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菅又 恒子 院長の独自取材記事
エルザ小鳥の病院
(西東京市/田無駅)
最終更新日: 2024/03/07
西東京市南町、府中道沿いにある「エルザ小鳥の病院」。ここは、隣にあった動物病院で長きにわたり地域のペットたちを見守ってきた菅又恒子院長が、今後は子どもの頃から大好きだった小鳥に特化して診療していきたいと2023年に新たに開業した小鳥専門病院だ。菅又院長は中学生から大学生になるまでの間、小鳥の飼育に夢中になり、獣医師になった後も小鳥の販売店で働いた経験もあるそう。小鳥の種類によってどんな病気になりやすいかといったことも40年以上にも及ぶ臨床経験から自然と身についたという。「小鳥は小さい頭だけれど、とても賢く感情豊かなんですよ」と優しい笑顔で話す菅又院長。その言葉一つ一つから小鳥たちへの深い慈愛が感じられる。小鳥の専門的な診療について話を聞いた。(取材日2023年2月24日/更新日2023年5月17日)
小鳥を専門的に診察する病院
新たに小鳥に特化した動物病院を開業なさったと聞きました。
はい。1985年からすぐ隣にあった「エルザ動物小鳥の病院」で小鳥や犬、猫などの診療をしてきましたが、私も年齢を重ねてもう少し自分の時間を持ちたいと考えるようになりました。それで、以前の動物病院は事業継承する形で他の先生にお任せして、私は今までも力を入れていた小鳥の診療を続けていきたいと思い、2023年1月から「エルザ小鳥の病院」を開業しています。以前の病院は「エルザどうぶつ福祉病院」となっていて、同じエルザがついていますが、経営母体は別々です。
その小鳥への愛着はどのように生まれたのでしょうか。
子どもの頃から動物が好きで何か飼いたいと思っていたのですが、犬や猫は親の許可が下りず小鳥ならいいと。それでセキセイインコやジュウシマツなどを飼い始めたのです。中学生から大学生になるまでの間は、繁殖に夢中になっていました。そんな中、ジュウシマツの具合が悪くなったことがあったのですが、1960年代当時は診てもらえる病院がほとんどなかったのです。なんとか治してあげたくて鳥の飼い方の本などを片っ端から読み漁りましたが、結局2ヵ月ほどの闘病の後、亡くなってしまいました。今、思えば、おなかが膨れていたので慢性の卵管炎だったのでしょう。その後、カナリアも具合が悪くなったのですが、どこの病院でも診てもらえなかったのです。それで自分で何とかするしかないと。大学を出た後は、日本で早くから小鳥の専門病院を開業なさっていた故・高橋達志郎先生の所で3年間勤め、小鳥の病気について幅広く学びました。
どんな小鳥を診てもらえるのですか。また、主訴はどんなことが多いのでしょうか。
セキセイインコ、オカメインコ、コザクラインコ、ウロコインコ、ボタンインコ、ブンチョウ、マメルリハなどの小鳥たちです。疾患は、産科に関するものが多く、例えば卵が詰まることで起きるトラブルが目立ちます。ほかにもさまざまな相談で来られます。この種類の鳥はこんな病気になりやすいといった疾患の傾向も40年以上の小鳥の臨床経験の積み重ねによって把握ができるようになりました。飼い主さんはこの地域だけでなく、多摩地域や埼玉県、千葉県などかなり遠方から来られる方もいます。インターネットで情報を見て来られるのでしょう。小鳥を診る動物病院は以前と比べると増えてはいますが、それでもまだ犬や猫と比べると少ないのではないでしょうか。
飼い主の不安や疑問を払拭して安心して帰れるように
診療の時はどのようなことを大切になさっていますか。
