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平野 太一 院長の独自取材記事
ひらの動物病院
(西東京市/東伏見駅)
最終更新日: 2025/02/18

東伏見駅近くの新青梅街道沿いにある「ひらの動物病院」には、今日も平野太一院長が動物たちに話しかける楽しげな声が響いている。平野院長の姿を認めた動物たちも、ちぎれんばかりに尾を振って幸せそうだ。「動物と話し、遊ぶこと」を最大のモットーとする平野院長。「僕が動物と遊ぶ最大の理由は、動物が好きだから。でも、動物と信頼関係ができると、顔色や自然な日常動作を把握できて診療に役立つんですよ。自分にとって当たり前だと思うことを、自然にやっているだけなんですけどね」と破顔一笑する様子からは、動物への深い愛情が伝わってくる。好きだから愛情を示す。愛情を示すから信頼される。家族同然の動物を託す上で、これほど信頼できる存在はそういないのではないだろうか。専門家と連携する診療の内容や、心がけを詳しく聞いた。(取材日2024年12月23日)
病気やケガはもちろん、フードの相談にも快く対応
温かみがあって、ほっとする雰囲気の院内ですね。

動物にとって居心地の良い場所であってほしくて、施工会社に「間取りや内装を動物病院らしくない雰囲気にしてほしい」とお願いしたんです。待合室から診察室まで、長い廊下がある造りは珍しいですよね。入ってすぐ診察室があると緊張して入るのを嫌がる子も、この間取りのせいか待合室までは難なく入ってくれるんです。待合室の棚に置いた季節の飾りは、私が小さな雑貨屋などに足を運んで少しずつ集めたもの。診察室のデスクやパソコンの上にずらっと並ぶロボットアニメの食品玩具には、私のもともとのコレクションと、患者さんが持ってきてくれたものが混じっています。僕自身も病院は苦手だから、受診する動物たちやご家族が少しでも楽しい気持ちになってくれるように工夫したいなと思っています。
開業から10年以上がたちますが、開業時と比べて変化を感じることはありますか。
長く通ってくれている動物たちが飼い主さんとともに年を取り、病気を治すだけでなく生活面にも配慮が必要になってきました。例えば大型犬の場合、介護をするにもそれなりの力が必要で、年配の飼い主さんには負担が重いことも。ただ治すだけでなく、日常生活をどんなふうに支えていけばいいのかも一緒に考えるようにしています。また、高齢化の一方で新しい住宅も建ち、若い方の流入も増えてきました。若い人は情報感度が高くて知識が豊富で驚かされますね。反面、エビデンスがあいまいな検査をし、結果を見て不安になって受診するケースも多いので、必要な検査を必要なときにすることが大事だとお話ししています。
最近、気になるご相談はありますか。

フードのご相談が増えてきましたね。体調や体質に合わせて選択できるのは良いことですが、特定の栄養素を重視しすぎたり、健康な子には必要のないフードまで与えたりして、栄養が偏ってしまうことも。種類が多すぎてどれを選んでいいかわからない、という悩みもお聞きします。今のフードはバラエティーに富んでいますから、いろいろと試したくなりますよね。ただ、動物が健康に過ごすためのフードはもっとシンプルで良いんです。愛犬、愛猫を思えばこその行動だと思いますが、動物を愛するあまりかえって体に負担をかけてしまうことがないように、フードのお悩みなどもぜひ気軽にご相談いただきたいです。
各専門家と連携し、個別に最適な治療を追求
初診時には、どんなことを心がけていますか。

