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獣医循環器認定医が治療する 犬と猫の心臓病
上野の森どうぶつ病院
(台東区/根津駅)
最終更新日: 2021/10/12
長生きするペットの増加に伴い増加している心臓疾患。その一番の原因は高齢化、そして特に小型犬に多いなど品種や遺伝の要素が大きい。犬猫でもガンに次いで多いという心臓疾患だが、正しい診断には専門知識が必要とされる。そんな中、日本ではまだ珍しい獣医循環器認定医である上野の森どうぶつ病院の諌山紀子先生に、犬と猫の心臓病の特徴や治療法など、飼い主が知っておきたい知識を教えていただいた。(取材日2014年8月27日)
目次
命にかかわる心臓病の早期発見、治療に尽力
Q.犬猫にはどのような心臓病が多いのでしょうか?
A.小型犬では僧帽弁閉鎖不全症という、心臓の部屋を隔てる弁がきちんと閉まらなくなる病気が非常に多く、チワワ、マルチーズ、シーズー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどの品種で特に見られます。大型犬では拡張型心筋症という、心臓の筋肉が薄くなり血液を送り出す力が弱くなる病気が多く、ラブラドール・レトリバー、ドーベルマンや超大型犬と言われる品種で見られます。8歳以上の犬では10頭中1頭以上の割合で心臓が悪いといわれています。猫の場合は肥大型心筋症という、心臓の筋肉が分厚くなってしまい血液が心臓の中に入れない病気による血栓症や呼吸困難が多くみられます。▲通常の診察と同じようにまずは丁寧な問診と身体検査を行う
Q.獣医循環器認定医による診療や治療の特徴は?
A.獣医循環器認定医は日本獣医循環器学会より認定を受けた、心臓疾患の専門的な知識と様々な診療経験を有する獣医師です。こうした獣医師の診察を受けることで、なんとなく服薬するのではなく、病名をはっきりさせ、どういう病状で、どういう方針で治療を行うかを明確にすることができます。また動物にも個体差があるため教科書的な治療では改善しない子もいます。そのような場合にどうして改善しないのか、他の選択肢は挙げられるかによってその子のQOLが大きく変わってしまいます。お薬を飲んでいるけどあまり良くならない、飲んでいる薬が合っているのか不安がある場合には認定医の診療を一度受けることをお勧めします。▲麻酔モニターや麻酔器を完備している手術室。レントゲン装置も設置
Q.実際にはどのような診察・治療をされていますか?
A.心臓病では呼吸が苦しい状況で来院される子もいるため、心臓の雑音、呼吸音、粘膜の色など身体検査で得られる情報を素早くチェックします。呼吸器症状がある場合は、レントゲン検査を行います。検査時間が少ないため負担が少なく、心臓の大きさ、気管や肺の状態など多くの情報がわかります。心雑音やレントゲンで異常がみられた場合は詳しい超音波検査、血圧検査、血液検査などをします。薬が必要な状態なのか、量や種類はどうするべきかなど、今後の方針を立てることが出来ます。治療は原因に合わせて薬の処方を行いますが、一辺倒ではなく、ご家族との生活スタイルや、その子の性格に合わせて、話し合いながらのオーダーメイド治療を行います。▲先生は超音波検査装置を使った画像診断の講師をしたこともある
Q.心臓病に気づくためのサインはありますか?
A.症状としては運動を嫌がる、咳が出る、痩せてきた、お腹が膨らんできた、呼吸が速い、ふらつきがみられたなど様々なものがあります。特に咳や呼吸が速いという症状がみられる場合、肺に水が溜まって苦しい状態の可能性も高いため、早めに病院でレントゲンを撮る必要があります。初期の心臓病では症状がみられず、健診で心雑音を指摘されるケースも多くあります。そのため、定期的な身体検査を行うことが大切ですね。▲報告書も貰えるのでそれを持って他院に相談することも可能
Q.心臓病の動物を飼う際に気を付けることは?
A.心臓病と診断されたら、ご自宅での安静時の呼吸回数を測定することをお勧めします。肺や胸に水がたまると呼吸が苦しくなり、早くなったり、ひどい場合は横になれなくなります。呼吸が速い、いつも寝ている時間なのに呼吸が速くて寝付けない様子や、横になってもすぐに起き上って息が荒いなどの症状が突然現れることもあります。猫の場合は口を開けて息をするという症状もあります。普段から呼吸回数を測定している場合は、いつもとどのくらい違うのかがすぐにわかりますから、対処も早くできます。命に係わる病気ですから、対応の早さが重要です。病院に定期検査へ行くことも大切ですが、ご自宅でどれだけ変化に気づいてあげられるかが非常に大切な病気です。▲理解を深め、しっかり向き合っていけば正しい対処法がわかる
動物病院からのメッセージ
心臓病は命にかかわる病気であり、手術以外では治癒や病気の進行を止めることはできませんが、手術が出来ない場合も内服薬によってできるだけ症状のない状態で過ごすことができます。病気の進行はその子それぞれなので、なるべく早期に病気を見つけて状態を見極めることが大切で、詳細な診察や定期健診をお勧めします。ペットが心臓病と診断されると飼い主さんも不安になりますが、私達は飼い主さんと一緒に病気とたたかっていきます。病気について知識をつけていただくよう丁寧にご説明をし、具体的に御自宅でのケアや注意することをお伝えします。病気や治療について理解を深め、共にしっかり向かい合うことで不安を軽減しましょう。
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