飼い主さんが一番心配していること、一番不安に思っていることを心置きなくお話ししていただくようにしています。途中でなるべく言葉を遮らないようにして、いろいろな疑問や心配ごとをすべてお話ししてもらっています。最後は心のもやもやが消え去った状態で帰っていただければと思っています。飼い主さんによってその気持ちの表現はさまざまです。本当はすごく心配しているのに、にこやかに話す方もおられます。飼い主さんが本当はどんなことを考えているのか、どんな要望をお持ちなのか、心の中をしっかり見極めるよう努めています。私自身もいろいろな小鳥を飼っていた経験がありますから、飼い主さんがこんな状態で、と話すと、だいたいどのようなことかわかります。実は、私は獣医師になってからアルバイトで小鳥屋さんに勤めていたこともあるんですよ。その時にいろいろな種類の小鳥の習性や飼い方なども学びました。
こちらでは検査なども行っているのですね。
はい。糞便の顕微鏡検査やエックス線検査、血液検査、超音波検査、そのう検査など必要に応じて行います。ただ検査の中にはリスクを伴う場合もあり、費用もかかりますから、そのあたりのことも詳しくお話しして、飼い主さんの同意を得てから行っています。例えばエックス線検査は撮影箇所が小さすぎて十分な読影ができない場合も考えられます。小鳥は検査のための保定が負担になることもあり、ある程度の限界があることも飼い主さんにはお話ししています。治療方法は疾患によって内服や注射などさまざまです。内服薬の飲ませ方にもコツがありますので、そんなことも丁寧にお話ししています。
小鳥の飼い主さんへのアドバイスはありますか。
小鳥がもし体を丸く膨らませていたら、何らかの疾患のサインです。少しの間でなく、長時間まん丸く膨らませていたら、一度受診するようにしてください。小鳥の様子を毎日確認することも大切ですね。少し前に健康診断を受けて大丈夫と言われても安心しないでいただきたいと思います。その1週間後、2週間後に体調を崩すことも考えられます。毎日、どんな便をしているか、便の数や色は前日と変わっていないか。もし便の数が減っていれば、食欲が低下していることになります。清潔な飼育環境も大切ですので、敷き紙は2日に1回は替えたほうが良いですね。最近はペットブームのため、小鳥を飼う方も増えてきたようです。ただ、手軽だからと思って飼い始めることがないよう、その鳥の一生を見る覚悟が必要です。
小鳥にもっと触れ合うとさらなる魅力を発見できるはず
改めて小鳥の魅力を教えてください。
小鳥は小さな頭ですがとても賢いんですよ。3~4日入院していて、そろそろ大丈夫、ご飯が食べられる頃と思って食事を与えても、病院では食べずに家に帰ると食べるんです。病院にいる時は緊張していて、家に帰るとほっと安心するんでしょうね、きっと。人の好き嫌いがはっきりしている小鳥もいます。ある人の手からは餌を食べても、別の人の手からだと拒んだりします。感情表現もとても豊かで、顔の表情もすごく変わるんですよ。機嫌が悪かったり怒っている時は、噛みつくぞ、っていう顔をしたり、 甘えたい時はそんな顔つきやそぶりを見せます。感情表現の豊かさは犬や猫に劣らないほどです。そんなところがとてもかわいいですね。
お忙しいとは思いますが、プライベートはどのようにお過ごしですか。趣味なども教えてください。
乗馬が好きで、少しブランクがありましたが最近また始めました。英会話ももう10数年習っています。海外旅行の時に役に立つかなと思ったのです。日常会話は大体大丈夫ですが、難しい内容になるとまだまだ、という感じですね。手作りで物を作るのも好きです。お裁縫したり手編みしたりしています。
最後に今後の展望とメッセージをお願いいたします。
これからは小鳥だけに絞り込んでさらに深く勉強し、小鳥たちにより良い医療を提供していきたいと思います。小鳥の医療もかなり進歩してきています。例えば、発情期のコントロールが難しくリスクが高い場合は新たな薬剤を用いる方法も検討されています。最新の医療情報にアンテナを張り巡らせて、その進歩に遅れないようにしていきたいと思います。小鳥の飼い主さんたちは、皆さん本当にかわいがっていると感じます。特に私から申し上げることはありませんが、もし、単に餌と水を与えているだけという方がおられたら、もっと小鳥と触れ合ってほしい、話しかけてほしいと思います。そうすると小鳥のいろいろな魅力や喜びをもっと発見できると思います。