフ一人ひとりの個性を大切にして、地域に愛される動物病院でありたいと思っています。診療面では動物と飼い主さん、それぞれに対する終末期のケアにも力を入れています。「ここに来れば安心だ」と思っていただける信頼感を、私の代だけではなく今後もずっと続くためにはどうすれば良いかを常に考えています。
その一環として、スタッフの働き方にも配慮されているそうですね。

私が獣医師になりたての頃は、あまり働き方には配慮されず、スタッフにとって恵まれた労働環境ではないことも多かったようです。しかし私が勤務していた動物病院はそうではなく、長く勤めることができました。良い医療を提供するために健全な労働環境は欠かせませんからね。私も今は経営側になったので、スタッフの働く環境や体制も重視していきたいと考えています。そして当然ながらチームワークやコミュニケーションを大切にしています。獣医師も愛玩動物看護師も受付スタッフも、フラットにお互いを尊重し合い、プロフェッショナルとしてそれぞれの持ち場で活躍できるようにしていきたいです。
読者へメッセージをお願いします。
動物のことを第一に考えて丁寧に診ることをモットーとしています。そうした診療を選んでくださる飼い主さんと動物に対して、スタッフ全員で誠心誠意応えていきたいです。腫瘍症例が多く、歯科や神経疾患の診療にも力を入れていますし、リニューアルして院内の利便性が向上しましたので、気軽に足を運んでいただければうれしいです。動物は家族に癒やしや絆を与えてくれる存在だと思いますので、動物と暮らす方が増えたらいいなと思います。飼い始めは不安やわからないことが多いと思いますから、ぜひ相談に来てください。幼少期から来ていただければ楽しく暮らせるアドバイスができますし、病気になった時もスムーズに診療をしやすいですからね。お待ちしています。