とにかく「動物ファースト」ですね。当院は犬と猫の総合診療をする一般動物病院で、対応する病気やケガの種類は多岐にわたります。なので、初診時には思い込みを捨て、体調、食事、おやつ、散歩、トイレ、ご家族の接し方など、あらゆる日常の様子をお聞きして診断の一助としなければなりません。「こんなに詳しく聞かれたことはありません」と驚かれることもありますが、正確な診断をするためにはとても重要なことなんですよ。あとは、触診、視診、聴診でしっかり動物の声を聴くことですね。なでたり遊んだりしながらコミュニケーションを取り、普段の動作を確認したり、顔色を見たりします。幸い、当院はスタッフも長く働いてくれている人ばかりで気心が知れており、みんな私と同じように動物ファーストで接してくれるので、任せるところは任せることができています。
専門家との連携も重視しているそうですね。
学生時代の先輩や同期には、整形外科、循環器科、腫瘍科、血液・内分泌科などの専門家がたくさんいます。検査で原因を突き止め、より専門的な知識と技術が必要だと判断すれば速やかにご紹介したり、協力を仰いで一緒に治療にあたったりしています。直ちに命に関わることは少ない整形外科の場合、僕と整形外科専門の獣医師の間で治療のプランニングをし、当院でオペをして入院、という流れが多いですね。その他の専門的な疾患で、診断後の薬物療法で改善しない場合は専門の獣医師に引き継ぐことを検討します。最初に検査をしっかりすることで、原因にたどり着くまでの時間を短縮できますから、費用面などを含めて飼い主さんとよく相談しながらアプローチの仕方を決めていくことが大切だと考えています。
鍼灸も取り入れていると聞きました。

大学時代からの長い付き合いになる獣医師の中野朝子先生が、週に数回鍼灸やマッサージをしてくれています。当院で受診中の動物のみになりますが、痛みや慢性疾患があり、効果が期待できると判断したケースでは受診をお勧めしています。足や腰の痛み、筋肉の張り、おなかの動きの悪さなどには改善がかなり期待できますよ。場合によっては日常的に飲む薬を減らせることも見込めます。西洋医学と東洋医学を上手に組み合わせ、その子にとって最も良い治療を選択していきたいです。
動物の様子がおかしいと感じたら、迷わず受診を
最近、力を入れていることがあれば教えてください。

愛玩動物看護師が国家資格になり、スタッフが資格取得に向けて勉強している姿を見かけるようになりました。当院のスタッフは非常に向上心があって、意欲的なんですよ。その様子を見ているうちに「自分も何か新しいことを学びたい」と思うようになり、一般社団法人日本小動物認定獣医師協会が認定している日本小動物認定獣医師の資格を取るために勉強を始めました。診療を終えた夜の時間などを使って学んでいますが、講師の先生方がとても優秀な方ばかりで、面白いんです。基礎的な講義も、「わかっていたつもりの知識」をしっかり補強してくれる感じがあって、一次診療の精度を上げるのにとても役立つと感じています。
診療に勉強にとフル回転されていますが、プライベートはどうお過ごしですか。
実は、地元の愛知県に親が経営している動物病院があり、一人で対応する母を助けに週に1回は愛知に帰っているんです。母も高齢でいつまで続けられるかわかりませんが、かかりつけ医として頼ってくださる皆さんを見捨てるわけにはいきませんから、できる限りのことはしたいですね。そんなわけで、なかなかゆっくり休む時間はありません。趣味の料理を家族にふるまえないことが一番つらいです(笑)。それでも、幼稚園時代から「自分も獣医師になる」と言い続けていた娘が高校生になり、今なお獣医師をめざして真剣に勉強しているのを見ると本当にうれしくて。僕も頑張ろうという気持ちになりますし、娘に誇れる獣医師でいたいと思いますね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

当院の目標は「入院させないこと」です。動物は人間の4倍のスピードで生きているということを忘れずに、不調を見落とさないようにしてほしいと思います。例えば動物の下痢が4日間続いたら、人間でいえば2週間以上下痢に悩んでいる状態なんですよ。問題がなければそれでいいわけですから、おかしいなと思ったらすぐにご相談ください。また、不調があったら、できればすぐに検査をしましょう。検査で病気を早期発見できれば治療期間の短縮につながり、動物が苦しむ期間も、飼い主さんの経済的負担も大きく違います。動物たちが入院することなく、居心地の良い家で長く健康に過ごせるよう、病気が小さいうちに治療することをめざしていきましょう。